「超える」と「越える」は同じ読み方のうえ「超越」という熟語もあり、どちらも似たような意味をもつ言葉です。
しかし似てはいますが「超える」と「越える」には使い分けが必要で、それぞれの違いを知らなければ正しく使うことはできません。この記事は、「超える」と「越える」の違いと使い分けについて役立つ内容です。
「超える」と「越える」の意味の違いとは?
「超える」と「越える」の違いは漢字の意味による
「超える」と「越える」の違いは、ある一定数を上回ることか、ある地点を通過するかどうかです。「超える」と「越える」はどちらも「こえる」と読み、ともにある一定の枠をこえるという意味合いがあります。
しかし、「最高気温をこえる」「国境をこえる」では「超える」と「越える」を使い分けて、「最高気温を超える」「国境を越える」としなければなりません。この違いの基準は、漢字そのものが持っている意味によるものです。
「超える」の「超」は上回ること
「超える」の意味は、ものごとの程度がずば抜けていることです。「超」には、「超人」や「超絶」という熟語があります。また定員超過という熟語の使い方からも分かるように、一定数を上回ることをいいたいときに「超える」を使います。
なお、ある数字を「超える」と言い表すときには、その数字より数が多いことを意味していて、「10を超える」の場合では10を含みません。
「越える」の「越」は通り過ぎること
「越える」の意味は、ある地点や境界を通過することです。「越」を使った熟語には「越境」や「越権」があります。また「卓越」や「優越」という熟語から分かるように、「越」には抜きん出て優れていることという意味もあります。
「乗り越える」「踏み越える」というように、ある場所や立ち位置を追い抜いたり通り過ぎたりすることを表すものが「越える」です。
「超える」「越える」の使い分けは英語で理解
「超える」と「越える」の意味は似ていて理解しづらい面がありますが、英語に直してみると分かりやすくなります。
「超える」は英語で「super」「very」
アメリカのコミックや映画に登場するスーパーマンは、直訳すると「超人」となります。ジェット機より速く飛行したり核爆発にも耐えられたりする超能力を持っているスーパーマンは、人間の能力をはるかに超えるヒーローです。
また「very」も「超える」という意味を理解しやすい英語です。「very good」で「good」のさらに上をいく、程度のはなはだしさ表しています。
「越える」は英語で「over」「pass」
バレーボールやテニス、バドミントンでオーバーネットというものがあります。ネットを越して相手方のボールやシャトルに触れると反則になるもので、「越える」を「over」ととらえるとイメージしやすくなります。
また「pass the peak.」は日本語に直すと「峠を越える」という意味になるものです。ある場所を越して通り過ぎていくイメージが、「越える」にある意味合いの理解を助けてくれます。
(補足)「超える」は数字で表すものによく使う
「超える」と「越える」の使い分けに際し、理解を助けるためのポイントとして、「超える」は数字で表すものによく使われるということがあります。
体重や時間のほか気温や年齢などのような、数値など数字で表されるものに対しては「越える」ではなく、以下に示すように「超える」がよく使われるのです。
- 標準体重を超える
- 制限時間を超える
- 最高気温を超える
- 100歳を超える
なお「超える」の使い方の参考になるものとして、接頭辞として「超」+名詞で語句を作ることができることが挙げられます。たとえば「超音波」「超法規的」などは、「超」と「越」のニュアンスの違いが分かる語句です。
また、「超える」をもっとわかりやすい口語で言い替えると「すごい」となります。難しく考えて混乱してしまったときに、思い出していただけると役に立ちます。
「超える」と「越える」を使った例文とは?
「超える」を使った例文
「超える」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- この絵画の入札価格は、予想をはるかに超える高値となった。
- 腹囲が90cmを超えると、メタボリックシンドロームの仲間入りだ。
- TOEICで700点を超えなければ、昇進は見送られてしまう。
- 初代の実績を超えるために、二代目はかなり無理をしているようだ。
「越える」を使った例文
「越える」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 日付変更線を東から西へ越えたので、日付が1日進んだ。
- あの河を越えると隣国へ亡命できるが、見張りが多くて無理だろう。
- 役職の権限を越える判断を下すことには、大きな問題がある。
- 祖父は今夜の峠を越えられたら、持ち直すことができる見通しだ。
まとめ
「超える」と「越える」の違いと使い分けについて解説しました。「超える」は凌駕する、「越える」は通過するイメージで理解したり、数量を示すものには「超える」を使ったりすれば、使い分けに迷うことは少なくなります。
それでも自信がないときには、「超過」と置き換えてみて違和感があれば「越える」を使えばよいでしょう。記事を参考にされ、「超える」と「越える」の違いを超越していただければ幸いです。