「往く」の意味とは?類語「行く」「逝く」との違いも例文で解説

「往く」は「行く」とほぼ同じ意味を持つ言葉です。しかし「往復」という熟語が示すように、「往く」は目的地に行って戻ってくるという意味合いで使われています。この記事では「往く」の意味のほか、類語の「行く」「逝く」「征く」などとの違いについて紹介しており、語句の使い方への理解が深まる内容となっています。

「往く」の意味とは?

「往く」とは目的地へ向かうこと

「往く(ゆく)」とは、目的地に向かって出掛けることを表した言葉です。「往」という文字には、「ある方向に向かう」「去る」「昔」「後」など多くの意味があります。

しかし「往く」という場合には、目的地に向かって出掛けることを指して使われることが一般的で、熟語の「往訪」からもその意味合いを読み取ることができるでしょう。

「往く」は戻ってくる意味合いがある

「往く」には「往復」や「往路」という熟語が示すように、向かった後に戻ってくることが前提となっています。

つまり目的地に到着した後にそのままそこへ留まるのではなく、元の場所に戻ってくることが前提となっている場合に使う言葉なのです。

「往く」には過ぎ去るという意味も

「往く」には「往年」や「往時」という熟語からもわかるように、年月が過ぎ去るという意味もあります。ほかには「死ぬ」ということも指して用いられていますが、これは「往生」という熟語からも意味合いが読み取れるものです。

日本には季節や暦の移り変わり、仏教的思想による輪廻転生のように、ものごとが循環するという考え方があります。「過ぎ去る」「死ぬ」ということにも、「往」という文字が持つ意味合いが反映されていると言えるでしょう。

「往く」の類語「行く」「逝く」「征く」

「往く」の類語は「行く」「逝く」「征く」などです。読み方は「いく」「ゆく」と似通っており、意味も重複していますが、細かいニュアンスや使い方には違いがあります。

「往く」と類語の違いについては、次の章から順に見ていきましょう。

「往く」と「行く」の違いとは?

「行く」とは「進む」という意味

「行く」と「往く」は、同じような意味で用いられています。「行く」の主な意味合いは「進む」ということです。

今いるところから離れて他のところに移動することから、動かすという意味やものごとが前に進むことも表しています。

「行く」の読み方は「いく・ゆく」

「行く」には「いく・ゆく」の二通りの読み方があります。「往く」を「いく」と呼んでいる事例もありますが、本来「往」を「い」と発音する場合には「いぬ」と読むのです。

「行く」は、古文に登場する万葉集や源氏物語にもみられる言葉で、読み方は「いく」と「ゆく」が混在しています。数では「ゆく」が優勢ですが、「いく」を「生く」に掛けるような掛詞の技法もよくみられます。

「行く」は口語的「往く」は文語的に使う

「行く」と「往く」の意味合いには、重なっている部分もあります。使い分けのポイントとしてわかりやすいものとしては、「行く」は口語的に使われるのが多いことに対し、「往く」は文語的に使われることが一般的です。

また「行く」の読み方も同様で口語的用法では「いく」と読み、文語的用法では「ゆく」と読むケースが多くみられます。

「逝く」と「往く」の違いとは?

「逝く」とは「死ぬ」ことを表す

「逝く(いく)」の意味は行ったまま戻ってこない、二度と帰らぬところへ行くことから、死ぬことを指している言葉です。

漢字の「逝」を使った熟語のほとんどは、「逝去」「夭逝」「急逝」など人が亡くなることを意味しており、文字の意味合いがよく表れています。

「逝く」と「往く」は死生観で使い分ける

戻ってくることや片道という意味合いがある「往く」は、熟語の「往生」などにもみられるように死ぬことを表して使われることもあります。

「往く」が示す「死」は、あの世や輪廻転生という概念があってこそ成立するもので、「逝く」との違いは死生観の違いからくるものといえるでしょう。

「征く」と「往く」の違いとは?

「征く」とは「戦」に出ること

「征く(ゆく)」とは、敵の討伐や侵略のために出立することです。熟語の「征伐」や「征服」からもわかるように、「征」という文字には敵を討つことや奪い取ること、遠いところに行くという意味があります。

ちなみに「将軍」は「征夷大将軍」を縮めた言葉で、蝦夷征討のために朝廷から任命された総指揮官を指したものです。

「征く」は戦うことが目的

「征く」は、戦いに行くという「行く目的」に重きを置いているのが特徴です。一方の「往く」は、戻ってくることを前提に「目的地に行く」ことを表しているのが「征く」と「往く」の違いです。

まとめ

「往く」の意味のほか、類語との違いについても紹介しました。「往く」の類語のなかで、ビジネスにおいて最もよく使われているのは「行く」です。また、死ぬことを指す類語「逝く」と、戦いに行くことを指す「征く」は用法が限定的になるため使い分けに注意しましょう。