「童」の意味と漢字の成り立ちとは?読み方の違いや熟語も紹介

「童」という漢字は「童謡」「児童」などの熟語からもわかるように、子供のことを表しています。複数ある訓読みは、読み方ごとにニュアンスが異なっているため使うときは注意が必要です。

この記事では、「童」の意味と漢字の成り立ちのほか、読み方によるニュアンスの違いや「童」を用いた熟語も紹介しています。

「童」の意味と漢字の成り立ちとは?

「童」とは「子供」という意味

「童」の意味は「子供」です。学校教育法でいう小学生のことを指す「児童」や、子供向けの物語や歌を指す「童話」「童謡」などの熟語には、「童」の意味がよく表れています。

後述しますが、「童」の読み方には「わらべ」「わらわ」など複数あり、読み方によって意味合いが異なるため注意が必要です。

「童」には「頭髪がないこと」「しもべ」の意味も

「童」という文字は、頭髪がないことや山に草木がないさまを意味しています。熟語の「童然」は頭や山に何も生えていないことを表したものです。

また、「童」にはしもべや召使いという意味もあり、「童僕(どうぼく)」は召使いの少年のことを指しています。

「童」の漢字の成り立ちは「針」「目」「重」

「童」という漢字は、入れ墨をするときに使用する「針」「人の目」「重い袋」の象形から成り立つ、会意形成文字です。つまり「童」とはもともと、目の上に入れ墨をされて重い袋を背負った受刑者や召使い、しもべを意味していました。

これらの人々は髪を結っていなかったことと、一人前として扱われなかったことから、子供という意味で「童」が使われるようになりました。

「童」の読み方による意味の違いとは?

「童(わらわ)」とは10歳前後の子供

「童」を「わらわ」と読むときの意味は、以下の5つです。

  • 10歳前後の子供
  • 束ねないで垂らした髪
  • 子供の召使いまたは童姿の召使い
  • 五節(ごせち)の童女 ※五節とは大嘗祭や新嘗祭で行われる舞を中心とする行事のこと
  • 寺院で召使われる少年

「童(わらべ)」とは子供のこと

「わらべ」は、「童部(わらわべ)」が変化した「わらんべ」の撥音「ん」が表記されないことから「わらべ」となったものです。「童」を「わらべ」と読むときの意味は、以下の3つです。

  • 子供、子供ら
  • 子供の召使いまたは童姿の召使い
  • 自分の妻を指す謙譲語

「童(わっぱ)」とは餓鬼やじゃりの同義語

「わっぱ」は、「わらわ」が音変化した語です。主に「餓鬼」や「じゃり」などと同じ意味合いで使われており、「この小童(こわっぱ)ども」というように子供を卑しめていうときに使われます。「童」を「わっぱ」と読むときの意味は、以下の4つです。

  • 子供、子供をののしっていう言葉
  • 男子が自分を指して用いる謙譲語
  • 暴れ者、乱暴者
  • 年少の奉公人

「童(わらし)」とは東北地方で子供を意味する

「童」には、「わらし」という読み方もあります。子供のことを指す言葉ですが、主に東北地方でよく使われてきました。

「座敷童(ざしきわらし)」は、岩手県を中心とする東北地方に伝承される子供の妖怪とされるものです。「座敷童」が現れる家は栄え、現れなくなると傾くとされました。

「童」を使った熟語とは?

「童顔」とは幼くみえる顔

「童顔(どうがん)」とは子供の顔のことですが、主に子供のような幼い顔立ちのことを指して使われています。

子供の顔はまだ下あごが発達していないため丸く、大人に比べると顔のパーツが中心に寄ってみえるという特徴がみられるものです。大人でも丸顔で顎が小さめな人は、顔立ちが幼くみえる「童顔」になる傾向があります。

「神童」とは非凡な才能を持った子供

「神童(しんどう)」とは、非凡な才能を持った子供のことです。「神童」として知られるモーツァルトは、5歳のときに即興演奏した曲を父親が書き留めた「クラヴィーア独奏のためのアレグロ ハ長調」を皮切りに、35歳で夭折するまで数多くの名曲を世に送り出しました。

「天童」とは子供の姿をした仏教の守護神

「天童」とは、仏教の守護神や天人などが子供の姿をとって地上に降りたものです。また、祭礼で天人に扮する子供のことを指しても使われます。

なお、将棋駒で知られる山形県天童市は、行基菩薩の前に二人の童子が舞い降りたという伝説が名前の由来となったものです。

「河童」は川に住むとされる妖怪

芥川龍之介の小説の題名として知られる「河童(かっぱ)」は、「かわわらわ」が変化したもので、川に住んでいるとされる妖怪もしくは想像上の動物の名前です。

また「河童」の好物とされるキュウリや、「河童」のように泳ぎが達者な人を指しても使われます。ほかに、髪を耳の辺まで垂らして切り落とした子どもの髪形(おかっぱ・かっぱあたま)の呼び名としても用いられています。

まとめ

「童」の意味と漢字の成り立ちのほか、読み方の違いや熟語も紹介しました。「わらべうた」や「座敷童」などはよく耳にしますが、訓読みを単独で用いる機会や召使いという意味での用法は少なくなっています。

いずれにしても「童」には未熟なもの、一人前ではないという意味合いがあるため、使い方には注意が必要でしょう。