「立ち合い」の意味とは?「立ち会い」との違いや言い換え方も解説

「立ち合い」は、大相撲中継や武道の試合でよく聞かれる言葉です。しかし同音異義語に「立ち会い」があるため、文字として書く場合にどちらを使うか迷ってしまうかもしれません。「立ち合い」の意味のほか「立ち会い」との違いや使い分けも紹介しましょう。

「立ち合い」の意味とは

「立ち合い」は相撲で力士が同時に立ち上がる動作

「立ち合い(たちあい)」は、大相撲の中継でよく耳にする言葉です。送り仮名を省いて「立合」と書くこともあり、仕切りから力士が同時に立ち上がる瞬間の動作を指したものです。

相撲の「立ち合い」では、双方が同じタイミングで立たなければならないとされており、相手より早く動作を起こすことは認められていません。相撲の勝負は「立ち合い」でほぼ決まるため、どの力士も「立ち合い」には神経を集中させて臨みます。

「立ち合い」には武道の試合を表す意味も

「立ち合い」は、相撲だけでなく剣道のような武道の試合を指したり、試合開始時に双方が向かい合うことを指したりしても使われる言葉です。

また、居合に対して刀を抜いた状態で向かい合うことや、立った姿勢で始める居合を指すこともあります。

「立ち合い」は能における「競演」の意味

能(田楽・猿楽)において「立ち合い」は、流派の異なる演者が競演することも意味します。同じ曲を複数人が舞うケースと異なる曲を一番ずつ舞うケースがあります。

武道に限らず能においても「立ち合い」は勝負の場であり、世阿弥の能楽論書である『風姿花伝』にも「立ち合い」に勝利する心構えが記されています。

「立ち合い」は江戸幕府の定期会合を表す意味も

「立ち合い」には、江戸幕府の裁判機関である「評定所」の定期会合を表す意味もあります。「立ち合い」には月3回(6日・14日・25日)の会合日が設けられており、寺社・町・勘定の三奉行のほか、大目付・目付が列座して裁判評議を行いました。

「立ち合い」と「立ち会い」との違い

「立ち会い」の意味はその場に居合わせること

「立ち合い」と同音異字の言葉である「立ち会い(立会)」は、不動産の売買や賃貸取引のほか工事現場などでよく見聞きする言葉で、その場に居合わせて事の成り行きを見守ったり結果を見届けたりすることを表したものです。

「合う」は同じことをすることを、「会う」は同じ場所にいることを指しており、この違いによって「立ち合い」と「立ち会い」の意味にも違いが生じています。

「立ち会い」は証券取引所内で会員が売買する意味も

「立ち会い」は、証券取引所内で会員が集まって売買取引を行うことを指しても使われています。「売買立ち会い」ともいわれており、以前は場立ちと呼ばれる担当者が会場で売買処理を行っていました。

現在はコンピューターで取引が行われていますが、名前はそのまま残っています。「立ち会い」は1日2回行われており、午前中に行われるものが「前場」午後から行われるものが「後場」です。

「立ち合い」と「立ち会い」の使い分け方

「立ち合い」は向かい合っての勝負に使う

「立ち合い」は、お互いに向かい合って勝負するときに使う言葉です。相撲や武道、能などにおいて使うことが多い言葉ですが、「合う」が持つ「同じことをする」ということを表していることから、他のスポーツで双方が向かい合って競い合う場合に使うことも可能です。

「立ち会い」は同じ場所にいることを表す

「立ち会い」はビジネスや取引においてよく使われ、その場に同席して確認や指示などを行うことが一般的です。しかし、同じ場所に居合わせるという意味があるため、たまたま通りかかってその場にいるだけでも使うことができます。

たとえば「立ち会い出産」の場合、夫は出産を見届けることなく倒れることがあります。しかし、「その場に居合わせた」ことで立ち会ったことになるのです。なお「立ち会い」には、「立会演説」や「立会人など」のような複合語が多くみられます。

「立ち合いのもと」ではなく「立ち会いのもと」

「立ち会いのもと」を「立ち合いのもと」、「お立会い」を「お立合い」と表記されていることがありますが、これは誤りです。

「会」を使った場合はその場にいることを表しますが、「合」を使うと試合などで勝負するという意味合いになってしまいます。

「立ち合い」の言い換えや別の言い方

「立ち合い」の言い換えは「勝負」「試合」など

「立ち合い」の類義語や言い換えに使える言葉としては、「勝負」や「試合」のほか「競演」などがあります。相撲の「立ち合い」に関しては適切な語句が見当たりませんが、「起動」「発進」などが考えられるでしょう。

「立ち会い」の別の言い方は「同席」「陪席」など

「立ち会い」の類語としては、「同席」や「陪席」のほか「臨席」などがあります。いずれも「席」という文字が含まれていますが、この場合の意味は座る場所ではなく集まりなどの行われる場所という意味です。

まとめ

「立ち合い」の意味のほか、「立ち会い」との違いや使い分けについて紹介しました。「立ち合い」は相撲のような試合や能など使用場面がかぎられていますが、「立ち会い」は日常生活やビジネスでよく使われる表現です。相手と同じことをする場合は「立ち合い」、何もしなくても同じ場所にいる場合は「立ち会い」と覚えておくとよいでしょう。