「芒種」とは二十四節気のひとつで、毎年6月6日から21日ごろがその日にあたります。例年この時期は梅雨入りを迎える地域もあり、雨が増える頃です。この記事では「芒種」の意味やどのような日なのかを詳しく紹介します。また「芒種」の時期に行われる行事や旬の食べ物、見ごろを迎える植物についても紹介します。
「芒種」とは?
「芒種」は二十四節気の第9節目
「芒種」は「ぼうしゅ」と読み、二十四節気の第9節目にあたります。二十四節気とは古代の中国で考案されたもので、1年を24に等分し、それぞれの季節をあらわす言葉がつけられたものです。「芒種」を迎える季節は四季のうちの夏にあたります。
夏の二十四節気は「立夏(りっか)」から始まり、「「小満(しょうまん)」を経て「芒種」を迎えます。「芒種」の後は「夏至(げし)」、「小暑(しょうしょ)」、「大暑(たいしょ)」となり、大暑を過ぎるころには次第に秋の気配を感じられるようになります。
「芒種」は稲や麦など穀物の種を蒔く時期のこと
二十四節気の言葉はその時期の天候や植物・動物の様子をあらわしており、それぞれの季節の移ろいが巧みに表現されています。
「芒種」の”芒”の字はイネ科の植物の穂の先にある突起のことで、「のぎ」と読みます。このことから「芒種」とは稲や麦などの穀物の種を蒔く時期で、稲作と関わりの深い言葉です。
「芒種」の時期は毎年6月6日から21日ごろ
「芒種」の時期は、毎年6月6日から21日ごろです。毎年日付は固定されておらず、日は多少前後します。前後する理由は、二十四節気が太陽黄経(太陽が天球上を通る経路を等角に分割したもの)によって決まるためで、「芒種」は太陽黄経が75度になるときです。
例年この時期の日本は地域によっては梅雨入りを迎え、雨が増えます。湿度も高くなり蒸し暑さが増すため、体調管理や食料品の管理に注意が必要な時期です。
「芒種」に行われる行事は?
「芒種」は田植えの時期
「芒種」から次の節気「夏至」までの期間は穀物の種を蒔く時期にあたることから、水田の稲を植えたり麦を刈ったりといった穀物に関する農作業が行われます。
現在では農業の機械化や品種改良もあって田植えの時期が早まっていますが、昔の田植えは手作業で行われていたため大変な重労働であり一大行事でした。
また稲作は古くから生活に深く関わっていたことから、芒種には全国各地で今年の豊作を田んぼの神様にお祈りする祭りが行われています。有名なものでは大阪の住吉大社で行われる「御田植神事(おたうえしんじ)」や、京都の伏見稲荷大社での「御田舞(おんだまい)」などがあります。
「芒種」は「稽古始め」の時期
「芒種」は「稽古始め」にふさわしい時期です。古くから歌舞伎や能・狂言などの芸事の世界では、子どもが6歳の6月6日に稽古を始めると上手になるという伝承があります。これは、手の指を折って数えると6番目で小指が立つことから「小指が立つ=子が立つ」として縁起が良い日とされたそうです。
この伝承にちなみ、現在6月6日には「いけばな日」「楽器の日」「邦楽の日」など、習い事にまつわる記念日が制定されています。
「芒種」の時期に旬を迎える食べ物
「トマト」
「芒種」の時期に旬を迎える食べ物のひとつがトマトです。一年中スーパーの売り場で目にすることもあり、とくに夏野菜のイメージが強いトマトですが、旬は春から初夏。春から初夏のトマトは糖度が高く、味が濃いのが特徴です。
トマトには様々な栄養素が含まれており、ヨーロッパには「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるほどです。芒種の時期は湿度が高くなり気温の変化も激しいため、トマトを食卓に取り入れて体調管理に役立てるとよいでしょう。
「鱚(きす)」
「芒種」に旬を迎える魚は「鱚(きす)」です。鱚はスズキ目スズキ亜目キス科キス属に分類される海水魚で、スマートな形から”海の女王”とも呼ばれています。
キス科の魚は複数の種類があります。日本で一般的に出回っているのは白鱚(シロギス)ですが、青鱚(アオギス)や星鱚(ホシギス)など、限られた地域にのみ生息しているものも同じキス科の魚です。
鱚は脂質が少なくクセのない味わいが特徴で、刺身やフライ、天ぷらなど様々な料理法で食されています。
「芒種」の時期に見ごろを迎える植物
「紫陽花(あじさい)」
「芒種」の時期に見ごろを迎える植物は「紫陽花(あじさい)」です。紫陽花は日本固有の花で、雨がよく降るこの時期の風物詩ともいえるでしょう。
紫陽花は花の色が土壌の酸度によって変化する特徴を持ち、土壌が酸性の時は花が青く、アルカリ性の時は花が赤くなります。ちなみに白い紫陽花もありますが、こちらはもともと色素を持たない品種のため何色にも染まりません。
雨に濡れながら美しく花を咲かせる紫陽花は、古くから人々の心を癒してきました。芒種の時期には日本各地の公園や寺院に紫陽花が咲き誇り、多くの人が足を運ぶ姿が見られます。
「桔梗(ききょう)」
「桔梗(ききょう)」も「芒種」の時期に見ごろを迎える植物です。秋の七草のひとつとして知られていますが、花が見ごろを迎えるのは6月から7月で、ちょうど「芒種」の時期にあたります。
桔梗は日本に古くからある植物で、星の形をした鮮やかな花を咲かせる多年草です。花の色は青色のほか紫やピンク、白などがあります。日本の気候に強く育てやすい品種であることから、ガーデニングでも人気の高い花です。
まとめ
「芒種」の時期は毎年6月6日から21日ごろです。この時期は稲や麦などの穀物の種を蒔くころとされ、全国各地で今年の豊作を田んぼの神様にお祈りする祭りが行われます。また、伝承により「稽古始め」にふさわしい時期ともされています。