「秋分」とは?「秋分の日」と「春分の日」の違いや過ごし方も紹介

「秋分」は二十四節気の第16節目にあたりますが、実際にはいつ頃をさすのでしょうか。この記事では「秋分」の意味や過ごし方、この時期にぜひ味わいたい旬の食べ物や見ごろを迎える植物について紹介します。また「秋分の日」と「春分の日」の違いについても触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。

「秋分」とはいつ?

「秋分」は二十四節気の1つ

「秋分」は「二十四節気(にじゅうしせっき)」の第16節目にあたり「しゅうぶん」と読みます。太陽が秋分点(地球の赤道を天まで延長した「天の赤道」と黄道が交差する地点)に到達した日によって定められ、日付は毎年変動しますが、例年9月23日ごろから10月7日ごろです。

二十四節気とは中国から伝わった手法で、1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれの季節を6つずつに等分したものです。それぞれの節気には季節をあらわす名称がつけられており、昔の人はこの二十四節気を参考にして農作業を行い、日常生活を過ごしていました。

「秋分」の時期になると空の雲が少しずつ少なくなり、秋らしい気候に。朝晩の気温差も大きくなるため、体調管理には注意が必要です。

「秋分」は昼と夜の長さがほぼ同じになる

「秋分」の時期は太陽が真東からのぼり真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ等しくなります。その時期は前述したように9月23日ごろです。ちなみに「秋分」と同様、二十四節気の一つである「春分」も昼と夜の長さがほぼ同じになります。「春分」の時期は3月20日から4月3日ごろです。

仏教の浄土思想では、西の遠くに”極楽浄土”があるとされています。そのため太陽が真西に沈む「春分」と「秋分」の時期が、極楽浄土に最も近づく日だと考えられていました。これを「お彼岸」と呼び、「秋の彼岸」は秋分の日を中日としてその前後3日間を加えた7日間とされています。

「秋分の日」とは?

「秋分の日」は”特殊な祝日”

「秋分の日」は「国民の祝日に関する法律」によって制定された国民の祝日のひとつです。ただ、その日付は毎年変動するため、世界的にも珍しい”特殊な祝日”といわれています。日付が変動するのは、前述したように太陽が秋分点を通過する日が例年変わるから。これは太陽のまわりを回る「公転」にかかる日数が365日ちょうどで回るわけではないからです。このずれによって毎年「秋分日」が変わるため、「秋分の日」も変動します。

「秋分の日」は戦前「秋季皇霊祭」とよばれていた

国民の祝日としてなじみ深い「秋分の日」ですが、戦前は「秋分の日」のことを「秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい)」と呼んでいました。”皇霊祭”とは歴代の天皇や皇族の霊をまつる儀式のことで、この日に宮中の天皇霊殿で”秋季皇霊祭の儀”が執り行われます。

秋季皇霊祭は1871年(明治11年)から1947年(昭和22年)まで行われてきましたが、その翌年に「国民の祝日に関する法律」によって「秋分の日」に制定されました。

「秋分の日」と「春分の日」との違いは?

「秋分の日」は祖先を敬う意味合いが強い

「秋分の日」は前述したように「国民の祝日に関する法律」によって祝日と制定されましたが、その趣旨は「祖先を敬い、亡くなった人々を偲ぶ日」と定められています。そのため、「秋分の日」の前後には祖先を敬ってお墓や納骨堂へお参りに行ったり、仏壇に手を合わせたりすることが風習となっています。お墓参りの後に親族で会食を行う方も多いでしょう。

「春分の日」は春の訪れを祝う意味合いが強い

「春分の日」も、「国民の祝日に関する法律」で祝日と制定されています。また、制定された背景には「秋分の日」と同様の皇室行事”春季皇霊祭”がありました。春季皇霊祭は1879年(明治12年)から1948年(昭和23年)まで行われ、その後祝日に制定されたものです。ただし、制定の際の趣旨が「自然をたたえ、生物をいつくしむ」とされており、「秋分の日」とは異なっています。

このため、「春分の日」は春の訪れを祝い、生物の繁栄を願う意味が強い日であるのに対し、「秋分の日」は祖先を敬う意味合いを強く持っているといえます。

「秋分」の時期に味わいたい食べ物は?

