「忌避」とは、嫌って避けることを表す言葉です。「忌避感」という言い回しもありますが、話し言葉としてはあまり使われません。この記事では「忌避」や「忌避感」の意味と使い方について、例文や類語・対義語とともに紹介します。
「忌避」の意味とは?
読み方は「きひ」意味は「嫌い避けること」
「忌避」の読み方は「きひ」、嫌って避けることを意味する言葉です。「忌」という文字には「縁起が悪い」「不吉だ」という意味と「嫌な感じがする」「不愉快だ」という意味があり、おおむね「きらう」「いむ」ことを表しています。
ここに「さける」「のがれる」ということを指す「避」をともなうことで、ある人物や事柄などに対して存在してほしくないと思って避けることや、そのようになりたくないと思うことを示す熟語です。
「忌避」には法律用語としての意味もある
「忌避」には法律用語としての意味もあります。たとえば、訴訟事件などで当事者の申し立てにより「特定の人物を職務執行から排除する」という使い方です。裁判官や鑑定人のほか、通訳人や仲裁人などについても「忌避」の規定があり、手続きの公正さを損なう恐れのある者を申し立てによって職務執行から排除することができるというものです。
類似の制度として「除斥」や「回避」がありますが、「除斥」は法律で定められた原因により担当から外す制度、「忌避」は排斥原因以外の事情で行われます。一方「回避」は、「除斥・忌避の原因がある裁判官が自ら担当から外れる」というものです。
「忌避」の使い方と例文
「忌避」は話し言葉ではあまり使わない
「忌避」は、日常会話であまり使われることはありません。「嫌って避ける」という意味があることや法律用語としても使われることから、改まった文書や専門的な場面でよく使われる言葉です。
たとえば、ビジネスシーンや研究などの書類では「忌避する」という動詞の形でよく使われています。
「忌避」の目的は対象を近づかせないこと
「忌避」の目的は、相手に直接害を与えることではなく「近づかせたくない」ということです。
「忌避剤(きひざい)」というものがありますが、これは好ましくない虫や獣などが嫌がって近づかないための薬剤で、殺傷効果はありません。
「忌避」を使った例文
- 彼は政治的信条から、入社以来この会合への参加を忌避している。
- 今のところ、予防注射を忌避したがっている人たちの意志は尊重されているようだ。
- 住民の忌避により施設の建設計画は難渋しているが、粘り強く理解を求めたい。
「忌避感」の意味と使い方とは?
「忌避感」とは「忌避の感情」のこと
「忌避感」とは、ある人物やことがらを嫌って避けたいと思う感情のことです。
「感」という文字には、ものごとに対してある気持ちをいだくという意味があり、接尾辞として使われる場合には「~のような感覚・感情」という意味を加えます。
「忌避感を感じる」は重複表現
「忌避感を感じる」は「忌避の感情を感じる」という意味合いになるため、重複表現といえます。同様の表現に「違和感を感じる」や「危機感を感じる」などがありますが、これらも重複表現にあたるものです。
重複表現には「立場に立つ」「あとで後悔する」など、一般的に使用されている事例もあるため誤用とは言い切れませんが、「忌避感を感じる」は以下のような表現に言い換えるとよいでしょう。
- 忌避感を持つ
- 忌避感を抱く
- 忌避感が生じる
- 忌避感がある
「忌避感」を使った例文
- 理解を得られるよう努力しているが、地元での産廃施設への忌避感は根強い。
- 相次ぐトラブルのため、イベントそのものへの忌避感を抱く人が増えているようだ。
「忌避」の類語や対義語とは?
類語「敬遠」とは「相手を敬って遠ざけること」
「敬遠(けいえん)」とは、敬って自分にとって好ましくない人物やものごとを表面的には敬うふりをしつつ遠ざけることです。
「敬遠」の由来は論語にある孔子の「霊や神というものは大切に敬って迂闊に近づかない」という意味の言葉ですが、現在は大切に敬うという部分が薄くなり、やっかいなことに関わらないように避けるという意味合いが強くなっています。
「回避」も「わきによけて避ける」を表す類語
「回避(かいひ)」とは、ものごとをよけて避けることです。何らかの義務や障害などを避けて、不都合なことにならないようにするときに使います。
法律用語としての「回避」は前述したように、訴訟において特定の人物を職務執行から排除するための規定のひとつです。
「逃避」は「やるべきことから逃げて避けること」
「逃避(とうひ)」とは、困難ややるべきことなどから逃げたり無視したりして避けることを表した言葉です。
不快や不安を感じるような現実から意図的に注意や意識をそらして逃れようとすることを指す「現実逃避」は、よく使われています。
対義語「歓迎」とは「好意的に迎え入れること」
「歓迎(かんげい)」とは、好意をもって迎え入れることです。嫌って避けるという意味の「忌避」と対極にある言葉で、明確な対義語として使うことができます。
なお「歓迎」には、「やぶ蚊の歓迎を受ける」のように好ましくないものに遭遇することを指す用法もあります。
まとめ
「忌避」や「忌避感」には、対象を嫌い避けるという意味合いがあります。法律用語として使われることもあり、日常会話ではあまり用いられないのが特徴です。また、「忌避感を感じる」とすると重複表現になるため、「忌避感がある」「忌避感を抱く」のように言い換えて使いましょう。