「入梅」とは?意味や期間、「梅雨」との違いや過ごし方の工夫も紹介

「入梅」とは二十四節気以外の「雑節」のひとつで、「暦の上で梅雨がはじまるとされている日」のことをさします。この記事では「入梅」とは実際にいつ頃で、どのような意味を持つ時期なのかをはじめ、「入梅」と「梅雨」との違いや過ごし方、この時期に食べるとよい物などについてもご紹介します。

「入梅」とはなに?意味や起源は?

「入梅」は「雑節」のひとつ

「入梅」は雑節(ざっせつ)のひとつで、「にゅうばい」と読みます。暦の上で季節をあらわす時に用いられている「二十四節気(にじゅうしせっき)」は、中国発祥のもので日本の季節とは若干のずれが生じます。そのため、日本の気候を的確につかみ農作業に役立てるべく作られたのが「雑節」です。

「入梅」の時期は6月11日ごろ

「入梅」は「太陽の黄経(太陽が天球上を通る経路を等分した座標)が80度に達した日」とされており、例年6月11日ごろです。「暦の上で梅雨がはじまるとされている日」のことをさします。この時期は雨の降る日が続くようになり、気温や湿度が上昇しはじめます。

昔の農家の人々にとって、梅雨入りを知っておくことはたいへん重要でした。ただ、当時は今のように天気予報が発達していなかったため、雑節を目安として季節の変化を知り、農作業の日や段取りを決めていました。

「入梅」の言葉の由来は2つある

「入梅」の言葉の由来には2つの説があります。

1つは、「梅の実が熟するころに降る雨」という意味がもとになっているという説。6月に入ると店頭に青梅が並びはじめるため、「梅」の字が使われるようになったというものです。

もう1つは、この時期は湿気が多くカビの生えやすい時期ということから「黴雨(ばいう)」と表現されていたものが置き換わったという説です。”黴”はカビを意味する単語ですが、これでは表現的にイメージがよくないということで同じ「ばい」と読める「梅」が使われるようになりました。

「入梅」と「梅雨」との違いは?

「梅雨」は実際の天気と深く関わりがある

「入梅」は「暦の上で梅雨がはじまるとされている日」ですが、それでは「梅雨」と「入梅」にはどのような違いがあるのでしょうか。

「梅雨」は「梅雨入り」という言葉でよく耳にしますが、これは気象庁が発表するものです。晴れが続いたあと、雨や曇りの日がしばらく続くと予想されるとき「梅雨入りしたとみられる」と発表されます。梅雨入りは実際の天気に基づいて発表されるため、地域によって時期が異なります。

いっぽう「入梅」は暦の上で”梅雨がはじまる”とされる時期に使われる言葉です。前述したように「太陽の黄経(太陽が天球上を通る経路を等分した座標)が80度に達した日」と定義され、例年6月11日ごろと時期がほぼ固定されています。そのため、地域によってはまだ梅雨入りのように雨が長く続かないところもあり、天気とは関係なく定義されているものです。

「入梅」はひとつの目安としてとらえるとよい

「入梅」は実際の天気と関係なく定義されていることから、現代ではあまり意味のない言葉のようにも思えます。しかし東日本においては「入梅」の時期と実際の梅雨入りに、あまり差がありません。そのため、ひとつの目安として「入梅」の時期を意識するとよいでしょう。

「入梅」の期間の過ごし方は?

「入梅」の時期は体調管理に注意

「入梅」の時期になると、体のだるさや疲れを感じたり頭痛や関節痛を訴えたりする人が増えます。この時期に体調を崩す最大の原因は”気圧の変化”と”温度・湿度の変化”によるものです。

  • 気圧の変化

「入梅」の時期は気圧が下がります。気圧が下がると体の内圧が上がるため、体が膨張したような感覚に陥ります。腰の椎間板や膝、足首などの関節、また頭蓋骨といった部位は中身が空洞状になっているのでその影響を受けやすく、そのため腰の痛みや膝、足首の関節痛、頭痛といった症状があらわれることがあります。

  • 温度・湿度の変化

「入梅」のころは湿度が高くなることを多くの人が体感する時期です。人間が快適と感じる湿度は冬の場合で40~50%、夏でも50~60%ぐらいといわれていますが、「入梅」の時期の湿度は80%以上になります。そのため体に負担がかかり、自律神経が乱れやすくなることから体のだるさや食欲不振といった症状があらわれることがあります。

また、「入梅」の時期は温度が高く蒸し暑い日もあれば寒い日もあり、急激な気温の変化も自律神経が乱れる一因となります。

気圧の変化や温度・湿度の変化は時期的に避けられないため、十分な睡眠や休息をとって体調管理を心がけたいものです。

「入梅」の時期は食中毒対策を万全に

「入梅」の時期は湿度や気温が高くなり食中毒を引き起こす細菌が生きやすい環境になることから、細菌性食中毒の発生が増加します。

細菌性食中毒とは、O-157やカンピロバクター、サルモネラといった細菌を原因とする胃腸炎の一種です。おもな症状は吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などがあげられますが、乳幼児や高齢者が罹患すると重症化することがあります。

食中毒を予防するポイントは”つけない”、”増やさない”、”やっつける”を実践していくことです(政府広報オンライン「食中毒予防を防ぐ3つの原則と6つのポイント」より)。調理の前後には丁寧に手を洗うこと、食中毒の原因菌を増やさないために食品を低温で保存すること、原因菌の多くは加熱処理すれば死滅するためきちんと火を通すことなどを実践しましょう。

「入梅」の時期は湿気対策を念入りに

「入梅」の時期は湿度が高くなるため室内の湿気がこもり、それに伴う「カビ」の繁殖が心配されます。特に靴箱やクローゼット内は湿気がたまりやすいため、こまめに掃除を心がけるとともに換気を定期的に行うようにしましょう。

また、雨が続くことから洗濯物を室内で干すことも多く、洗濯物の部屋干しに伴う臭いが気になることも。部屋干しをするときはなるべく服同士の間隔をあけて干したり、扇風機やサーキュレーターを活用したりして衣服が早く乾くようにするとよいでしょう。

「入梅」の期間に食べるとよいものは?

「いわし」

「入梅」の時期におすすめの食材は「いわし」です。日本で「いわし」と言われているものはマイワシ・カタクチイワシ・ウルメイワシの3種類ですが、特にこの時期に水揚げされるマイワシは「入梅いわし」とよばれています。「入梅いわし」は1年のうちで最も脂が乗っていて美味しいといわれており、刺身や塩焼き・煮つけなど様々な調理方法で楽しむことができます。

「梅」

「入梅」の時期は古くから”梅の時期”とされてきました。この時期に、青梅の収穫が最盛期を迎えます。青梅はこの時期にしか出回らないもので、梅酒や梅シロップづくりに使われます。また梅干しには少し熟しかけたものが適していることより、昔から「梅酒は梅雨入り前、梅干しは梅雨入り後」といわれてきました。

このように梅干しや梅酒・梅シロップなどを作ることを「梅仕事」とよび、今でもこの時期の風物詩として親しまれています。

まとめ

「入梅」は雑節(ざっせつ)のひとつで「にゅうばい」と読み、例年6月11日ごろです。「暦の上で梅雨がはじまるとされている日」のことをさし、この時期は雨の降る日が続くようになります。気温や湿度が上昇しはじめることから体調を崩しがちな人も多くなるため、十分な睡眠や休息をとって体調管理を心がけたいものです。