「犬に論語」は、無駄なことのたとえとして用いられることわざです。動物と価値のあるものを対比させたことわざとしては「猫に小判」や「牛に経文」などたくさんあり、いずれも似た意味合いを持っています。この記事では「犬に論語」の意味のほか、類語にあたることわざや四字熟語などを紹介しています。
「犬に論語」の意味と使い方とは?
「犬に論語」とは無駄なことのたとえ
「犬に論語(いぬにろんご)」とは、道理を言って聞かせても益のないことを表したことわざです。
論語は孔子と弟子たちとの問答をまとめた書で、座右の銘にもよく用いられています。この論語を犬に聞かせても内容を理解することはできないことが、ことわざの由来・語源となっています。
「犬に論語」は悪い意味のことわざ
「犬に論語」での「犬」は、意味を理解できない人の比喩です。いくら良いものであっても理解できない者にとっては無駄であるという悪い意味のことわざであるため、相手に面と向かって言うことは避けたほうが無難でしょう。
なお、自分の知識が足りないことや、風流を解さない無粋さを謙遜して言うときには問題なく使うことができます。
「犬に論語」を使った例文
- 聞く耳を持たない人に対しては、何を言っても「犬に論語」だ。
- サボることしか考えていない弟に勤勉の精神を説いても、「犬に論語」で終わるだろう。
- せっかく高名な先生の講演会に出席できたのに、難しすぎて「犬に論語」だった。
「犬に論語」と似たことわざとは?
「牛に経文」とはいくら聞かせても効果がないこと
「牛に経文(うしにきょうもん)」とは、理解できない者や聞く気がない者にいくら言い聞かせても無駄だということを表したことわざです。
経文とはお経の文句のことで、お釈迦様の教えを記した言葉や書物のことを指しています。残念ながら牛には経文を理解することができないので、いくら聞かせても無駄であるということがことわざの由来・語源です。
「兎に祭文」とは意見をしても無駄なこと
「兎に祭文(うさぎにさいもん)」とは、意見をしても何ら反応がなく無駄なことを表したことわざです。
祭文とは祭で神に捧げる祝詞(のりと)のことで、これを兎に聞かせても理解できず無駄になるということが、ことわざの由来・語源となっています。
「馬の耳に念仏」とは理解できない者に良い話は効果がないこと
「馬の耳に念仏(うまのみみにねんぶつ)」とは、理解できない者や聞く気のない者にいくら良い話を聞かせても何の効果もないことをたとえたことわざです。
念仏とは「南無阿弥陀仏」などのように仏の名を唱えることで、これによりすべての人が救われるとされています。しかし、このようなありがたい念仏であっても、意味が分からない馬にとっては何の効き目もないということが、ことわざの由来・語源です。
「猫に小判」とは価値を知らない者にとって意味がないこと
「猫に小判(ねこにこばん)」とは、価値が分からない者にとってはどんなに貴重なものでも意味がないことを表したことわざです。
小判の価値を知らない猫とって、小判は何の意味もないものであるということが、ことわざの由来・語源となっています。なお、「猫に小判」は上方のいろはかるたに採用されています。
「犬に論語」と似た意味の四字熟語
「馬耳東風」とは重要な話を聞き流してしまうこと
「馬耳東風(ばじとうふう)」とは、自分にとって重要な話に気付かずに聞き流してしまうことを指した四字熟語です。
中国・唐代の詩人である李白の『答王十二寒夜独有懐』のなかに、「世の人々は詩などを聞いても良さを理解できずに聞き入れない。まさに馬が耳をなでる春風になにも感じないように。」という意味合いの言葉があります。これが「馬耳東風」の由来・語源となったものです。
「対牛弾琴」とは意味のないことのたとえ
「対牛弾琴(たいぎゅうだんきん)」は、好意が無駄に終わることや、何の意味もないことを表した四字熟語です。
音楽を理解しない牛に琴を弾いて聞かせても少しも響かないように、凡人に高邁な話を聞かせても何も感じす、何の意味もありません。なお、ことわざの「牛に対して琴を弾ず」は、四字熟語の「対牛弾琴」を読み下したものです。
「呼牛呼馬」とは何を言われても取り合わないこと
「呼牛呼馬(こぎゅうこば)」とは、言いたいように言わせて取り合わないことを表した四字熟語です。中国・戦国時代の思想家である荘子の著作『荘子』天道篇のなかに、「あなたが私を牛と呼んだので之を牛といい、馬と呼ぶなら之を馬というだろう」という意味で「呼牛呼馬」が登場しています。
「犬に論語」は意味が分からないから聞き流すという意味合いですが、「呼牛呼馬」は意味が分かっているが取り合わないという点に違いがあります。
まとめ
「犬に論語」の意味のほか、似たことわざや類語の四字熟語も紹介しました。動物が登場することわざはたくさんありますが、動物と価値のあるものを対比させた場合、悪い意味合いで使われるものが多いようです。使う相手や場面には注意しましょう。