「おはぎ」

「秋分」には「おはぎ」を供え、食べる風習があります。おはぎとは、モチ米やうるち米でついた餅を小豆の餡で包んだ和菓子のことです。餅には五穀豊穣の感謝の気持ちが込められ、また小豆の赤色には古来より魔除けの力があるとされることから、お祝いや儀式で欠かせない食材として用いられてきました。

ちなみに「おはぎ」と同様の和菓子に「ぼたもち」がありますが、これらは材料も作り方もほぼ同じです。違いは「おはぎ」が粒あんを使うのに対して、「ぼたもち」はこしあんを使うということ。また、「おはぎ」は俵型に成形しますが「ぼたもち」は丸く成形するのが一般的です。

「銀杏(ぎんなん)」

「秋分」の時期に旬を迎える食べ物は「銀杏(ぎんなん)」です。銀杏として食べられているのはイチョウの木の実の中にある胚乳種の部分で、木の実は黄色くさくらんぼのような形状をしています。イチョウの木には雄の木と雌の木がありますが、実がなるのは雌の木だけです。

銀杏は9月ごろから11月半ばごろまでが収穫期になり、茹でる・揚げる・炒る等様々な調理方法で楽しめます。

「里芋(さといも)」

「里芋(さといも)」も「秋分」の時期に旬を迎える食べ物です。里芋は稲作よりも前の縄文時代に伝わったとされており、古い歴史のある野菜です。里芋は親芋を囲むようにして子芋、孫芋ができることから、子孫繁栄の象徴として祝い事の料理にも用いられます。

里芋は芋類の中でもカロリーが低くヘルシーで、主成分はデンプンとタンパク質です。栄養分は特にカリウムが多く、カリウムは高血圧の改善に役立つとされています。またビタミンB1・B2も豊富に含まれています。

里芋には独特の”ぬめり”がありますが、このぬめりは水溶性食物繊維の「ムチン」と「ガラクタン」によるもの。「ムチン」は胃の粘膜を保護する働きが、「ガラクタン」には腸の働きを活発にする効果があるとされています。

「秋分」の時期に咲く植物は?

「彼岸花(ヒガンバナ)」

「秋分」の時期に咲く代表な植物は「彼岸花(ヒガンバナ)」です。秋分の時期に見ごろを迎えることから「彼岸花」の名前がつきましたが、別名を「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」ともよび、この言葉はサンスクリット語で”天界に咲く花”を意味します。

彼岸花はおもに田んぼや畑の畔、土手などに繁殖し、鮮やかな色の花を咲かせます。日本で多く見られる色は赤色ですが、白色や黄色の花も存在します。色鮮やかに花が咲く様子は見るものを楽しませてくれますが、実は彼岸花には花・茎・葉・球根の全ての部分に毒がある植物。特に球根には強い毒が含まれているので、誤って食べることのないように気をつけなければならない植物です。

「金木犀(キンモクセイ)」

「金木犀(キンモクセイ)」は秋の訪れを知らせる花として人気が高く、公園や学校、生け垣などで見かけることも多い植物です。見ごろとなる秋分の時期には甘く優しい香りがただよい、春のジンチョウゲ、夏のクチナシと並ぶ「三大香木(さんだいこうぼく)」のひとつとされています。花の色はオレンジ色で、ひとつの枝に小さな花が数多くつき、太陽の光を受けると金色に輝いて見えることから「金木犀」と名前がつきました。

まとめ

「秋分」は「二十四節気(にじゅうしせっき)」の第16節目にあたり、時期は例年9月23日ごろから10月7日ごろです。この時期の中日は昼と夜の長さがほぼ同じになり、夏の終わりと秋の訪れを感じられる頃でもあります。また「秋分」は彼岸にあたり、季節の花や食べものをお供えし、お墓参りや親族での会食なども行われる時期です。朝晩の気温差が大きくなり体調を崩しやすい時期でもあるため、旬のものを食べて体調管理を心がけるようにしましょう。