「汚名返上」は、成果をあげることで悪評を払拭するという意味です。似た言葉に「名誉挽回」や誤用ともいわれる「汚名挽回」などがありますが、意味に違いはあるのでしょうか。
この記事は「汚名返上」の意味と似た言葉との違いから、例文や類語まで幅広く紹介しており、語句への理解を深められる内容となっているものです。
「汚名返上」と「名誉挽回」の違い
「汚名返上」とは悪い評判を取り除くこと
「汚名返上」の読み方は「おめいへんじょう」です。成果をあげることによって、悪い評判を払拭することを意味します。
「汚名」は「悪い評判」「不名誉な評判」、「返上」は返すことの謙譲表現です。単に返すことや受け取らないこと、という意味で使われています。簡単に言うと「悪評を返して名誉を取り戻す」ことを指しているのです。
「名誉挽回」とは失った信用などを取り戻すこと
「名誉挽回(めいよばんかい)」とは、失った信用や評価などを再び取り戻すことを表した四字熟語です。「名誉」とは「対面」や「面目」という意味で使われており、必ずしも高い評価を得ていることではありません。
「汚名挽回」が誤用であるとされる理由のひとつは、この「名誉挽回」と「汚名返上」が入り混じって「汚名挽回」となったという考えによるものです。
「汚名返上」と「名誉挽回」はややニュアンスが異なる
「汚名返上」は、不名誉な評価を返すような成果をあげることを表しています。一方の「名誉挽回」は失った名誉を再び取り戻すということを表したものです。
いずれも同じような意味合いを持つ四字熟語といえるものですが、「汚名返上」はこれまで面目を施すような状態になかったケースに使い、「名誉挽回」はそれなりの面目を保っていたようなケースに使うという違いがあります。
なお、「汚名返上」を「汚名挽回」と言い換えることができるという意見がありますが、「名誉挽回」を「名誉返上」と言うことはありません。
「汚名返上」と「汚名挽回」の違い
「汚名挽回」は「汚名返上」の誤用とも
「汚名返上」と似ている言葉に、「汚名挽回(おめいばんかい)」がありますが、これは「汚名返上」の誤用と言われているものです。
「挽回」は失ったものを取り戻し、元のように戻すことという意味で使われています。「汚名挽回」を誤用とする根拠は、「汚名」を取り戻すという解釈にあります。つまり「汚名」は返さなければならないもので、取り戻すのは誤りだという解釈です。
「汚名挽回」と「汚名返上」は同じ意味だった
「汚名挽回」の解釈には、悪い評判によって損なわれた名誉を取り戻して、本来の自分に相応しい評価に戻すというものもあります。類似の例は「疲労回復」で、疲労した状態から元の体調に戻すということです。
汚名によって失われた名誉を元の状態に戻す、という解釈であれば、「汚名挽回」は「汚名返上」と同じ意味になり、誤用ではありません。
1976年頃に誤用という説が広まるまで、「汚名挽回」は一般的に使われていました。一部の国語辞典にも「誤用とは言い切れない」という記述がみられます。
「汚名返上」を使った例文
- 我々はこれまで以上に職務に邁進して、汚名返上に努める所存です
- 会社の汚名返上のために、このプロジェクトは絶対に成功させたい
- 汚名返上のためとはいえ、功を焦るとかえって反感を買うことになる
「汚名返上」の類語・類義語
「捲土重来」は失敗を勢いよく巻き返すこと
「捲土重来(けんどちょうらい・けんどじゅうらい)」とは、失敗した後に全力で巻き返すことを表した四字熟語です。「捲土」は土煙を巻き上げること、「重来」とは再びやって来ることを指しており、これらがあわさって四字熟語の意味を形成しています。
「汚名」は失敗、「返上」は巻き返しと同じ意味合いになるため、「捲土重来」は「汚名返上」の類語・類義語といえるものですが、「捲土重来」のほうが力強くポジティブなニュアンスで使われるものです。
「雪辱」は恥をすすぐこと
「雪辱(せつじょく)」は、恥をすすぐという意味の言葉です。「雪」は「そそぐ・清める」ということ、「辱」は「恥」のことを表しており、特に試合などで負けて辱めを受けた相手を打ち破ることを指して使われています。
「雪辱」は、「雪辱を果たす」という言い回しで使われるものですが、「雪辱を晴らす」という表現は誤用です。これは「雪辱」に含まれる「すすぐ」と「晴らす」が同じ意味を持っていることから、重言(重複表現)にあたるためです。
「汚名返上」の英語表現
「汚名返上」の英語表現は「redeem oneself」
「汚名返上」を英語で表すと、「redeem oneself」となります。「redeem」は「挽回する」、「oneself」は「自分自身」という意味です。
「oneself」の代わりに、「面目」という意味を持つ「one’s honor」を使った「redeem one’s honor」も「汚名返上」を表しています。
「I shall return」という英語表現も
第二次世界大戦で日本軍の猛攻を受け、フィリピンから脱出したダグラス・マッカーサーは、「I shall return.」という名言を残しています。
これは「どんなことがあっても必ず私は戻る」という意味で、「汚名返上」の訳語ではありませんが、絶対に「汚名返上」するという誓いの言葉といえるものです。
まとめ
「汚名返上」の意味のほか、誤用と言われる「汚名挽回」の解釈や「名誉挽回」との違いなどについて紹介しました。
「汚名挽回」は「汚名返上」の誤用とは言い切れないといわれていますが、誤用だとする説も根強くあります。明確に正解といえないということであれば、他の言葉で言い換えた方が安心でしょう。