「穢れ」とはどんな意味?「汚れ」との違いや神道との関係も解説

「穢れ」とは、忌まわしく不浄な状態を指した言葉です。今どき「穢れ」など迷信のように思われるかもしれません。しかし、現代の日本人の国民性や嗜好にも「穢れ」は大きな影響を与え続けているのです。この記事では、「穢れ」の意味のほか、「汚れ」との違いや神道との関係なども紹介しています。

「穢れ」の意味とは?

穢れとは「忌まわしく不浄な状態」を意味する

「穢れ」とは忌まわしく不浄であるとされる状態を指した言葉で、読み方は「けがれ」です。「穢」という漢字は、刈り取った後の収穫物がバラバラできたない様子を表しています。「きたない」「けがれた」「あれる」などの意味があります。

「穢れ」は日本における禁忌の思想

「穢れ」は、日本における禁忌の思想です。具体的には出産や葬送などのほか火事や病気、女性の月経などがあげられます。かつて出産や出産後一定期間の生活を「産屋(うぶや)」と呼ばれる小屋や部屋で行っていました。

また、喪中の人や産後・月経中の女性が、炊事などの火を他の人と別にする「別火(べっか)」と呼ばれる風習もありました。

「穢れ」がある者は一定期間隔離される

「産屋」や「別日」などは、「穢れ」がある者を他の共同体から隔離するためのものです。また、宮廷では朝参を禁じたり、猟師などは山に入ることを禁じたりする形で、「穢れ」の状態にある者を隔離します。

他にも神社にお参りすることやお祭りに参加することも禁止されますが、一定期間の謹慎などを経ることで復帰が可能となります。

「穢れ」には謙遜の意味も

「末席を穢す」という言い回しがありますが、これは席をよごしたという意味ではありません。能力や身分以上の地位につくような場合、「座ることさえ憚られる私のようなものが、恐れ多くも」という謙遜の意味を込めて使うものです。

「穢れ」と「汚れ」の違いとは?

「穢れ」は常用漢字「汚れ」を使うことも

「穢れ」は常用外漢字のため、公文書や報道関係で使うのは常用漢字「汚れ」です。不浄という意味で使う場合、「汚れ」は「穢れ」の類語ということができます。

「穢れ」と「汚れ」の違いは、精神面や内面が重視されることには「穢れ」を使うことです。「汚れ」にはそのような意味合いはないため注意しましょう。

「穢れ」は「よごれ」とは読まない

「穢れ」を「汚れ」と表記することはありますが、「よごれ」とは読みません。参考までに「穢」と「汚」の訓読みをあげておきましょう。

  • 穢:あ(れる)・きたな(い)・けが(れる)・わる(い)
  • 汚:きたな(い)・よご(す)・よご(れる)・けが(す)・けが(らわしい)・けが(れる)

「穢れ」の使い方と例文

「穢れ」とは内面におよぶもの

「穢れ」は、動詞「穢れる」の連用形が名詞化したものです。「〇〇の穢れ」「穢れなき〇〇」のように使います。

「穢れ」は表面的なものではなく、そのもの内面に及ぶものとされていますが、一定の手順や期間を経ることによって本来の姿に戻ることができるとされています。

「穢れ」とは大切なものがよごれてしまった状態

「穢れ」とは、大切なものがよごれてしまった状態を指して用いられます。美しい心や神聖な場所のほか、名誉や誇りなど、本来よごれがないはずのものがよごれてしまったときに使うものです。

したがって、普段着などの日常的なものがよごれてしまったような場合に、「穢れ」という言葉は使いません。

「穢れ」とは忌まわしいもの

「穢れ」は、忌むべきものに対して使う言葉です。たとえば、子供が泥のついた足で廊下を歩いて床がよごれた場合、自宅であれば「穢れ」にはなりません。しかし、清浄であるべき神殿の場合には「穢れ」に該当します。

「穢れ」を使った例文

  • J. S. バッハの『穢れなき神の子羊』を聞くと、心が洗われるように感じる。
  • 心の穢れは、本人が気づいて改めようと決意すれば取り去ることは難しくない。
  • 弟のしでかした不始末は、家名の穢れと父が言うほどのものとは思えなかった。

「穢れ」と神道の関係とは?

「穢れ」は禊で祓うことができる

「穢れ」は、『古事記』や『日本書紀』にも登場しています。黄泉(死者の国)から戻ったイザナギが、身体を洗い清める禊(みそぎ)によって「穢れ」を取り除いた際に生まれたと伝えられているのが、アマテラス・ツクヨミ・スサノオの三尊子(さんきし)です。

「手水舎」は略式の禊

禊は、自らの「穢れ」を落とし清らかにすることを目的としたものです。もともとは川や海で水浴して不浄を取り除くものでした。現在でも神社にある「手水舎(てみずや)」は、川や海で清めをおこなう禊を簡略化したものです。

また、悪い事は水に流すという日本的な思想や綺麗好きという国民性は、禊からきていると考えられています。

まとめ

「穢れ」の意味や「汚れ」との違い、神道との関係を紹介しました。「穢れ」は常用外漢字であることから、「汚れ」に置き換えられることが増えています。厳密にいうと、「穢れ」は精神面や内面の清浄さが損なわれた状態を指すことに対し、「汚れ」は目に見える汚れを指すという違いがあります。