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「逐電」の意味と由来とは?例文や類義語の使い方と「出奔」も紹介

「逐電」とは、もっぱら行方をくらますことという意味で用いられている言葉ですが、なぜ「電」という文字が使われているかご存じでしょうか?この記事は、「逐電」の意味を理解するために語句の語源や由来を解説しています。加えて、「出奔」との違いや他の類義語についても紹介しましょう。

「逐電」の由来・語源と意味とは?

「逐電」の由来・語源は「稲光を追いかけること」

「逐電」とは「稲光を追いかけること」が由来になった言葉です。「逐」は追いかけることを、「電」は稲妻のことを表した文字であるため、稲妻を追いかけることが「逐電」の語源だと言えます。

なお「逐電」の読み方は、「ちくてん」または「ちくでん」の二通りです。「電」の読みは呉音では「でん」、漢音では「てん」となっており、室町時代頃までは「ちくてん」と漢音読みされていたようですが、近年では「ちくでん」と読むことが増えています。

「逐電」の意味1「素早く行動すること」

「逐電」の1つ目の意味は「素早く行動すること」です。語源となっている「稲妻を追いかける」ことが由来で、雷鳴が響く前に閃光を放ち一瞬のうちに消え去る稲妻を追いかけるくらい迅速に行動することを表しています。

また、「逐電」は雷そのもののことも指しますが、この用法を使っている例はあまり見受けられません。

「逐電」の意味2「逃げ去り行方をくらますこと」

「逐電」は、素早く逃げ去り行方をくらますという意味で用いられることが一般的です。素早く行動することから転じたもので、他人に気付かれないうちにいなくなり、行方知れずになっている状態を表しています。

芥川龍之介の著作『桃太郎』にも、一人前になった鬼の子供が「たちまち鬼が島へ逐電した」とあり、素早く逃げ去ってしまった様子がうかがえます。

「逐電」の使い方と例文

「逐電」は「逃げ去ること」の意味でよく使う

「逐電」には「素早く行動する」という意味がありますが、本来居るべきところからいなくなることや、そこに居られなくなって逃げ去ることを表して用いられることが多い言葉です。

したがって、良いことをするために迅速に動いたような場合に「逐電」を使うことは、適切といえません。

「逐電」を使った例文

  • 通報に気付き受け子は逐電してしまったが、被害者を出さずにすんでよかった。
  • 有力な容疑者の逐電によって手掛かりが失われ、捜査は振り出しに戻った。
  • 身分違いの恋愛が許されなかった時代、逐電の末の心中は少なくなかった。

「逐電」と「出奔」との違いとは?

「出奔」とは「徒士」以上の者が失踪すること

「出奔(しゅっぽん)」とは、逃げ出して行方をくらませることを指す言葉です。「槍の又左」の異名で知られる前田利家は、信長の同朋衆を斬り「出奔」しています。

江戸時代には、徒士(かち)以上の武士の失踪を指して用いられていました。徒士とは騎乗を許されていない武士のことですが、小禄のため経済的に苦しかったようです。傘張りなどの内職をして生計を立てているケースが多くみられましたが、生活が立ち行かなくなって身分を株として売却したり、「出奔」することもありました。

「逐電」は江戸時代のような身分は関係ない

「逐電」も逃げ出して行方をくらませるという意味を持っていますが、江戸時代に用いられた「出奔」のように身分を限定する意味合いはありません。

また、「逃げる」という意味合いが強い「逐電」と比較すると、「出奔」は「行方をくらませる」という点にウエイトが置かれている点が異なります。

「逐電」の類語・類義語とは?

「遁走」とは逃れ去ることを表す類義語

「遁走(とんそう)」とは逃げ去ることを指した言葉で、「逐電」の類語(類義語)として使うことができるものです。「遁」という文字には、「にげる」「かくれる」という意味があり、好ましくない状態や危険な場所から離れることを表しています。「走」は「立ち去る」「逃げる」の意味で、必ずしも走ることを表すものではありません。

なお「遁」は常用漢字表にない文字であるため、公文書や報道関係で用いるときには「とん走」と表記することが望ましいとされています。

「失踪」とは行方をくらます意味の類義語

「失踪(しっそう)」の意味は、行方をくらますことや行方のしれないことです。ある人がどこにいるのか、生きているのか死んでいるのかさえわからない状態のことをいいます。

「踪」という文字には「足跡」「行方」という意味があり、それらが失われることで追跡や捜索ができず、結果的に行方がわからなくなるのです。

なお、「失踪」は第三者によって行われることもあり、この点が自分の意志で行方をくらますことを指した「逐電」とは異なっています。

「逸出」とは抜け出る意味での類義語

「逸出(いっしゅつ)」とは、抜け出ることや逃れ出ることを表した言葉です。

「逸」という文字には「逃げる」「抜け出る」という意味があり、「離れる」「出る」ことを指した「出」とともに、熟語を構成しています。

なお「逸出」は、大変優秀で抜きん出ていることを表しても使われている言葉です。

まとめ

「逐電」とは「素早く行動し行方をくらますこと」を意味する言葉です。「逐電」の語源や由来は「稲妻を追いかけること」にありますが、不都合な状態から逃れるために自ら行方をくらますことを指して用いられることが多い言葉です。

「逐電」は「逃げる」という意味合いが強いことから、「出奔(しゅっぽん)」より「遁走(とんそう)」のほうが近しいといえます。