「アクシデント」とは、不意に起こる良くない出来事という意味で使われているカタカナ語です。違いがわかりにくい言葉として、「ヒヤリハット」のほか「トラブル」「ハプニング」、「インシデント」などがあります。
この記事では、「アクシデント」の意味と使い方、類語との違いについても紹介しています。
「アクシデント」の意味とは
アクシデントとは「不意に起こる良くない出来事」
「アクシデント」とは、不意の出来事や思わぬ故障、事故のことを表したカタカナ語です。主に「予期せずに起こった良くない出来事」という意味で、突然の事故や災難などのことを指して用いられています。
「アクシデント」は医療や看護で「医療事故」の意味も
医療・看護において「アクシデント」は、医療事故という意味で使われています。医療の過程で起きる、予期せぬ出来事によって発生する人身事故を指すものです。医療従事者の過誤や過失の有無は問われず、不可抗力の事故も含まれます。
「アクシデント」の語源・由来は英語「accident」
「アクシデント」の語源・由来となっているのは、英語の「accident」です。「アクシデント」は、英単語の読みをそのままカタカナ表記した語ですが、カタカナ語になった「アクシデント」と英語の「accident」では、意味合いがやや異なっているのです。
英語の「accident」は、偶然に起きたという点がメインとなっており、出来事そのものの良し悪しについては限定していません。偶発的なもののなかでもネガティブな出来事を指して用いられているカタカナ語の「アクシデント」とは、この点が異なっています。
「アクシデント」の使い方と例文
「アクシデント」は予想できないことに使う
「アクシデント」は、「予期せぬ」「不慮の」という枕詞がつくような、偶発的な出来事に対して使われる言葉です。したがって、ある程度予想されていたことや、必然的なことを指して「アクシデント」とはいいません。
「アクシデント」はポジティブな意味で使わない
カタカナ語の「アクシデント」は、予期せぬ出来事のなかでもネガティブなものに対して使います。そのため、宝くじに当たったようなポジティブな出来事を指して、「アクシデント」と使うことはありません。
「アクシデント」では重複表現に注意を
「アクシデント」は、「思わぬアクシデント」「予期せぬアクシデント」のような表現を目にすることがあります。
しかし、「アクシデント」には「偶発的な」という意味がふくまれているため、「思わぬ」や「予期せぬ」を使う必要はありません。二重表現として誤りになるため注意しましょう。
「アクシデント」を使った例文
- 突然の停電というアクシデントにより、イベントの開始が大幅に遅れた
- メインゲストの遅刻というアクシデントが発生し、スタッフ一同肝を冷やした
- 彼の車が突然故障した原因は、アクシデントではなくメンテナンス不足に違いない
「アクシデント」と「ヒヤリハット」の違いとは
「ヒヤリハット」とは重大事故の背後にあるもの
重大な事故やミスを起こしそうになって、「ヒヤリ」「ハッと」したという経験があるかもしれません。「ヒヤリハット」とは、「ヒヤリ」と「ハッと」をつなげた造語です。重大な事故の寸前に起きる不注意や誤認、判断ミスが原因で発生する出来事を意味します。
「ヒヤリハット」は、「1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件の異常が存在する(ハインリッヒの法則)」でいう、300件の異常のことです。「ヒヤリハット」の特定と再発防止により、軽微な事故だけでなく重大事故を未然に防ごうという考えは、リスクマネジメントにおいて重視されています。
「ヒヤリハット」は「アクシデント」の予兆
予期せぬ事故である「アクシデント」の前には、数多くの「ヒヤリハット」があります。つまり「ヒヤリハット」は「アクシデント」の予兆といえるもので、予期できないものである「アクシデント」を予見することができるものなのです。
しかし「ヒヤリハット」そのものが小さな「アクシデント」といえるものであり、決して軽視できるものではありません。
「アクシデント」の類語とは
「トラブル」とはもめごと・いざこざのこと
「トラブル」とはもめごとやいざこざのほか、機械の故障や不調のことを表したカタカナ語です。英語の「trouble」の読みをカタカナ表記したもので、英語では心配事や面倒なこと、問題点という意味で使われています。
予期せぬものである「アクシデント」に対し、「トラブル」は予期できるものや故意による場合も使えるのが特徴です。
「ハプニング」とは偶然の出来事のこと
「ハプニング」とは、偶然の出来事のことです。ネガティブな出来事に対して用いられる「アクシデント」とは違い、「ハプニング」は出来事の良し悪しを問わずに使うことができます。
「ハプニング」は英語の「happening」の読みをカタカナ表記したものですが、英語での意味は「出来事・事件」で偶然という意味合いは特にありません。
「インシデント」とは大事に至りかねないミスやエラー
「インシデント」とは、英語「incident」の読みをカタカナ表記した言葉で、大事に至りかねないミスやエラーのことを表すものです。英語の「incident」でも、重大事件に発展しかねない出来事を指しています。
カタカナ語の「インシデント」は、交通や医療、情報セキュリティの分野などにおけるリスクマネジメント用語として使われることが一般的です。
「ヒヤリハット」が人の不注意や誤認、判断ミスによることに対し、「インシデント」が自然災害や意図的な行為によるものも対象となります。
まとめ
「アクシデント」の意味と使い方のほか、「ヒヤリハット」などとの違いについて紹介しました。アクシデント」は、予測できないものと定義されています。しかし、事故に至らなかった事例や事故の前に起きた出来事などの蓄積・解析によって、「アクシデント」を想定内に収めようとする努力は大切です。
リスクマネジメントにおいては、問題を安易に「アクシデント」で片付けないことが必要でしょう。