「重複」の読み方は「ちょうふく」「じゅうふく」どちらが正しい?

重複は「ちょうふく」「じゅうふく」のどちらの読み方が正しいのでしょうか?ビジネスの現場では両方とも使われていますが、実際には片方は慣用読みとして認知されているだけで、本当は誤りです。この記事では、「ちょうふく」と「じゅうふく」のどちらが正しいのかについてのほか、意味や違いなどについて解説しています。

「ちょうふく」「じゅうふく」はどちらが正しい?

「重複」の正しい読み方は「ちょうふく」

「重複」の正しい読み方は、「ちょうふく」です。一般的には「ちょうふく」と「じゅうふく」両方の読み方が通用していますが、正しい読み方を覚えておきましょう。

「じゅうふく」は慣用読みとして通用してはいますが、元々誤読だったものが浸透していったもので、正しい読み方ではありません。

慣用読みの事例としては、早急(そうきゅう)・捏造(ねつぞう)・独壇場(どくだんじょう)などがあり、それぞれの正しい読み方はさっきゅう・でつぞう・どくせんじょうです。これらはむしろ、正しい読み方より慣用読みのほうがよく使われている言葉です。

「じゅうふく」が認知された理由

慣用読みとは、誤った読み方が広く使われるようになったために、徐々に認められていったものです。

重複が「じゅうふく」と誤った読み方をされた理由は、「重」という漢字は「ちょう」と読まれることより「じゅう」と読まれることの方が多いためです。

「じゅう」と読む熟語は「体重」「重圧」「重厚」のほか、たくさんあります。一方、「ちょう」と読む熟語は「重宝」「貴重」「慎重」などで少数しかありません。

そのため、「ちょうふく」より「じゅうふく」という読み方の方が受け入れられやすく、誤りであるにもかかわらず広く認知されていったのです。

「重複」の意味とは?

「重複」の意味は「同じものが重なること」

「重複」の意味は、同じ物や事が2度以上重なることです。熟語を構成している「重」には「重い」という意味のほかに「重なる」という意味があります。

もう一方の「複」は「複数」「複眼」という熟語にも表されているように、ふたつ以上のものという意味を持っています、ふたつが合わさってできた「重複」は、複数の同じものが重なるということを指す熟語です。

「重」という漢字は読み方で意味が変わる

「重複」の「重」という漢字には「重い」という意味と「重なる」という意味がありますが、これらの違いは読み方にも表れているのです。

「重(じゅう)」と読むときは「重い」の意味

「重」を「じゅう」と読んだときには、重量が大きいことを指す「重い」という意味になることが多く見られます。熟語を例に説明すると、「体重」は体の重さ、「重圧」は押さえつける大きな力という意味になり、どちらも重量の重さを含んだ言葉です。

「重(ちょう)」と読むときは「重なる」「大切にする」「はばかる」

一方「ちょう」と読んだときには、「重なる」以外にも「大切にする」「はばかる」という意味になることがあります。熟語の例としては「重複」のほか、価値が高く大切なものという意味の「貴重」、慎みはばかるという意味の「慎重」などです。

「重複」の使い方・例文

「重複」は動詞として使うことが多い

「重複」は「重複する」というように動詞として使うことが多く見られます。以下に示すのは「重複」の使い方を示す例文です。

  • エクセルで重複データを取り除く数式を使うと、とても便利だ。
  • 名簿に名前が重複していることに気付かず、DMを2通送ってしまった。
  • この文書は以前のものと重複している部分が多いため、書き直してほしい。
  • 「後で後悔する」という表現は、後でという意味が重複しているので誤りだ。
  • 当店と競合大型店とは商圏が重複しているので、差別化しなければ負けてしまう。

「重複+名詞」を使った例文

「重複」のあとに名詞を続けて、そのものが重なっていることを表す使い方もあります。「重複表現」「重複投薬」「重複順列」などが例として挙げられるので、それぞれの例文を紹介します。

  • 「車を駐車する」という言い方は重複表現となっている。
  • お薬手帳は重複投薬を防ぐための有効なアイテムだ。
  • 数学の重複順列は、普通の順列計算より面倒に思える。

重複表現を必ずしも否定しないNHK

テレビやラジオの放送中に、アナウンサーが重複表現をしているケースがあります。たとえば「今 現在」や「歌を歌う」などは重複表現にあたります。これらの重複表現に対し、NHKは必ずしも全て否定するものではないという見解を示しています。

重複表現が好ましいものではないことを認めつつも、一般に広く使用されていて、視聴者にとってわかりやすく、耳障りにならないものであれば誤りとはしないということです。

まとめ

重複について、「ちょうふく」「じゅうふく」のどちらが正しい読み方なのかを説明し、意味や違いのほか使い方なども解説しました。重複を「じゅうふく」と読むような、通用しているが正解ではないというものの扱い方は難しいものです。

無理に正解を押し通すのではなく、その集団で慣用的に使われている読み方を尊重しておけば無難でしょう。言い回しに気を遣うよりは、仕事内容や作成書類に重複がないようにすることのほうが、むしろ大切です。