「君子危うきに近寄らず」の意味と使い方は?類語や対義語も解説

「君子危うきに近寄らず」(くんしあやうきにちかよらず)は、いろいろな教訓を含んだ言葉です。この記事では、「君子危うきに近寄らず」の意味や使い方、および類語や対義語について解説しています。

ことわざとしてただ危ない橋を渡らないことをすすめているだけのものではない点を知り、より的確な用法を身に着けてください。



「君子危うきに近寄らず」の意味

「君子危うきに近寄らず」の読み方は「くんしあやうきにちかよらず」です。このことわざの具体的な意味について解説していきます。

「君子危うきに近寄らず」の意味は「慎みのすすめ」

「君子危うきに近寄らず」の言葉に登場する「君子」とは、主君や貴人および高位・高官の人のことを指すほか、学識・人格が優れた立派な人物のことを指す語です。

つまり「君子危うきに近寄らず」は、立派な人物は危ないところに近づかないということを言っています。教養高い人格者は言動を慎むもので、自ら危ないところに近づいて災いを招くような馬鹿なことはしないのです。

「君子には危うきところが分かる」という含意も

君子でなくても、見るからに危ないところへ近づきたがる人は、それほど多くありません。君子が君子たる所以は、普通の人にはわからない危険を察知できるところです。

君子たるものは、いかなる時も感情や欲望に流されず、冷静に後先や周囲を見通す洞察力と的確な判断力を発揮できることが期待されます。君子が持つべき資質である指導力の源泉を表したものが、「君子危うきに近寄らず」です。

「君子危うきに近寄らず」の出典は孔子ではない?

「君子危うきに近寄らず」という言葉は、孔子の『論語』には記載されておらず、正確な出典は不明です。

由来としては、「君子危うきに近寄らず」によく似た言葉として「君子不近刑人」というものがあり、この言葉が「君子危うきに近寄らず」の元になっているという説があります。「君子は危険な人には近づかないものだ」という意味で、「君子危うきに近寄らず」に近い意味合いの言葉です。魯国の記録を基にして孔子が制作したと伝えられる『春秋』を解釈した、『春秋公羊伝』という書物が出典です。

「君子危うきに近寄らず」の使い方

「君子危うきに近寄らず」は教訓となる言葉

『「君子危うきに近寄らず」、うまい話に乗らないことにしよう』というふうに、「君子危うきに近寄らず」は、教訓となる言葉です。

射幸心を煽るようなうまい話や、詐欺・犯罪の気配がする儲け話などを持ちかけられることがあります。そんなとき「君子危うきに近寄らず」という言葉を思い浮かべることができれば、うかうかと乗ってしまわずにすみます。

「君子危うきに近寄らず」は褒め言葉

『あの話を見送ったとは、「君子危うきに近寄らず」とはこのことだ』というように、「君子危うきに近寄らず」は賢明な人に対する褒め言葉でもあります。

並の人ならまんまと引っかかってしまいそうな巧妙な落とし穴や、老獪な人物の企みを見抜く洞察力と、上手に回避する智慧を持ち合わせた人を評して使います。

「君子危うきに近寄らず」の類語

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類語は「李下に冠を正さず」

「君子危うきに近寄らず」の類語として挙げられるのは「李下に冠を正さず」です。「李下」、つまりすももの木の下で冠を直していると、すももの実を採っているように見えます。

自分にそんなつもりはなくても、人からあらぬ疑いをかけられるような行為は避けておくべきだという意味です。最初から疑われるようなことを避けておけば、疑われてから弁明するような面倒なことにはなりません。

「瓜田に履を納れず」も同じ意味

同様のものとして「瓜田に履を納れず」があります。「かでんにくつをいれず」と読むもので、瓜畑で靴を履き直していると、瓜を盗んでいるのではないかと怪しまれるとう意味合いです。

「李下に冠を正さず」と「瓜田に履を納れず」のふたつを合わせて、瓜田李下(かでんりか)と言います。

万人向けの類語は「触らぬ神に祟りなし」

「君子危うきに近寄らず」では、行為をしている人を指して君子と呼んでいます。したがって自分がしたことに用いると、自画自賛しているように受け取られかねません。

そんなときには行為の主体を特定していない、「触らぬ神に祟りなし」が適しています。「触らぬ神に祟りなし」は、避けるべき対象を「神」になぞらえていて、非難がましく聞こえない点でも使いやすい言葉です。

「君子危うきに近寄らず」の対義語

対義語・反対語は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」

「君子危うきに近寄らず」の対義語として「虎穴に入らずんば虎子を得ず」があります。大きな成果を得るためには、相応のリスクを取ることも必要だという意味です。

この場合、入っていく場所が虎穴であることと、その中に虎子がいることを知っているということが前提となっています。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」が言っているのは、リスクに見合う成果を得られるという見通しのうえでの冒険のすすめであって、むやみに危険を冒すことを奨励しているものではありません。

まとめ

「君子危うきに近寄らず」の意味と使い方、および類語や対義語を解説しました。疑わしきは罰せずというのは法の世界の話で、世間では疑われた時点でさまざまな不利益を蒙ってしまうものです。

何が危険なのかを理解することは、「君子危うきに近寄らず」をうまく使うことのみならず、教訓として活かすこともできるようになります。