「鵜の目鷹の目」という日常的によく見聞きすることわざがありますが、鳥目という言葉とは逆に鳥の視力はかなり良いそうです。よく見える目で鵜や鷹が見ているものとは、何でしょうか。この記事では「鵜の目鷹の目」の意味だけでなく由来や類義語を解説し、ことわざを使った例文も紹介しています。
「鵜の目鷹の目」とは?
「鵜の目鷹の目」の意味は”獲物を狙う目つきや様子”
「鵜の目鷹の目」の意味は、“獲物を狙う鵜や鷹の目つきや、そのような目つきで何かを探している様子のこと”です。読み方は、「うのめたかのめ」です。
鵜は長良川の鵜飼でおなじみの鳥ですが、水中で泳いでいる魚をすばやく捕らえることができます。鷹は鷹狩に使われるように、優れた狩猟能力を持った鳥です。
鳥目という言葉のイメージとは逆に鳥の視力は大変優れており、すばやく動く小さな獲物を発見して捕獲する鵜と鷹の視力は、人間の何倍も優れています。
抜群の視力を持った鵜や鷹が獲物を探すときの目つきは、最近の言葉でいう「目ぢから」にあふれ、もし狙われている側がその目を見れば、体がすくむような恐怖を感じることでしょう。
「鵜の目鷹の目」に映るのは欲を満たすもの
「鵜の目鷹の目」は単に鋭い目つきをしていたり、集中して何かを探したりしていることを指すだけではありません。
鵜や鷹の目に映っているものは自らの食欲という本能を満たすための獲物で、ここから「鵜の目鷹の目」が、自分の欲を満たすために何かを懸命に探しまわることも意味として含むようになりました。
「鵜の目鷹の目」の意味には粗探しをすることも
「鵜の目鷹の目」は、相手の欠点や弱点などの粗探しをするときの目つきを指しても使われることわざです。
一般的に動物が狩りをするとき獲物が複数いる場合には、最も捕まえやすい個体を狙います。捕まえやすい個体とは動きが鈍かったり群れから遅れていたりなど、何らかの欠点や弱点を持っていることがほとんどです。
また狩りが上手な鵜や鷹は獲物を見逃さず、確実に捕獲します。これらのことから、「鵜の目鷹の目」がくまなく相手を観察して粗を探すときの目つきを指すようになったのです。
「鵜の目鷹の目」の由来とは?
「鵜の目鷹の目」の由来は平賀源内の著作
「鵜の目鷹の目」の由来は平賀源内が著した滑稽本で、女形の歌舞伎役者である荻野八重桐の溺死事件をテーマにしながら、当時の世相を風刺した「根無草/根南志具佐(ねなしぐさ)」というものです。
このなかの一文で「鵜の目鷹の目」が、何か珍しいものはないかと探し回る様子を描写する言葉として登場しています。
「玉塵」も”鵜の目鷹の目”の由来
「玉塵(ぎょくじん)」も「鵜の目鷹の目」の由来とされている書物です。「玉塵」は室町時代に編まれた漢詩文の抄本で、室町時代に用いられていた日本語を知るうえでの資料として価値が高い一書です。
このなかで「鵜の目鷹の目」ということわざの意味は早くものを見つけることである、と解説されています。
「鵜の目鷹の目」の類義語とは?
「鵜の目鷹の目」の類義語は”目くじらを立てる”
「鵜の目鷹の目」の粗探しをするという意味を持った類義語としては、「目くじらを立てる」が挙げられます。
「目くじら」は目くじりともいい、目尻のことを指した言葉です。目くじら、つまり目尻を立てた状態は、目が釣り上がって厳しさや怒りを表した表情となっています。
ここから、相手の欠点をあげつらってとがめたり責めたりしている様子を、「目くじらを立てる」というようになりました。
「血眼になる」は熱中しすぎた状態
われを忘れるほど何かに集中して、周囲が見えなくなっている状態を「血眼(ちまなこ)になる」といいますが、「血眼」とは、逆上して血走った目のことを指しています。
何かに集中しているという意味で、「血眼になる」は「鵜の目鷹の目」に近いことわざですが、血眼になったときは冷静さを失った状態です。
たとえば決済アプリが入ったスマホをなくしてしまったようなときには、冷静ではいられません。この点で「血眼になる」は、クールに獲物を探している「鵜の目鷹の目」と少しニュアンスが異なっています。
一心不乱という意味の「目の色を変える」
夢中になって何かに取り組んでいるときには、目つきや表情が普段とは違っているものです。
「目の色を変える」は、何かに集中しているときの目つきや様子を表す「鵜の目鷹の目」に似たことわざで、一心不乱に何かをおこなっているときや、真剣勝負に臨んでいるときの鋭い目つきが思い起こされます。
「目の色を変える」状態になっているときの対象は、勉強や仕事であったり欲に絡んだものであったりとさまざまです。
「鵜の目鷹の目」の使い方とは?
「鵜の目鷹の目」を使った例文
「鵜の目鷹の目」を使った例文を紹介します。
- クリーンさが売り物だった政治家のスキャンダルに、新聞記者たちは鵜の目鷹の目で取材攻勢をかけていた。
- 甲子園で活躍する選手たちを、プロ野球チームのスカウトたちは鵜の目鷹の目で物色していた。
- 有望な人材を選りすぐるべく、人事部がエントリーシートを鵜の目鷹の目でチェックしている。
まとめ
「鵜の目鷹の目」の意味をはじめ、由来や類義語と例文を紹介しました。「鵜の目鷹の目」は懸命に何かを探したり見たりしていることを指してはいますが、自分が欲しいものを手に入れるためや他人の粗を探すためという意味合いが含まれています。
相手に対して失礼に当たらないように注意する必要があるため、オフィシャルな場で誰かを指して使うことは避けておいた方がよいでしょう。