「謹んで」は、式典の際によく聞かれる言葉です。また新年の挨拶でも耳にすることが多いため、改まった場で使われる堅い言い回しとして用法に気を使います。
ここからは、「謹んで」の意味や使い方をはじめ、類語や例文について紹介します。礼儀をわきまえて正しく「謹んで」を使うため、参考になさってください。
「謹んで」の意味・読み方・後に続く言葉は?
「謹んで」の意味は「うやうやしく畏まること」
「謹んで」の意味は、「うやうやしく畏まること」です。「謹みて」の音が変化したもので、相手に対する敬意を示した言葉です。「謹んで」の「謹」という文字は、「謹賀新年」などの熟語で使われています。「謹賀新年」は、謹んで新年を祝賀するということを表す四字熟語です。
読み方は「つつしんで」
「謹んで」の読み方は、「つつしんで」です。
「謹んで」のあとには言動の言葉が続く
「謹んで」という言葉を用いるときには「謹んで」のあとに何らかの言動を意味する言葉を続けることが一般的です。
「謹んで」という言葉を冒頭に付けることで、相手に対する敬意を示しながら何らかの行為をさせていただくという、尊敬と謙譲の気持ちを伝えることができます。
「謹んで」の使い方
「謹んで」は慶事の場面でよく使う
「謹んで」は、新年のほかパーティーのようなおめでたい場面によく登場する言葉です。
仕事始めの日の朝礼で、紅白の横断幕や門松をバックに司会役の社員が新年の挨拶の言葉を述べるとき、「謹んで…」と口火を切る場面がその事例です。
「謹んで」は慶事以外にも使える
「謹んで」という言葉は、おめでたいシーンでよく耳にしますが、「謹んで」は慶事専用ではありません。お悔やみやお詫びの言葉を伝えたいときにも、「謹んで」を使うことができます。
たとえばお葬式に参列したときや、顧客に対して謝罪するときに使うことも可能です。つまり慶事に限らず、相手に敬意を表しながらうやうやしく何かを行うときには、冒頭に「謹んで」を付けて使うことができます。
「謹んで」と「慎んで」の違いは?
「謹んで」(つつしんで)と読み方が同じ言葉として「慎んで」(謹んで)があります。「慎」という文字が「不謹慎」というように「謹」と一緒に使われることもあり、どちらを使うとよいのか分かりづらい言葉です。
「慎んで」の意味は「抑制して」
「慎む」は、「過ちを犯さないように、気をつける・控えめにする」という意味の言葉です。「謹む」と同様に「うやうやしく畏まる」という意味もありますが、「抑制する」という意図が含まれる言葉になります。
そのため「慎んで」と使う場合には、自分自身が「気をつけて」「控えて」という意味で使います。
「謹んで」と「慎んで」は「相手への敬意」か「自分への注意」かの違い
正しい使い分けのポイントは、相手へ敬意を払いたいときには「謹んで」、自分自身の言動を制御したいときには「慎んで」を選ぶということです。
- 「謹んで」 : 相手に対する敬意を示して
- 「慎んで」 : 自分が過ちを犯さないように注意して
「謹」は相手に敬意を表す様子を指す、「慎」は失礼や粗相がないように注意を払う意味という、漢字自体の意味を理解できると区別しやすいでしょう。
「謹んで」の類語
「謹んで」の類語は「恐れながら」
「謹んで」の類語としては「恐れながら」という言葉があります。「恐れながら」は時代劇では聞かれる表現で、お白洲でお奉行に対して「お恐れながら申し上げます」などと訴えているシーンに登場しますが、敬意よりへりくだりの意味合いが強く表れた言い方です。
「恐れながら」は「謹んで」に意味は近いですが、主にビジネスシーンで使われることが多く、「恐れながら新年のご挨拶を申し上げます」「恐れながらお悔やみを申し上げます」という表現として使われることはあまりありません。
「恐れながら」と同じ意味の「恐縮ながら」
「恐れながら」を熟語で言い換えた「恐縮ながら」という言葉があります。「恐縮ながら辞退させていただきます」「恐縮ながらご返答いたしかねます」「恐縮ながら欠勤させていただきます」というように使います。
「恐縮ながら」とお詫びの気持ちを示したあとに自分の言動を続けることでかしこまった言い回しにできますが、「謹んで」のような敬意を表すものではありません。
「かしこみ」も「謹んで」の類語
「謹んで」と意味合いが近いものとして「畏み」があります。祝詞のなかでよく聞かれる言葉で、相手に対して畏れ多く感じ、敬意を持って何らかの言動を行うときに用いられます。
ただし、祝詞での言葉は神に対するものであるため、人に対して使うことははばかられます。
意味が近くても適切でない類語
「謹んで」と意味が近い言葉はありますが、実際に言い換えてみると適切な表現とはいえません。
「謹んで」の類語は辞書的には存在しますが、実用に適したものは見当たらないため、「謹んで」は言い換えせずにそのまま使うことが無難です。
「謹んで」を使った例文
慶事での例文
- 「謹んで新年のご挨拶を申し上げます」
- 「ご就任を謹んでお慶び申し上げます」
- 「金賞を受賞しましたことを、ここに謹んでご報告いたします」
お悔やみでの例文
- 「突然のご不幸に謹んでお悔やみを申し上げます」
お詫びでの例文
- 「この度の不手際につきまして謹んでお詫び申し上げます」
ビジネスでの例文
- 「この度の辞令を謹んでお受けいたします」
まとめ
「謹んで」の意味と使い方などを紹介しました。適切な類語が見当たらないため「謹んで」だけを使っていれば事足り、表現の幅を持たせるために気を使う必要はありません。
例文として挙げた定形どおりの言い回しが無難で、覚えておいてそのまま使うことをおすすめします。