「拙宅」の意味・読み方とは?類語・対義語と謙譲語の使い方も

「拙宅」は、自分の家を表す敬語の謙譲語です。古めかしい言い回しですが、ビジネスシーンなどで比較的よく使われています。この記事では、「拙宅」の意味や言い換えに使える類語のほか、尊敬語にあたる対義語も紹介しています。敬語の中でも謙譲語は特に使い方が難しいものですが、この機会に軽く復習してみませんか。

「拙宅」の意味と読み方とは?

「拙宅(せったく)」とは自宅のこと

「拙宅」の読み方は「せったく」で、自宅のことをへりくだって言う言葉です。「拙」という文字は、「つたない」「おとる」という意味を持っており、自分に関係することをへりくだって言うときにも使われます。

たとえば自分のことを「拙者(せっしゃ)」と言ったり、自分の作品を「拙作(せっさく)」といったりします。

「拙宅」は大邸宅でも使える言葉

「拙」という文字の「つたない」「おとる」という意味から、「拙宅」を「ささやかな家」や「粗末な家」のように受け取れるかもしれません。

しかし「拙宅」にはそのような意味はなく、あくまでも自宅のことをへりくだっていう時に使う言葉です。したがって、自宅が大邸宅であっても「拙宅」と言って差し支えはありません。

「拙宅」はマンションや賃貸にも使える言葉

「拙宅」は自宅のことを指すものですが、一戸建てでなければ使えないというものではありません。

「宅」という文字には「居住する場所」「住まい」という意味があり、マンションなどの集合住宅や、アパートなどの賃貸住宅にも使うことができる言葉です。

「拙宅」は女性も使うことができる言葉

主に武士が使っていた「拙者」の厳めしいイメージからか、「拙宅」が男性専用の言葉と思われているかもしれません。

しかし、「拙宅」は男女を問わず使うことができる言葉です。もう少し柔らかい表現を望まれる場合には、後述する「小宅」を使われるとよいでしょう。

「拙宅」の正しい使い方

「拙宅」は敬語の謙譲語

謙譲語は敬語のひとつです。尊敬語が相手に対して立てる表現を用いることで敬意を表すことに対し、謙譲語は直接相手側を立てるのではなく、自分がへるくだることで相対的に相手側を高めるという形をとります。

たとえば「言う」の尊敬語は「〇〇様がおっしゃる」ですが、謙譲語は「私が申し上げる」となります。

謙譲語は相手のことには使わない

謙譲語は敬語ですが、相手のことや動作には使いません。「拙宅」も自分の家を指して使う言葉で、相手の家のことを言う時に使うのは誤りです。

謙譲語が難しいとされるのはこの点にあり、「伺ってください」「参られます」「頂いてください」などを相手の動作に対して使ってしまうという誤りも、良く見らます。

「拙宅」はビジネスシーンでも使われる

自分の家のことを表す言い方には、「自宅」や「我が家」などがあります。しかし、目上の方に対して自分の家のことを言う場合には、「拙宅」を用いることをおすすめします。

「拙宅」は古い言葉のように思えるかもしれませんが、現在でもビジネスシーンのようなオフィシャルな場だけでなく、目上の方との日常会話などでも一般的に使われている言葉です。

「拙宅」を使った例文

  • この度は拙宅までご足労いただき、誠にありがとうございます。
  • 先日は拙宅の新築祝いに結構なお品を頂戴し、恐縮しております。
  • お近くにお越しの際は、ぜひ拙宅にもお立ち寄りください。

「拙宅」の類語・言い換え語

「拙家」は「拙宅」と同じ意味

「拙家」は、「せっか」あるいは「せっけ」と読みます。自宅のことをへりくだって述べるときに使う言葉で、「ささやかな家」や「粗末な家」という意味はありません。

そのため「拙宅」の言い換えとして使うことができますが、「拙宅」のほうが一般的によく使われています。

「小宅」には小さい家という意味も

「小宅(しょうたく)」は、「拙宅」と同様に自宅のことをへりくだって言うときに使う言葉です。

「小」という文字には、「小さい」「とるに足りない」という意味が一般的ですが、男性が自分のことを指して言う「小生(しょうせい)」のように、自分に関することをへりくだっていうときに使うという用法もあります。

なお、「小宅」には小さい家という意味もありますが、文脈をみれば間違えることはないでしょう。

「拙宅」の対義語

「尊宅」は「お宅」より敬意の高い尊敬語

「尊宅(そんたく)」は、敬意を表して相手の家を言う尊敬語です。「尊」は尊敬の意を加える接頭辞で、「尊顔」や「尊名」のように使います。

なお、「ご(御)尊宅」のように「ご(御)」をつけると、さらに敬意を高めることができますが、やや仰々しい印象を与えることもあるため、話し言葉ではあまり使われていません。

「貴宅」も「尊宅」と同じ意味の言葉

「貴宅(きたく)」も「尊宅」と同じく、敬意を表して相手の家を言うときに使う尊敬語です。「貴」も「尊」と同様に尊敬の意を加える接頭辞で、「貴社」や「貴殿」のように使います。

「尊」と「貴」では、「尊」が尊敬の意味合いを強調したいときに、「貴」は重要であることを示したいときに適しているという違いがあり、「貴」のほうがビジネスシーンでの書き言葉としてよく使われる傾向がみられるようです。

まとめ

「拙宅」の意味・読み方のほか、類語・対義語と謙譲語の使い方も紹介しました。「拙宅」は自分の家をへりくだっていう言葉で、語句そのものは簡単です。

しかし謙譲語そのものが難しいうえに、気を遣う相手に対して使うことが多く、緊張を強いられます。文脈の中で正しく謙譲語を使うためにも、日ごろから少しずつ知識を蓄えていくことをおすすめします。