「弥縫策」の意味とは?語源や「姑息」との違いと類語・対義語も

「弥縫策」とは、一時しのぎの方策のことです。しかし、語源となっている中国の古典では、万全の対策という意味合いで使われていました。この記事では、「弥縫策」の意味・語源について解説するとともに、「姑息」との違いや類語・対義語なども紹介しています。

「弥縫策」の意味や語源とは?

「弥縫策」とは「一時しのぎの方策」の意味

弥縫策の意味は、何らかのトラブルや欠点などを隠すためにほどこす、一時的な間に合わせのことを指して用いられます。読み方は「びほうさく」です。

「弥縫策」は根本的な解決ではなく、その場限りの一時しのぎ、間に合わせで体裁だけ整えるというネガティブな意味合いがあるため、使う時には注意が必要です。

「弥縫策」はほころびを繕うような方策

「弥縫策」は、「弥縫」+「策」から成る熟語です。「弥縫策」の語源にあたる「弥縫」とは、ほころびを繕うことを表しています。

「弥縫」を構成している漢字のひとつ「弥」には複数の意味がありますが、「弥縫」では「ほころびを繕う」ということです。同じく「ぬい合わせる」「取り繕う」ことを指している「縫」とあわさって、熟語の意味を強めています。

「弥縫」の語源は中国の古典

「弥縫」という言葉は、孔子の弟子「左丘明(さきゅうめい)」が著したとされる、『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に記されています。

ここでは「弥縫」が、戦場での陣形が「水の漏れる隙も無い」ということを表しており、日本とは反対の意味合いで使われているのです。「弥」の一般的な意味は「あまねく」「もれなく」であることから考えると、中国での「弥縫」のほうが自然であるといえます。

日本で「弥縫」が「ほころびを繕う」という意味になった理由は、陣形を作る過程での「隙間を埋める」ところの理解の違いにあるようです。

「弥縫策」を使った例文

  • こんな弥縫策でごまかすのではなく、根本的な原因にメスを入れなければならない
  • とにかく今は時間がないので、弥縫策でもいいから講じてほしい
  • 臨機応変と言いながら、彼のやっていることは弥縫策に過ぎない

「弥縫策」と「姑息」の違いとは?

「姑息」とは「その場しのぎ」という意味

「姑息」とは「その場しのぎ」「間に合わせ」のことで、「弥縫」と同じ意味を持っている語句です。

「姑」は「とりあえず」、「息」は「休息」を指しており「とりあえず一息ついて休む」ということを表します。転じて「その場しのぎ」という意味で使われているのです。なお、「姑息」に「策」という意味は含まれていません。

「姑息」に「卑怯」という意味はない

「姑息」を「卑怯」という意味で用いている事例を見掛けることがあります。本来、「姑息」に「卑怯」という意味合いはありませんが、近年では誤用のほうが多くなっているようです。

したがって、「姑息な手段」は「弥縫策」と同じ意味を持った言い回しであり、言い換えにも使えます。

「弥縫策」の類語・類義語とは?

「暫定案」とは仮の取り決めのこと

「暫定案(ざんていあん)」とは、正式な決定がなされるまで、とりあえず定める仮の措置のことです。一時的なものという意味で「弥縫策」の類語として使えますが、あくまで一時的なものであると認識されているという点が異なります。

「時限措置」とは期限を決めての方策のこと

「時限措置(じげんそち)」とは、予め期限を決め期間限定で執行される方策のことです。期限が切れたときにどうするかは、その時に改めて決めることになります。

「時限措置」も一時的な意味合いで使える「弥縫策」の類義語です。「弥縫策」との違いは、期限を過ぎたら改めて対応を決めるという点です。

「お茶を濁す」とはいい加減な言動でその場をごまかすこと

「お茶を濁す」とは、適当なことを言ったり、曖昧な態度でその場をごまかすことを意味する類語です。

「弥縫」と同様に、きちんとした対応をせずにその場だけしのぐということを表したもので、茶道の心得がない者が適当にお茶を混ぜてごまかしたことから、この慣用句が生まれました。

なお、「お茶を濁す」と似ている慣用句の「言葉を濁す」や「口を濁す」は、はっきりと言わずに曖昧にするという意味です。

「付け焼刃」とはにわか仕込みのこと

「付け焼刃(つけやきば)」とは、その場しのぎのために知識や技術などを覚えることです。本来は、切れない刀に鋼の焼き刃をつけ足したものを意味します。

一時の間に合わせに過ぎず、すぐに役に立たなくなることから「弥縫」と同じ合い意味で使われるようになりました。

「弥縫策」の対義語・反対語とは?

「根本的解決策」とは元から解決するための方策

「根本的解決策」とは、問題の根幹にまで立ち戻って解決するための方策のことです。一時的・表面的に取り繕う「弥縫策」の対義語として使われます。

問題の根本から解決方法を探るため時間はかかりますが、すぐに剥げてしまうメッキをやり直すようなことは、かえって時間の無駄であり「根本的解決策」を講じることが望まれます。

「根治」とは根本から退治すること

「根治」とは、ものごとの根本に及んで退治し根絶やしにすることです。また、病気を根本から治すことを指しても用いられています。

「根治」によってその問題はもう起こらなくなるため、その場しのぎの「弥縫策」の対義語・反対語として使うことができます。

まとめ

「弥縫策」の意味・語源のほか、「姑息」との違いや類語・対義語も紹介しました。「弥縫策」は一時しのぎの方策という意味の言葉です。しかし「弥縫」に含まれている「弥」という漢字は通常、「あまねく」「もれなく」という意味で使われているのです。