「一瞥」の意味とニュアンスとは?使い方や「一見」との違いも紹介

「一瞥」とは「ちらりと見る」という意味の言葉です。しかし、やや不遜なニュアンスで受け取られることもあるため注意が必要です。

この記事は「一瞥」の意味とニュアンスのほか、使い方や「一見」との違い、類語・対義語などについて紹介しており、語句への理解を深めることができる内容となっています。

「一瞥」の意味とニュアンス

「一瞥」の意味はちらりと見ること

「一瞥」の意味は「ちらりと見ること」で、読み方は「いちべつ」です。熟語に用いられている漢字の「一」は「わずか」「少し」、「瞥」は「見る」「ちらりと見る」という意味があり、「一」がほんの少しという意味合いを強めています。

「一瞥」には軽視というニュアンスはない

「一瞥」は、ほんのわずかの間だけ見るということを表しているものですが、相手を軽視している、あるいは関心が薄いという意味で受け取られることもある言葉です。

ビジネスに限らず、相手と視線を合わせないことは失礼にあたるとされています。しかし「一瞥」した場合には視線が合わなかったり、視線をそらしたように見えたりするため、相手に不快感を与えるリスクがあるのです。

「一瞥」に上から目線のニュアンスを感じる人も

「一瞥」の読みが、「軽蔑」「蔑視」を連想させるためか、上から目線というニュアンスで受け取られることもあります。

「一瞥」は見る時間がとても短いということを表しているだけで、上から目線で相手を見下しているという意味はありません。しかし、相手や周囲にネガティブな印象を与える傾向があるため、使う際は注意しましょう。

「一瞥」の使い方と例文

「一瞥をくれる」「一瞥もくれず」と使う

「一瞥」は、「一瞥をくれる」という言い回しで用いられることが多い言葉です。「くれる」はされる側・する側がともに使うことができるもので、「一瞥」される側もする側も同じく「一瞥をくれる」という言い回しになります。

しかし自分が相手にする場合の「くれる」は、対等もしくは目下に対して使うもので、目上の人に「くれる」を使うことはありません。

なお、「一瞥をくれる」の否定形ともいえる「一瞥もくれない」は、目もくれない、無視するという意味です。

「一瞥を送る」「一瞥する」という使い方も

「一瞥」は、「一瞥を送る」「一瞥を投げる」「一瞥する」という言い回しでも使われます。

意味は「一瞥」と同じ「ちらりと見る」ですが、「一瞥を送る」「一瞥を投げる」は「視線を投げかける」というニュアンスがあります。また、「一瞥する」は「一目見る」という意味合いで使われています。

「一瞥」を使った例文

  • 彼は遅れてきた社員に一瞥もくれず、会議を進めた
  • 達人は対戦者を一瞥しただけで、腕前のほどがわかるらしい
  • 聴衆に一瞥を送ったのち、候補者はおもむろに演説を始めた

「一瞥」と「一見」の違い

「一見」は一度見ること

「一見(いっけん)」は「百聞は一見に如かず」ということわざや、「一見に値する」という言い回しからもわかるように、一度見ることを表しても使われている言葉です。

ほかに副詞的用法として、「一見真面目そうな人」のように「ちょっと見たところ」という意味合いでも用いられます。

「一見」には初めて会うことという意味も

「一見」を「いちげん」と読む場合、初めて会うという意味になります。料理店や旅館などでは、初めてのお客を「一見さん」と呼び、馴染み客の同伴がなければ利用を断るケースもあるようです。

「一見」は「一瞥」にない意味を持つ言葉

「一見」は「一瞥」と同様に、ちらりと見ることという意味があります。しかし「一瞥」は、「一見」のように複数の意味で使われることはありません。

また「一見」は、「一瞥」のようにネガティブなニュアンスで受け取られることがないものです。したがって、「一瞥」の言い換えとして「一見」は使いやすい言葉といえます。

「一瞥」の類語(類義語)と言い換え

「瞥見」は短い時間で目を通すこと

「瞥見(べっけん)」は「ちらりと見る」ことを表しており、「一瞥」と同じ意味を持っています。また、「書類を瞥見する」というように、短い時間でざっと目を通すことを指しても使われている言葉です。

「瞥見」は硬い表現であるため、文書など書き言葉として用いられることが一般的です。会話で用いられることはあまりありません。

「打見」はちょっと見たところという意味

「打見(うちみ)」は、「ちょっと見たところ」という意味で使われている言葉です。「打見には元気そうだ」のほか、「打ち見たところ~」というように動詞として使うこともできます。

やや古い表現ですが、「一瞥」のようにネガティブなニュアンスはありません。

「一瞥」の対義語・反対語

「凝視」は目を凝らして見つめること

「凝視(ぎょうし)」は目を凝らして見つめることを表しており、「一瞥」とは反対の意味を持っている言葉です。

「凝」という文字には、「とどまる」「集中する」という意味があり、しっかりと見ることを指す「視」とともに熟語を構成しています。

「注視」は注意深く見つめること

「注視(ちゅうし)」とは、注意深く見つめることを表した言葉で、「一瞥」の対義語にあたります。熟語に用いられている「注」は、「集中する」「そそぐ」という意味です。

「注視」は「凝視」とほぼ同じ意味ですが、「凝視」は一点から動かないという意味合いが強いことに対し、「注視」には見守るというニュアンスがあるという違いがあります。

まとめ

「一瞥」の意味・ニュアンスのほか、使い方や「一見」との違いも紹介しました。「一瞥」という言葉そのものに相手を下に見るような意味合いはありません。

しかし言葉そのものの語感や、よく用いられる「一瞥をくれる」という言い回しには、やや不遜なニュアンスが感じられるようです。可能であれば、他の言葉に言い換えることをおすすめします。