ことわざを使うと、話に説得力が生まれます。今回はことわざのなかでも、面白いものを12種類厳選。動物が入った面白いことわざや、面白い間違いを起こしやすく注意したいものや有名で使うとかっこいいものなどをご紹介します。英語のことわざも日本語のことわざへの言い換えと共にご紹介していますので、参考にしてみてください。
面白いことわざとは?
面白いことわざ一覧(意味付き)
- 「商いは牛の涎」…商売は気長に努力せよということ。
- 「虎を野に放つ」…猛威を振るう者を、力が発揮できる状態で自由にさせること。
- 「猫に鰹節」…過ちが起きやすい状態のこと。
- 「蟻の這い出る隙もない」…少しの隙も無いほど厳重な警戒がされていること。
- 「逆鱗に触れる」…目上の人を激怒させること。
- 「衣の袖から鎧が見える」…うわべは取り繕っているが、本音がちらついて見えること。
- 「百聞は一見に如かず」…何度も聞いたことより一度自分の目で見た方が勝ること。
- 「待てば海路の日和あり」…思うようにいかない時は、待っていればチャンスがくること。
- 「禍を転じて福と為す」…悪い出来事もうまく利用すれば幸運に繋げられること。
- 「A closed mouth catches no flies.」…閉じた口にハエは入らない。
- 「You can’t judge a book by its cover.」…本の価値は表紙では判断できない。
- 「Anger can be an expensive luxury.」…怒りは高い贅沢品になることがある。
面白いことわざの特徴を簡単に解説
面白いことわざは、言葉の響きが面白おかしく聞こえても、意味を知るとなるほど、と納得させられるものが多い特徴があります。昔から言い伝えられてきたことわざには、先人たちの訓戒が込められているため、説得力が増すのです。
そのままの意味の裏に隠された教訓があることが、ことわざの面白さ。ただ事実を言われて諭されるよりも、一度じっくり考えてみると深い意味が伝わることわざは、たくさん知っておくと様々なシーンで役に立つことがあるでしょう。
動物が出てくる面白いことわざ
「商いは牛の涎」は商売は気長に努力せよということ
「商いは牛の涎(あきないはうしのよだれ)」は、商売は気長に辛抱強く、こつこつと努力を続けることが大事だということのたとえです。
牛の涎が切れ目なく長く細く垂れることから、商売も同様に、大きな儲けをせっかちに求めるのではなく、こつこつ長く続ける方がよいということに由来しています。類語に「商人は牛の涎(あきんどはうしのよだれ)」があります。
「虎を野に放つ」は猛威を振るう者を自由にさせること
「虎を野に放つ(とらをのにはなつ)」は、猛威を振るう者を、力が発揮できる状態で自由にさせることをたとえたことわざです。また、大きな災いの元となる危険をそのままにし、後に大きな害になることのたとえとしても使われます。
「あの自由人が一人暮らしをしたら、虎を野に放つようなものだ」のように使用し、類語に「千里の野に虎を放つ(せんりののにとらをはなつ)」があります。
「猫に鰹節」は過ちが起きやすい状態のこと
「猫に鰹節(ねこにかつおぶし)」は、過ちが起きやすい状態や、危険で油断ができないことを意味することわざです。猫のそばに好物の鰹節を置くと、すぐに食べられてしまうことから転じています。
風来山人(ふうらいさんじん:平賀源内ひらがげんないのペンネーム)作の談義本『根無草(ねなしぐさ)』の一節「焼鼠を狐に預け、猫に鰹節の番とやらにて、必定、しくじりの番なり」が由来です。
以下の記事では「猫」に関することわざや慣用句などをまとめて紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。
■「猫」のことわざや慣用句は?四字熟語や中国・フランス語も紹介
面白い間違いをしやすいことわざ
「蟻の這い出る隙もない」は少しの隙間もない程、警戒が厳重
「蟻の這い出る隙もない(ありのはいでるすきもない)」は、蟻だけが通れるくらいの少しの隙間もないほど、厳重な警戒がされていることをたとえて言う言葉です。四方八方を厳重に囲まれ、どこにも逃げられない状態を指して使われます。
「蟻の這い入る隙もない」や「蟻の入る隙もない」と間違われることが多いので、注意が必要です。「入る」ではなく「出る」だと覚えておきましょう。
「逆鱗に触れる」は目上の人を激しく怒らせること
「逆鱗に触れる(げきりんにふれる)」は、君主や上司など、目上の人の機嫌を損ね、激しく怒られることをたとえたことわざです。「逆鱗」とは、竜の顎の下に逆さに生えている鱗のことで、逆鱗に触れると竜が怒り、触った者を殺してしまうという伝説があります。
出典は『韓非子(かんぴし)』の説難(ぜいなん)。君主を説得することの難しさを、竜を乗りこなすことにたとえて説明した一説に由来しています。
「逆鱗に触れる」のよくある間違いは、「琴線に触れる」としてしまうケース。「琴線に触れる」は、心の奥の感じやすい心情を刺激し、感動、共鳴させることという意味の言葉です。怒らせてしまうのは「逆鱗」の方ですので、注意しましょう。
以下の記事では「逆鱗に触れる」について詳しい解説をしていますので、あわせて参考にしてみてください。
■「逆鱗」の意味とは?「逆鱗に触れる」の使い方や類語・英語も
「衣の袖から鎧が見える」は上辺を取り繕っても本音が見えること
