「嫌気がさす」場面は仕事でも日常でもよくあるようで、耳にすることが多い慣用句です。ネガティブなイメージが強い言葉で、こちらのテンションまで下がるように感じられます。この記事では「嫌気がさす」の意味と、似ている言葉である「嫌気がする」について解説し、慣用句の類語や使い方も例文つきで紹介もしています。
「嫌気がさす」の意味とは?
「嫌気がさす」の意味は”いやになること”
「嫌気がさす」の意味は、”いやになること”です。「いやけがさす」と読み、”嫌気が差す”とも書く慣用句です。「嫌気」とは読んで字のごとく嫌な気持ちのことですが、「いやき」と呼んだ場合には株などの相場が思わしくない状態を指すようになります。
「差す」とはある種類の気持ちや気分が生じることを表しており、「嫌気がさす」で気が進まないことや、物事や人物のほか状況などに対して嫌悪感と持つことを指しています。
なお「嫌気がさす」は、自分自身に対して使うこともできる応用範囲の広い言葉ですが、周囲にネガティブな印象を与えるため、使う相手やシーンに気を配る必要があります。
「嫌気がする」は”嫌気がさす”の誤用
「嫌気がさす」を「嫌な気持ちがする」「寒気がする」などと混同して、「嫌気がする」というような使われ方をする場合が多いようですが、これは誤用です。
「差す」は「魔が差す」や「眠気が差す」と同じように、ばくぜんとしているがどうにも御しがたい状態に陥っていることを指しています。これを「する」にした場合は言葉のニュアンスが異なってくるため、「嫌気がする」は誤用になるのです。
「嫌気がさす」の類語とは?
「嫌気がさす」の類語①辟易(へきえき)する
「嫌気がさす」は積極的に嫌悪するという状態ではなく、迷惑に思うような状態や、やる気がなくなったり気が進まなくなったりするなど消極的で逃避的な感覚を表した慣用句です。同じような意味合いを持つ言葉としては、「辟易(へきえき)する」があります。
「辟」という文字には「避ける・除く」、「易」には「変える・改める」という意味があり、合わせると「避けて変える」「取り除いて改める」といった意味合いになります。なお、「辟易」は相手に圧されてたじろぐという意味も持つ言葉です。
「嫌気がさす」の類語②うんざりする
一度や二度嫌なことが起きたくらいで「嫌気がさす」というような感情を抱くまでには至りませんが、度重なると「もうたくさんだ」「いい加減にしてほしい」という気持ちになるものです。
このような感情を表す言葉として「うんざりする」や「げんなりする」が挙げられ、「嫌気がさす」の類語として使うことができます。また、嫌なことばかりでなく同じことが続いて飽き飽きしたようなときにも「嫌気がさす」もので、このようなときにも「うんざりする」「げんなりする」という表現の使用が可能です。
「嫌気がさす」の使い方と例文とは?
使い方別に「嫌気がさす」の例文を紹介します。
「嫌気がさす」の逃避的な意味での使い方と例文
- どうやら英単語の暗記は覚えるより忘れるほうが早いようで、ぼちぼち嫌気がさしてきた。
- 目まぐるしい都会生活に嫌気がさしたので、しばらく南の島で過ごすことにした。
「嫌気がさす」の嫌悪的な意味での使い方と例文
- 信長のあまりに残虐な性格に嫌気が差して、光秀は謀反を企てたのかもしれない。
- グローバリズムに嫌気がさした反動か、欧米ではナショナリズムが台頭してきた。
- 能天気さと率直さと履き違えていたことに気付き、ほとほと自分に嫌気がさした。
「嫌気がさす」の飽きてしまった意味での使い方と例文
- 彼は女性にモテすぎてほとほと嫌気がさしているらしいが、贅沢な悩みだ。
- 最初は楽な仕事だと思ったが、毎日同じ作業の繰り返しにそろそろ嫌気がさしてきた。
「嫌気がさす」の英語表現とは?
「嫌気がさす」は英語で”to be tired of”など
「嫌気がさす」という表現は、英語では以下のようなものがあります。
- to be tired of:飽き飽きする
- to be sick of:気分が悪い
- to get fed up with:うんざりする
- to be disgusted:むかつく
いずれも「嫌気がさす」と同様の意味合いがある表現です。「疲れる」「病む」「気分が悪い」というネガティブな意味の単語が用いられていることから、「嫌気がさす」状態は欧米でも歓迎されないものであることが分かります。
まとめ
「嫌気がさす」という慣用句に対して、単に「嫌いだ」と言う以上にネガティブな印象を受ける理由は、積極的に問題へと立ち向かうというニュアンスが乏しいことにあります。「なんとなく飽きた」「好きになれない」「やりたくない」といった曖昧な理由で、その物事や人物などから離れたいといった逃避的なイメージが想起されるのです。
仕事において一時的に「嫌気がさす」ような状態になることは誰にでもあり、特別なことではありません。けれどもそれを表に出すと、周囲の人たちにも伝染してしまい大変迷惑です。もし何かに嫌気がさしてしまったときには人知れず上手に解消したいもので、それでこそ一人前の社会人といえます。