「先達」の意味と使い方とは?類語「先輩」や対義語の例文も紹介

「先達」とは、学問などにおいて先んじて道に達していることや、そのような人のことを表した言葉です。他に案内人という意味や巡礼の指導的立場にある人のことを指しても用いられています。この記事は、「先達」の意味と使い方について類語・対義語なども紹介しており、語句の用法への理解が深まる内容となっています。

「先達」の意味とは?

「先達」とは「先を行く者」という意味

「先達(せんだつ・せんだち)」とは、学問・技芸・修行などにおいて先んじて道に達し、他の人を導くことやその人のことを指した言葉です。「前の方」「時間的に早い」ことを表す「先」に、「至る」「行き着く」ことを表す「達」があわさって熟語を構成しています。

なお、「先達て」とした場合の読み方は「せんだって」または「さきだって」となります。

「先達」には「山岳修行の指導者」の意味も

「先達」には、山岳修行者が霊場である山に入るときの指導者という意味もあります。

修験道などの修行では、険しい山道を歩くというものがありますが、この時に道中の案内や礼拝作法のなど指導を行う熟練した山伏のことを「先達」と呼んでおり、現在も富士山や熊野などで活躍しています。

「先達」は単に「案内人」を表すこともある

「先達」には、修験道などに関わりなく案内や指導を行うことやその人のことも表しています。

江戸時代にはお伊勢参りをはじめ、物見遊山や湯治などを目的とした旅行がブームとなっていましたが、旅行客に名所案内を行う添乗員のような人のことも「先達」と呼んでいました。

「先達(先達さん)」とはお遍路の指導者

四国八十八カ所や西国三十三カ所など霊場を巡拝するお遍路では、「先達」が巡礼者を指導しています。この「先達」は認可制で、規定をクリアしたうえで研修や審査を経て初めて認可されるものです。

「先達」はお寺の由来や参拝の作法にも通じており、霊場巡りが初めてという人にとって大変心強い存在です。「先達さん」と呼ばれることもあります。

「先達」の使い方と例文

「先達」は現代も通用する古語

「先達」という言葉は、古文の授業で取り上げられる「平家物語」や「徒然草」にも登場している古語です。

古語の多くは時代と共に使われなくなったり、意味が変化していったりしていますが、「先達」は昔のまま変わっておらず、現代においても文書や話し言葉で使われています。

「先達に学ぶ」のように相手への敬意を表す

ビジネスや日常生活における「先達」は修行とは関係なく、ある分野での経験を積んでおり後続の人を導くことができる人のことを指して用いられることが多い言葉です。

したがって、指導者や経験者に対し「先達に学ぶ」のような敬意を表す使い方がされています。

「先達」を使った例文

  • 人生の知恵を先達に学ぶためには古典を読みなさいといわれたが、難しくて挫折した
  • 彼は多く学生たちから先達として尊敬されている、大変すばらしい研究者だ
  • ただ在任期間が長いというだけで先達者とされていることに、面映ゆさを感じている

「先達」の類語・類義語とは?

「先輩」とは年齢や地位が自分より上の人

「先輩(せんぱい)」とは、年齢や地位のほか経験や技能などにおいて自分より上の人のことを指した言葉です。先に学校や職場などのグループに入っている人という意味もあります。たとえば、「大学の先輩だからといつまでも甘えるわけにはいかない」のように使います。

「輩」という文字には「ならび」「順序」という意味があり、「前の方」を表す「先」をともなって熟語を形成しています。

「先覚」とは先んじて道理を悟ること

「先覚(せんかく)」は、人に先んじてものごとの道理を悟ることやその人のことを指した言葉です。「覚」には「さとる」「わかる」という意味があり、「先」という文字をともなってものごとへの理解がより進んでいることを表しています。

なお「先覚」は、学問や見識などが優れている先輩のことや、先例・故知のことに対しても用いられる言葉です。「独自の視点で新しいサービスをつくった彼は先覚者だといえる」のように表現します。

「先達」の対義語・反対語とは?

「後進」とは先人の後をたどること

「後進(こうしん)」とは、先人の後をたどることや学問などの分野で自分の後に続いている人のことを指した言葉で、「先輩」という意味での「先達」の対義語として使うことができます。

なお「後進」には、ものの程度や進捗が遅れていること、乗り物が後退することを意味する用法もあります。

「後続」とは後に続くこと

「後続(こうぞく)」とは、後に続くことやそのものを指して用いられている言葉です。「後進」は上達や進歩を目指している途上にあることを表し、「後進の育成」というように指導や育成の対象となります。

一方、「後続」は単に後に続いていることを表すもので、「後続の育成」という言い方はしません。

まとめ

「先達」の意味と使い方のほか、類語・対義語なども紹介しました。「先達」には山岳修行や巡礼などの先導をするという意味がありますが、ビジネスの場や日常生活においては「先輩」という意味合いで使われることが一般的です。

自らの理想像を体現したような「先達」が身近にいれば、モチベーションアップにもつながります。もし自らが「先達」と目される存在なら、後進の指導にも時間を割くゆとりを持ちたいものです。