「多士済々」はよく耳にする言葉ですが、読み方は一通りではありません。また、意味についてもなんとなくほめ言葉のようなものととらえてはいるものの、漠然としているのではないでしょうか。この記事では、「多士済々」の読み方と意味をはじめ、由来や類語と反対語についても解説しています。
「多士済々」の意味や読み方とは?
「多士済々」の意味は”逸材が多数集まっていること”
「多士済々」の意味は、“逸材が多数集まっていること”です。人格に優れた立派な人物が数多く集まっていることを表した四字熟語です。「多士済済」や「済済多士」とも書きます。
「多士」とは多くの士(教養と徳のある人物)のことを、「済々」とは数が多いことや立派な様子を指す言葉です。「済々」は、同じ文字を重ねて物事の様子を示す「畳語(じょうご)」と呼ばれる表現法の一つで、「済」が持つ数が多く立派な様子という意味をありありと表現しています。
なお、「多士」と「済々」ともに単独で使うことは少なく、両方を合わせて「多士済々」という形で用いられることがほとんどです。
「多士済々」の読み方は”たしせいせい”
「多士済々」は、”たしせいせい”と”たしさいさい”の二通りに読むことができますが、正しい読み方は“たしせいせい”です。
ところが、パソコンで入力する際に「たしせいせい」「たしさいさい」のどちらを打ち込んでも正しく変換されることから、誤用である「たしさいさい」も広く一般に通用していることが分かります。
なおアナウンサーが「多士済々」を読み上げる場合には、正しい読み方である「たしせいせい」を使うことになっています。
「多士済々」の由来とは?
「多士済々」の由来は『詩経』
「多士済々」の由来は、中国最古の詩集である『詩経(しきょう)』です。『詩経』は五経(『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』)のなかのひとつで儒教の経典とされており、305篇もの詩が収められています。
この『詩経』のなかの大雅「文王」に「濟濟多士文王以寧」という一文があり、「多士済々」が登場しています。「濟濟たる多士、文王以て寧(やす)んぜり」と読み、数多くの優れた人材が集まり文王は心安らかであられるという意味です。
文王は徳の高い名君として知られている周朝の始祖で、「文王にひかれて数多く集まった才能と徳を備えた優秀な人材たちが、周の国を支えていくであろうことに、文王は天において心安んじておられるだろう」という内容がうたわれています。
「多士済々」の類語とは?
「多士済々」の類語は”人才済済”
「多士済々」の類語はあまり見当たりませんが、「人才済済」を挙げることができます。「人才」とは技量や才知に富んだ人物のことで、「多士」と同様の意味を持つ言葉です。
数が多いことや立派な様子を指す「済済」をともなった「人才済済」は、技量や才知に富んだ人物が数多く集まっていることを表しており、「多士済々」の同義語ともいえます。
“百花繚乱”も「多士済々」に近い言葉
「百花繚乱」の文字通りの意味は、たくさんの花々が華やかに咲き乱れていることです。それが転じて、優秀な人物が数多く現れて一時期に優れた業績がたくさん出されることを指して使われるようになりました。
「多士済々」で数多く登場しているものは優秀な人物ですが、「百花繚乱」では優れた人たちとその業績であるという違いがあります。しかし意味合いは似ているため、「百花繚乱」は「多士済々」に近い意味を持っているといえる四字熟語です。
「多士済々」の反対語とは?
「多士済々」の反対語は”少数精鋭”
数多くの優秀な人々が集まっていることを指す「多士済々」の反対語として、「少数精鋭」が挙げられます。「少数精鋭」は少人数ではあるが選りすぐられて手ごわいことやその人たちのことを表した四字熟語です。
織田信長の「桶狭間の戦い」や楠正成の「千早城の戦い」は寡兵が大軍を下したことで知られる戦ですが、数においては圧倒的に劣る軍兵たちの勇猛果敢な奮戦による大金星であり、「少数精鋭」のよい事例です。
「多士済々」の使い方とは?
「多士済々」を使った例文
「多士済々」を使った例文を紹介します。
- 彼が主催するパーティーにはいつも「多士済々」が集まり、各界の大物が顔をそろえている。
- 「多士済々」たるメンバーが総力を挙げて立ち上げたベンチャー企業は、目下破竹の勢いで成長中だ。
- この支店の売り上げが突出している原因は、「多士済々」のスタッフたちの企画力にあると思われる。
- 我が社には社員が大勢いてにぎやかだが、残念ながら「多士済々」といえる状態からはほど遠い。
まとめ
「多士済々」の読み方と意味のほか、由来と類語や反対語について解説しました。類は友を呼ぶといいますが、組織のカラーはメンバーによって決まります。そして組織のトップによって、集まってくるメンバーの顔ぶれも違ってくるともいえます。
なお、「多士済々」は集団や組織に対してのほめ言葉ですが、同時に個々の構成要員をほめていることにもなります。取引先などを持ち上げたいときに、うまく活用できるのではないでしょうか。