「喪失」の意味と使い方とは?「喪失感」や類語・対義語の例文も

「喪失」の意味は失うことですが、物品をなくすことではなくもっと抽象的な意味合いで使われています。失うことを表す言葉には「紛失」などがありますが、対象による使い分けが必要です。この記事は「喪失」の意味と使い方のほか、類語・対義語も例文つきで紹介しており、語句への理解が深まる内容となっています。

「喪失」の意味とは?

喪失とは「失うこと」読み方は「そうしつ」

「喪失」の意味は失うこと、読み方は「そうしつ」です。「喪」という文字には「うしなう」「持っていたものをなくす」という意味があります。

「喪中(もちゅう)」のほか、気力がくじけることを表した「阻喪(そそう)」、正気を失うことを指す「喪心(そうしん)」などの熟語は、「喪」という文字が持っている意味合いが表れたものです。

「喪失」の対象は「抽象的な事柄」が多い

「喪失」は単に物をなくすことではなく、「抽象的な事柄」を対象とすることが一般的です。

たとえば、会社を退職したときの健康保険や雇用保険など被保険者の資格を失うことを「資格の喪失」といい、喪失を示す書類は「健康保険資格喪失証明書」や「資格喪失届」と呼ばれます。

「喪失」の使い方と例文

「喪失」は四字熟語でも使われる

「喪失」は、四字熟語にもよく使われています。「記憶喪失」や「心神喪失」などは病名としてよく知られているものです。また、「戦意喪失」や「自己喪失」などによっては、心理面で危機的な状況に陥ることもあります。

これらの用例は、「喪失」が意識や記憶などの抽象的なものを失うときに使われることがよく表れたものです。

「喪失感」とは失ったことによる悲痛な感覚

「喪失感」とは、何か大切なものを失ったときに抱く悲痛な感覚や空虚な気持ちのことで、心の痛手が表れた言葉です。

なお「喪失感を感じる」という用法は誤りと言い切れませんが、「喪失感がある」「喪失感を抱く」などに言い換えた方がよいでしょう。

「喪失」を使った例文

  • 仕事を辞めてから、心にぽっかりと穴が開いたような喪失感にかられる日々を過ごしている。
  • 無名のチームにまさかの敗北を喫したことで、彼らはすっかり自信を喪失してしまった。
  • 景気の低迷によって失業状態が長期化したため、求職意欲喪失者が増えているようだ。

「喪失」と「紛失」の違い

「紛失」とは物がなくなること

「紛失(ふんしつ)」とは、物がまぎれてなくなることを指した言葉です。「紛」という文字には、「まぎれる」「入り乱れる」という意味があり、見分けがつかなくなったり見失ったりすることを表しています。

なお「紛失」は、物忘れすることや人が姿を消すことも意味していますが、一般的ではありません。

「紛失」でなくなるのは形があるもの

「喪失」も「紛失」も、何かを失うことを指した言葉です。しかし「喪失」と「紛失」は、明確に使い分けされています。たとえば、財布のような形のあるものをなくした場合、「喪失」ではなく「紛失」を用います。一方、記憶のように形のないものをなくした場合に使うのは「紛失」ではなく「喪失」です。

なお、法律関係での「喪失」も権利・資格・地位など、抽象的なものに対してよく用いられますが、物理的に物を「紛失」した場合にも「喪失」が用いられることがあります。

「喪失」の類語

「遺失」とは置き忘れなどで金品を失うこと

「遺失(いしつ)」とは、落としたり置き忘れたりして金品を失うことです。「遺」という文字には「忘れる」「落とす」「失くす」という意味があり、忘れ物や落とし物のことを指す「遺失物」は、その意味合いをよく表しています。

なお「遺失」は、法律上の占有者が自分の意志によらず動産の所持を失うことも指しても用いられている言葉です。

「亡失」とは物がなくなること・なくすこと

「亡失(ぼうしつ)」とは、物がなくなることや無くすことを指した言葉です。物品の存在が失われるときに使われ、「現金を亡失した」というように使います。

「亡失」の同音異字語である「忘失」は、「資料を忘失する」というように忘れて失くすことにも使いますが、「名前を忘失する」というように忘却という意味でも使われる言葉です。

「喪失」の対義語

「獲得」とは努力して手に入れること

「獲得(かくとく)」は失うことを表した「喪失」の対義語で、努力して手に入れることを表した言葉です。

「獲」という文字は「とらえる」ということを示していますが、狩りあるいは奪い取るなど、簡単には手に入らないものを努力して入手するという意味があります。「政権の獲得」「自由の獲得」などのように使われます。

「取得」とは自分のものとして得ること

「取得(しゅとく)」とは、自分のものとして手に入れることです。主に資格や権利、物品などに対して用いられる言葉で「免許の取得」というように使います。

なお「取得」と似た言葉の「拾得(しゅうとく)」は、落とし物を拾うことのほか法律用語では所有者以外の人が遺失物の占有を取得することを表します。

まとめ

「喪失」とは「うしなう、持っていたものをなくす」という意味です。一般的に抽象的な事柄にたいして使われるほか、四字熟語にもよく用いられています。「喪」という文字が示すように、失ったことで精神的に痛手を被る場合もあるものです。そのため、物品を失くしたようなケースでは「紛失」のように他の言葉を用いた方が適切でしょう。