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「ニヒル」の意味とは?誤用の例と類語「シニカル」や対義語も紹介

「ニヒル」とは、虚ろで虚しい状態を表す言葉です。しかし、クールな二枚目といった意味合いで誤用されることがよくあります。この記事では、「ニヒル」の本当の意味を語源から読み解いていきます。類語の「シニカル」「クール」との違いや対義語も紹介しましょう。

「ニヒル」の意味とは?

ニヒルとは「虚無的」という意味

「ニヒル」とは、「虚無的」という意味の言葉です。「何もない」「無」という意味のラテン語「nihil」から来ている言葉で、実態がなくむなしいことを表しています。

また、冷たく醒めている様子や影がある雰囲気の人(主に男性)のことも指している言葉です。

「ニヒル」の語源は哲学用語「ニヒリズム」

「ニヒル」の語源は「ニヒリズム(nihilism)」です。「虚無主義」ともいわれるもので、人間を含む既存のものの価値や意味をすべて否定し、認めない思想を表します。

また、すべての事象の根底から虚無を見いだし、真に存在したり認識できたりするものは何もないとする立場のことを指します。

「ニヒル」の使い方と例文

「ニヒルな人」「ニヒルな笑み」と使う

「ニヒル」は「ニヒルな人」「ニヒルな笑み」のように、「ニヒルな○○」という表現でよく使われます。たとえば、「ニヒルな笑み(ニヒルな笑顔)」とは心から楽しんでいる笑顔ではなく、虚無感が漂う冷ややかな笑みという意味です。

「ニヒル」の誤用しやすい使い方

「ニヒルな人」や「ニヒルを気取る」という表現は、「斜に構えて格好よく決めている」ような意味合いで使われることがあります。

しかし、本来の「ニヒル」は世の中に価値や意味を見出すことができないという、希望がなくネガティブな状態のことを指したものです。つまり、「ニヒル」を褒め言葉として使っている場合は誤用となります。

「ニヒル」を使った例文

  • ニヒルな人と一緒にいて、自分のモチベーションを高く保つことは至難の業だろう
  • いつも無表情な彼は、ニヒルなキャラと思われがちだが本当はかなり情熱的な男だ

「ニヒル」と類語「シニカル」の違いとは?

シニカルとは「皮肉な態度」のこと

「ニヒル」の類語「シニカル」とは、皮肉な態度のことや冷笑的・嘲笑的な様子のことを指している言葉で、英語の「cynical」の音をカタカナ表記したものです。

ものごとに対する見方がひねくれていて、他人の言動を小ばかにしたり嘲ったりするような人のことを表して用いられています。

「シニカル」の語源は古代ギリシャ哲学

「シニカル」の語源は、古代ギリシャ哲学の一つである「キュニコス派(英語でcynic)」です。もとは「犬のような」という意味で、徳と哲学を尊重し社会的慣習に束縛されない自由を求めました。

樽を住処とする質素な生活ぶりと奇行で知られるディオゲネスは、キュニコス派の代表的人物として知られています。

「ニヒル」に侮蔑的なニュアンスはない

「ニヒル」とは、対象に対して醒めていて関心を示さないという態度のことです。一方の「シニカル」は相手を軽く見てあざ笑うという皮肉な態度のことを指します。

具体的な行動の例として笑顔をあげると「ニヒルな笑み」は無感情、「シニカルな笑み」は冷笑・嘲笑を表した笑みです。

「ニヒル」と類語「クール」の違いとは?

「クール」とは冷静で格好がよいこと

「ニヒル」の類語「クール」は、落ち着きがあって格好がよいことを表した言葉です。英語の「cool」には涼しくて爽やかなことや、冷静で動じない様子という意味があります。

俗語として用いられる「cool」はカッコいい、いかしていることを指しており、日本語のカタカナ語「クール」も、英語の俗語的な意味合いでよく使われています。

「ニヒル」は冷静より冷淡さを表す

「ニヒル」も「クール」も、温度が低いというニュアンスがあります。しかし「ニヒル」は冷静というより冷淡で、陰鬱な影をともなった様子を指しています。

一方の「クール」には、爽やかさや落ち着きという好ましいイメージがあり、褒め言葉として使われることが多いです。

「ニヒル」の対義語とは?

「ニヒル」の対義語は「パッション」

「情熱」という意味を持つ「パッション」は、「ニヒル」の対義語にあたる言葉です。ものごとに対して熱意を注ぐことを表した「パッション」は、ものごとに意味や価値を認めない「ニヒル」と対極にあります。

なお、「パッション」にはキリストが磔刑に処せられた「キリストの受難」という意味もあり、果物のパッションフルーツは花の雌しべが十字の形をしていることから名付けられたものです。

「フルネス」とは充実を表す対義語

「フルネス」とは「充実、充足」という意味で、うつろで何もないことを表した「ニヒル」の対義的な言葉です。

「フルネス」を使った言葉として「マインドフルネス」がよく知られています。瞑想と同義に使われることがありますが、瞑想は雑念を払って「今この瞬間」だけに集中するための手段として使われています。

まとめ

「ニヒル」とは、希望がなく虚無的なことを意味する言葉です。「クールで格好いい」というニュアンスでよく誤用されることがあるため、褒め言葉として使わないよう気をつけましょう。