「偶像」の意味と使い方とは?「虚像」との違いや「偶像崇拝」も

「偶像」とは、人に似せて作った像や神仏をかたどった像のことを指す言葉です。「偶像崇拝」のように宗教観を表す場合やアイドルと似たような意味合いでも使われています。この記事では、「偶像」の意味と使い方や「虚像」との違いなどを例文を交えて紹介しています。

「偶像」の意味とは?

「偶像」とは木や石などで作られた像のこと

「偶像(ぐうぞう)」とは、木や石のほか、土、金属などを用いて作られた像のことです。

「偶」という文字は「ひとがた」「でく」、「像」という文字は「かたち」「ありさま」という意味を持っており、木や石などの材料を用いて人などの姿に似せてつくったもののことを表しています。

「偶像」にはあこがれの対象という意味も

「偶像」には、あこがれや崇拝の対象という意味もあります。英語で「偶像」を指す「idol」がもとになっているカタカナ語の「アイドル」と同じ意味合いを持つ言葉です。

もうひとつ「偶像」の英語訳には「icon」もありますが、こちらは信仰の対象としての「偶像(イコン)」や、簡単な記号や絵柄で表した図形を指すアイコンという意味を持っています。

なお「idol」と同音の「idle」は、「仕事がない」「稼働していない」という意味を持っており、混同しないよう注意が必要です。

「偶像崇拝」とは「偶像」を信仰すること

信仰の対象として神仏などをかたどったものも「偶像」といい、またその信仰は「偶像崇拝」と呼ばれています。目にすることができない神仏の姿を目に見える形に表したものですが、ユダヤ教やキリスト教(プロテスタント)、イスラム教ではこのような偶像崇拝は神にそむくものとされています。

「偶像」の使い方と例文

「偶像」にはややネガティブな意味合いも

世界で主流となっている一神教(一つの神を信仰する宗教)では、基本的に「偶像崇拝」が禁じられていました。「偶像」は神そのものではなく、それを崇拝することは信仰として誤ったものであるとされているためです。

また「偶」という文字そのものに「でくのぼう」という意味合いがあるため、「偶像」はややネガティブなニュアンスで使われるケースがみられます。

「偶像」を使った例文

  • 才色兼備で性格も良い彼女の悩みは、多くの学生から偶像視されていることのようだ。
  • 多くの人々が信仰のよりどころとしている偶像を粗末に扱うようなことは、してはいけない。

「偶像」と「虚像」の違いとは?

「虚像」とは作られたイメージのこと

「虚像(きょぞう)」とは、実体とは異なる作られたイメージのことです。「虚」という文字には「中身がない」「うわべだけの」という意味があり、実際に存在するものとは違う姿(像)のことを表しています。

なお「虚像」は、レンズ越しに見える正立像や鏡に映る鏡像などを指しても用いられる言葉です。この像は実体を持たないもので、作られたイメージという「虚像」の用法はここから生じました。

「虚像」は本物とは違う姿

「偶像」とは「あるものをかたどって作られた像」であり、作られたものであるという点において「虚像」と似ています。また「虚像」に魅せられてしまうこともあり、この点でもあこがれの対象である「偶像」に近いものがあります。

しかし「偶像」は本物に似せて作られたものであることに対し、「虚像」は本物とは違うように作られたものであるという点に、決定的な違いがあるのです。

「偶像」の類語や対義語とは?

「肖像」とは人の姿を写したもの

「肖像(しょうぞう)」とは人の姿や表情などを写したもので、像だけでなく写真や絵画などもふくまれます。「肖像」そのものは尊崇やあこがれの対象となるものではありませんが、「肖像」のモデルが偶像的な存在である場合、「偶像」の代役をさせることも可能です。

たとえば、尊敬する偉人やあこがれの芸能人などの肖像を自室に飾り、時折ながめては自分の励みとしているような場合、実質的に「偶像」の役割を果たしているといえるでしょう。

「彫像」とは彫刻して作った像

「彫像(ちょうぞう)」とは、彫刻して像を創ることやその像のことを表したもので、「偶像」の一番目に紹介した意味合いの像のなかの、制作方法が彫刻によるものに限定して使われています。

宗教で用いられる「偶像」には「彫像」が多くあり、教会などの宗教施設に荘厳な雰囲気を与えています。

「偶像化」の類語は「理想化」

「偶像化」の類語として、「理想化」があげられます。自分が理想としている姿に対象を引き寄せて考えることを指しており、あこがれの対象として崇拝することを表した「偶像化」と同じ意味合いで使うことができる言葉です。

「偶像化」の対義語に使える「過小評価」

「偶像」の直接的な対義語は見当たりませんが、「偶像化」と対義的な意味を持つ言葉として「過小評価」があげられるでしょう。「過小評価」とは、実際よりも低く評価してみくびることを表し人やものに使える表現です。

まとめ

「偶像」とは、対象に似せて作った像という意味以上に、信仰やあこがれの対象となるものという意味合いが強くあります。ただし、「偶像崇拝」という言葉が示すように、実体がないというネガティブなニュアンスも含まれます。相手が強く惹かれているものに対しては、「偶像」という言葉を使わないほうがよいでしょう。