「衣の袖から鎧が見える(ころものそでからよろいがみえる)」は、うわべを取り繕って穏やかな態度をとっていても、本音がちらついて見えることを指すことわざです。「衣の下から鎧がちらつく」とも言います。
出典は『平家物語』の巻二・教訓で、僧侶の衣の袖口から、下に着けている鎧が覗いて見えたということに由来しています。
このことわざを間違えて「鎧の袖から衣が見える」としてしまうと、だらしない人(鎧の中に衣をしまえていない)や、寒がりな人(鎧の下に衣がはみ出てしまうほど重ね着)になってしまうので、言い間違わないようにしましょう。
有名でかっこいい、面白いことわざ(由来つき)
「百聞は一見に如かず」は何度聞くより見た方が勝ること
「百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)」は、何度も聞いたことよりも、一度自分の目で実際に見た方が勝るという意味の有名なことわざです。
語源は『漢書(かんじょ)』の「趙充国伝(ちょうじゅうこくでん)」の一節「百聞不如一見、兵難隃度(百聞は一見に如かず、兵隃かに度り難し)」。戦の前線ははるか遠くにあって様子がよくわからないため、伝聞で様子を知るよりも直接見たほうがよいという意味の文です。
”他人の話を聞いてわかった気になるのではなく、自分の目で見て体験してみることが大切だ”と、誰かの背中を押してあげたい時や、前向きな一歩を踏み出したい時に使えることわざです。
以下の記事では「百聞は一見に如かず」について詳しい解説をしていますので、あわせて参考にしてみてください。
■「百聞は一見にしかず」の意味と続きとは?由来の漢文や類語も紹介
「待てば海路の日和あり」はじっくりと好機を待てという例え
「待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)」は、時化(しけ)が続いている時でも、待っていれば必ず航海に適した海の静かな日がやってくる、という意味の言葉です。思うようにいかない時も、焦らずじっくり待っていればそのうちチャンスがやってくる、ということを例えています。
中国の伝説に、王が思いやりのある政治をすると天が降らせるという甘い雨「甘露(かんろ)」という言葉があり、この言葉を使ったことわざ「待てば甘露の日和あり」が言い換えられたことが語源とされています。色々なことがうまくいかない時、耐え忍ぶ支えになってくれる言葉です。
以下の記事では「待てば海路の日和あり」について詳しい解説をしていますので、あわせて参考にしてみてください。
■「待てば海路の日和あり」の意味とは?似たことわざや対義語も紹介
「禍を転じて福と為す」は悪い出来事も幸運に繋げられること
「禍を転じて福と為す(わざわいをてんじてふくとなす)」は、身に降りかかる禍も、うまく利用すれば幸運に繋げられる、という意味のことわざです。「災いを転じて福と為す」とも表記し、不幸なことが一転し、幸運に転じる様子を指します。
出典は、中国の前漢時代に書かれた『戦国策(せんごくさく)』の燕策(えんさく)と、同じく前漢時代の司馬遷(しばせん)の歴史書『史記』の蘇秦列伝(そうさいれつでん)です。
以下の記事では「禍を転じて福と為す」について詳しい解説をしていますので、あわせて参考にしてみてください。
■「災い転じて福となす」の意味とは?由来の四字熟語や類語も解説
英語で面白い、素晴らしいことわざ(日本語言い換え付き)
「A closed mouth catches no flies.」:口は禍の元
「A closed mouth catches no flies.」は、閉じた口にハエは入らない、という意味です。口を閉じているということはつまり、沈黙を守るということ。沈黙を守っていれば、災いは降りかからないということを意味します。
余計な一言や不用意な発言は災難を招くことが多いため、うかつに口を開くべきでないという日本のことわざ「口は災いの元」と同じ意味を持っています。
「You can’t judge a book by its cover.」:人は見かけによらぬもの
「You can’t judge a book by its cover.」は、本の価値は表紙では判断できない、という意味の言葉です。日本語のことわざ「人は見かけによらぬもの」とよく似たことわざです。
人が外見からではどんな人物なのか判断できないように、本の価値も表紙からではわかりません。「You can’t judge a book by its cover.」は物や人、場所に対しても使える定番の言い回しなので、覚えておくと便利です。
「Anger can be an expensive luxury.」:短気は損気
「Anger can be an expensive luxury.」は、怒りは高い贅沢品になることがある、という意味のことわざです。怒りの感情にまかせて発言をしたり行動をしたりすると、取り返しがつかないことになってしまう場合があります。つまり、怒りに支配された行動の代償は大きい、という意味です。
短気を起こすと自分が損をする、という意味の日本のことわざ「短気は損気」とよく似た表現。せっかく積み上げてきた信頼関係を短気を起こして失ってしまうことは大きな損失、つまり「高い贅沢品」だ、とする面白い表現です。
まとめ
さまざまなシーンで役立つ面白いことわざをご紹介しました。有名でかっこいいことわざや、動物がでてくることわざは、会話の中で使うとより興味を持って話を聞いてもらえることも。「あ、これはあのことわざが使えるシーン!」という場面で、是非使ってみてください。