「資本主義」とは?反対語「社会主義」や民主主義との関係も解説

2024年新一万円札の顔になる渋沢栄一は「日本資本主義の父」と呼ばれますが、この「資本主義」とはどういった考え方・体制を意味するのでしょう。「資本主義とは?」という基本知識をはじめ、そのメリット・デメリットや「資本主義の限界」について解説します。社会主義や民主主義との違いについても見ていきましょう。

「資本主義」とは

「資本主義(資本主義経済)」とは一言でいうと「自由な経済」

「資本主義」とは端的にいうと「自由な経済体制」と表現することができます。もう少し詳しくいうと、生産手段を資本家(企業の経営者)がもち、利益追求のために労働者を働かせて生産するという経済体制が「資本主義」です。国が管理するのではなく、資本家や経営者が自由な経済活動を行うことができます。

その自由な競争によって市場では価格が安くなったり、需要に応じて価格が高くなったりします。競争によって品物の質が良くなるのも「資本主義」の特徴です。また、「資本主義」では労働に応じて報酬が得られます。たとえばいい会社に就職して高い給料をもらう、という考えも「資本主義」によるものです。

「資本主義」は英語では「capitalism」

「資本主義」は英語では「capitalism」という単語を使用します。たとえば「資本主義国」は「a capitalist country」、「資本主義経済」は「a capitalist economy(a capitalistic economy)」といった英語訳が可能です。

「資本主義」は経済体制を表す、政治体制ではない

「資本主義」は経済体制を表す語です。「資本主義」にのっとった経済体制という意味で「資本主義経済」という語を使う例もあります。国のあり方を指す言葉のひとつではありますが、あくまでも「経済」に着目したワードであり、政治体制を表す語ではありません。

「新しい資本主義」は岸田内閣の政策のひとつ

「新しい資本主義」という表現は、2021年に岸田内閣が打ち出した政策です。2021年10月には内閣総理大臣を本部長とする「新しい資本主義実現本部」の設置が閣議決定されました。

この「新しい資本主義」では格差の拡大に着目し、「成長と分配の好循環」による分厚い中間層の復活を目指すという考えが主軸となっています。

「資本主義」のメリットとデメリット

メリットは競争により経済が発展すること

「資本主義」のメリットは、競争によって経済が発展することです。「資本主義」では個人が自由にお金を稼ぐことができるため競争が起こります。その競争から社会全体の経済も発展します。

デメリットは貧富の差が生まれること

競争に勝ちお金を稼ぐ人がいる一方で、競争に負ける人が生まれるのが「資本主義」のデメリットのひとつです。いわゆる勝者と敗者の間には格差、つまり貧富の差が生まれます。金持ちがいれば経済的に困窮する人がいる、というわけです。

「資本主義の限界」もしばしば話題に

「資本主義」の限界とは、「資本主義」経済における問題点を指摘する際に用いられる表現で、「資本主義」を危ぶむような表現です。具体的にいうと、広がり続ける経済格差や急成長が見込めるような未開拓市場が少ないという状況を言い表す際に用いられることがあります。

確かに社会には「資本主義経済の限界」と言える事象が存在するものの、「資本主義」がなくなる事態は見込めないという見方が一般的です。

「資本主義の国」はどこ?一覧

日本は「資本主義国」のひとつ

日本はもちろん、「資本主義国」のひとつです。世界的には18世紀後半に起こった産業革命で誕生しましたが、日本では明治維新以後、市民が自由に職につけるようになったことが「資本主義」の基礎となったと言われています。

世界では多くの国が「資本主義」を採用

日本に限らず、アメリカやフランス・イギリスなどといった欧州諸国をはじめ、多くの国が「資本主義」を採用しています。ただし、経済は同じ「資本主義」でも、政治体制・統治方法は国によって異なります。たとえば、日本は議院内閣制ですが、アメリカは大統領制、フランスの場合は大統領と首相の両方が存在するように、あくまでも経済体制が同じであるにすぎません。

「資本主義」の反対は「社会主義」

「資本主義」とは反対の経済体制は「社会主義」と呼ばれます。「社会主義」の国では財産は一部を除き国が所有し、資源・労働力・ものの値段なども全て国によって管理されます。また、国民の労働に対しては、その労働量に関係なく、一律の対価(=報酬)が支給されます。

世界でこの「社会主義」を採用する国は中国、北朝鮮、ベトナム、ラオス、キューバの5カ国です。ただし中国に関しては、「社会主義」を主張しながらも実際には「資本主義」を行っています。

「資本主義」と「民主主義」の違いとは

「民主主義」とは国民が国の決定権を持つ考え方

「民主主義」とは、国民に政治の主権を委ねる体制のことで、国民が選んだ代表を通じて国のあり方を決めるという体制です。国民が国の重要な決定権を持つという考えでもあり、平たくいうと「国のことは国民みんなで話し合って決めよう」というのが「民主主義」です。

「資本主義」と「民主主義」は分野が異なる

「資本主義」と「民主主義」の違いを一言でいうと、ジャンルです。「資本主義」が経済体制を表す語であるのに対し、「民主主義」は政治体制に使う語です。どちらも国のあり方を表すものの、別分野で使う表現なのです。

まとめ

「資本主義」とは一言でいうと、自由な経済を指します。労働に応じた報酬が得られること、また市場で競争が起きることで良質のサービスや低価格の商品が手に入ることも「資本主義」の大きな長所です。これに対し、競争によって格差が生じるのが「資本主義」の短所でもあり、止まらぬ経済格差は「資本主義の限界」と表現されることもあります。

なお、「社会主義」は「資本主義」とは対義的な経済体制を表す語ですが、「民主主義」は経済に関する語ではありません。「民主主義」は政治体制に使う語ですので、全く異なるジャンルの表現です。