「孫子の兵法」をビジネスに役立てる!名言を原文とともに解説

中国の古典『孫子』に書かれた「孫子の兵法」が、優れたビジネスの指南書であるとして注目されています。古代の兵法がなぜ現代のビジネスに有用なのでしょうか?ここでは「孫子の兵法」とはどのようなものなのか、その概要を名言とともに解説します。



「孫子の兵法」とは?

まずはじめに「孫子の兵法」の概要について説明します。

「孫子の兵法」は『孫子』に書かれた兵法のこと

「孫子の兵法」とは、中国最古の兵法書である『孫子』に書かれている兵法のことをいいます。

『孫子』は「孫武」が書いた兵法の書

『孫子』(そんし)とは、今から2千5百年ほど前の中国春秋時代の軍事思想家であった「孫武」(そんぶ)が書いたとされる兵法書です。『孫子』は、中国における代表的な兵法書の古典「武経七書」(ぶけいしちしょ)のうちのひとつですが、その中でも最も優れているとされています。

『孫子』より前の時代は、戦争の勝敗は天運に決定されるという考え方でした。孫武はそれに異を唱え、勝敗は運ではなく合理的な理由があることを主張します。そして勝利を得るための方式を理論化して、『孫子』にまとめたのです。

『孫子』は「兵は国の大事なり」で始まる

『孫子』は全13篇で構成され、最初の計篇は「兵は国の大事なり」という言葉から始まります。

兵とは国家の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。
戦争とは国家の大事である。国家の死活が決まるという、国家の存亡の分かれ道であるのだから、よく熟慮しなければばならない。

この言葉に続けて、戦いの五つの基本事項を説きます。五つの基本事項(五事)は次のとおりです。

  • 「道」民と君主が生死を共にすることについて疑いのない状態のこと。
  • 「天」気温の寒暖や四季の推移の定めのこと。
  • 「地」距離、地形、地形の状態のこと。
  • 「将」優れた将軍の能力のこと。
  • 「法」各人の職権や将軍の指揮権についてのルール。

これらの定義は、現代のビジネスにおいての組織のあり方や、戦略の進め方にも通用する普遍性を持ったものであるといえます。

「諸子百家」が論戦した戦国時代に書かれた

『孫子』が書かれたのは中国の「春秋戦国時代」とよばれる、多数の国家が乱立して戦争が絶えない混乱の時代でした。この時代には、いかにして世の中を治めるか、あるいはいかにして生きるべきか、またどの思想が正しいのかというなど、さまざまな思想家や学者、学派が生まれ、論戦を繰り返しました。

『孫子』の著者「孫武」とは?

次に『孫子』を著した「孫武」について説明します。

「孫武」は軍事思想家

孫武は紀元前6世紀の人物とされる武将で、思想家です。「戦わずして勝つ」に代表される戦略思想や、さまざまな戦術やスパイを用いた情報戦の理論化などを行いました。

毛沢東や軍事研究者に大きな影響を与えた

孫武の思想は古代中国の思想でありながら、現代においても古びることなく、時代を超えて軍事研究者などに影響を与え続けています。近代では毛沢東やベトナムの革命家ホー・チ・ミンもその理論を取り入れていたことが知られています。

ビジネスに役立つ「孫子の兵法」とは?

『孫子』は、ただ単に合理的な戦争の仕方を書いた戦争の指南書ではなく、いかに戦うのが人間の道であるかが書かれた人哲学書です。その教えは実際の戦争だけでなく、ビジネスや人の生き方にも応用することができます。

「孫子の兵法」の根底となる思想である「戦わずして勝つ」と「兵は詭道なり」について、次に説明します。

「戦わずして勝つ」が理想の兵法

『孫子』には、「戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」(戦わずに敵を屈服させるのが最善である)と書かれています。これは『孫子』の最も理想とする兵法である「戦わずして勝つ」を表した一句です。

「戦わずして勝つ」とは、戦争による損益を考えた思想です。勝った時に最上の利益が得られるのは、自分も相手も無傷の状態であることが明らかです。この基本的な考えは、ビジネスの基本戦略であるともいえます。

「兵は詭道なり」戦わないために敵を欺く

『孫子』はまた、「戦わずして勝つ」ためには「敵を欺く」ことが大切だといいます。

『孫子』には、「兵は詭道(きどう)なり」(戦争とは、敵を欺く行為である)と書かれており、戦争の本質を「詭道」だとしています。また、「凡そ戦いは、正を以て合し、奇を以て勝つ」(戦争はまず正攻法で相手にあたり、奇策によって勝利する)ともいい、真向から勝負するのではなく、意表を突くことを説きます。

やはりここでも、作戦なしに戦うことによって両軍に被害が生じ、利益の損失が発生することを避けよといっています。ビジネスにおいても同様だといえるでしょう。

ビジネスに役立つ名言を原文とともに紹介

最後にビジネスに役立つ名言を、原文の書き下し分と現代語訳ともに紹介します。

道を修めて法を保つ

善く兵を用うる者は、道を修めて法を保つ。故に能く勝敗の政を為す。
戦いの上手な者は、人心をひとつにまとめ、隊の規律を守る。だから軍の統制ができ、勝敗を思うままにできる。上に立つも者の統率力が大切である。

彼を知り己を知れば百戦して殆うからず

彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らずして己を知らざれば、戦う毎に必ずあやうし。
敵の実情を把握し、味方の実情も把握していれば百戦たたかっても危険はない。敵の実情を把握せず、味方の実情だけ把握していれば勝敗は五分である。敵と味方のどちらの実情も把握していなければ、戦う毎に危険な状況に陥る。

人を致して人に致されず

およそ先に戦地に処りて敵を待つ者はいつし、後れて戦地に処りて戦いにおもむく者は労す。ゆえに善く戦う者は、人を致して人に致されず。
先に戦場について敵軍の到着を待てば余裕が持てるが、あとから戦場に着いて、先に有利な地を占めている敵を攻めるのは苦しい。したがって戦いに巧みな者は、先に主導権を握って相手を動かし、相手のペースに巻き込まれない。

先ず勝つべからざるを為す

昔の善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。
昔の戦い上手は、まず自軍の守りをしっかり固め、そのうえで敵に弱点が生まれるのを待ち、勝てる態勢になるのを待った。

まとめ

『孫子』に書かれた「孫子の兵法」は、「戦わずして勝つ」を基本思想とする、合理的に勝つための戦略の思想です。つまり、戦争の指南書ではなく、どのように相手と戦うのが優れているかが書かれた思想書だといえます。そこにある普遍性は色あせることなく、現代のビジネス戦略や、人の生き方への戒めなどとして時を超えて読み継がれています。