「唐紅(からくれない)」とは濃く鮮やかな赤色を意味します。紅葉を表す色として使われますが、季節を表す季語ではないと知っていますか?
この記事では「唐紅」の読み方やカラーコード、由来を解説します。くわえて、似た色をもつ「マゼンタ」との違いや英語表現も紹介しましょう。
「唐紅」の意味とは?
「唐紅」の意味は「濃く鮮やかな紅色」
「唐紅(からくれない)」は「濃く鮮やかな紅色」を意味します。一般的な赤色に似ており、鮮やかな色味をもっています。古くから日本で親しまれている「伝統色」であり、平安時代から一部の上流階級で親しまれていました。
「唐紅」の読み方は「からくれない」
「唐紅」の読み方は「からくれない」です。「とうべに」と読むこともありますが、一般的には「からくれない」と読みます。
「唐紅」のカラーコードは「#D71345」
「唐紅」のカラーコードは「#D71345」です。カラーコードとは色を表す符号のことで、シャープと6桁の16進数で色を表します。たとえば、唐紅の類似色である「紅(くれない)」は「#D7003A」と、「アマリリス」は「#DD2034」と表します。
「唐紅」の由来とは?
「唐紅」の由来は原料となる「花」
「唐紅」という名前の由来は、原料として使われる「花」です。唐紅の鮮やかで濃い赤色を出すには、エジプト原産の「紅花(べにばな)」という花が使われます。外国から日本に入ってきた製法のため、外から渡来した意味をもつ「唐」をあて、「唐紅」になったとされています。
今では「唐紅」という名が定着していますが、奈良時代には「紅の八塩(くれないのやしお)」とも呼ばれていました。「八塩」の「八」は数が多いこと、「塩」は染め汁に何度も浸すという意味です。鮮やかな唐紅色にするには何度も浸す必要があることに由来しています。
「唐紅」は「韓紅」「唐紅花」と表記することも
「唐紅」は「韓紅」や「唐紅花」「韓紅花」と表記することもあります。読み方はすべて「からくれない」です。「唐紅」の由来と同じく「韓」も海外からやってきたことを意味し、「紅花」が原料として使われることから「唐紅花」や「韓紅花」と表記されるようになりました。
「唐紅」の使い方とは?
「唐紅」は季節を表す季語ではない
「唐紅」は季節を表す季語ではありません。唐紅が使われた俳句や連歌を見ることもありますが、必ず季語とセットで使われています。
「萌黄」「蘇芳」とあわせて十二単に使う
「唐紅」は「萌黄(もえぎ)」や「蘇芳(すおう)」とともに、十二単(じゅうにひとえ)に使われる色味です。原料となる紅花は貴重であったことから、「唐紅」は限られた貴族のみが身につけられる「禁色(きんじき)」という色に定められていました。
「唐紅の天道」とは「太陽」のこと
「唐紅の天道(からくれないのてんとう)」とは「太陽」という意味です。夏目漱石の小説『夢十夜(ゆめじゅうや)』に出てくる表現で、「天道」は太陽のことを指しています。濃く鮮やかに輝く太陽の色を「唐紅」で表現しているのです。
「唐紅に水くくるとは」は百人一首の1つ
「唐紅」は百人一首にも登場する色名です。平安時代の貴族「在原業平(ありわらのなりひら)」が詠んだ句には、竜田川に落ちたモミジが水面を赤く染めている様子を「唐紅に水くくるとは」と表現しています。
「唐紅」は紅葉の様子を表すこともある
「唐紅」は紅葉の様子を表す色でもあります。紅葉により色変わりしたモミジの葉は、まさに「唐紅」のような鮮やかな濃い赤であることから使われるようになりました。「唐紅に染まる」や「唐紅のモミジ」のように使われますが、秋などの特定の季節を指す季語ではないため注意しましょう。
「唐紅」と「マゼンタ」の違いと英語表現
「唐紅」は「マゼンタ」よりも赤みが強い
「唐紅」と「マゼンタ」の違いは赤みの強さです。「マゼンタ」は紫色を帯びた赤色のことで、赤よりも濃いピンクのような色味をもちます。一方で「唐紅」は濃い赤色のことで、「マゼンタ」よりも赤みが強い色となっています。
「唐紅」は英語で「Crimson」
「唐紅」の英語表現は「Crimson(クリムゾン)」です。「濃く鮮やかな赤色」を指す単語で、赤い色素の原料となる虫「carmesinus」が語源となっています。
- Crimson eyes were looking at me.
唐紅の瞳がこちらを見ていた。
- The sky turns crimson.
空が唐紅に染まる。
まとめ
「唐紅(からくれない)」とは濃く鮮やかな紅色を意味する単語です。十二単にも使われている伝統的な色味で、地位のある人しか使ってはいけない「禁色」にも定められていました。似た色に「マゼンタ」があるものの、赤みの強さが異なるため見分けましょう。
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