「ご笑覧」は時折見聞きする言葉で、「ご笑覧ください」といった言い回しで使うことがあります。一見ていねいな言葉のように見えますが、ビジネスの場面で用いることに問題はないのでしょうか?
この記事では、「ご笑覧」の意味や使い方、使う上での注意点、さらに類語「ご高覧」「ご清覧」などとの使い分けも解説していきます。
「ご笑覧」とは?
「ご笑覧」の意味は”笑って見てやってください”
「ご笑覧」の意味は、”笑って見てやってください”です。読み方は「ごしょうらん」です。自分の作品や文章などを他人に軽い気持ちで見てもらいたいときに使う言葉です。「ご笑覧ください」という言い回しで用いますが、この用法での「笑」という文字は、「失笑・苦笑」を指しています。
お見せしたいものは見て楽しんでいただけるような立派なものではなく、「お目に掛けるほどのものではなくお恥ずかしい限りですが、どうか見てやってください」という意味合いのへりくだった謙譲表現です。
「ご笑覧」は謙譲表現と尊敬語が合わさった言葉
「ご笑覧」で使われている「覧」という文字には見るという意味がありますが、「ご覧になる」というように「見る」の尊敬語としても用いられます。さらに尊敬やていねいさを表す接頭辞の「ご」も付いています。
つまり「ご笑覧」は、自分を下げる謙譲表現と相手を高める尊敬語の両方が合わさってできた言葉です。相手への敬意が強く示されている表現といえるもので、目上の方やお客様などに対して失礼のない表現として使うことができます。
「ご笑覧」の使い方と例文とは?
「ご笑覧」はプライベートな場面で使うのが適切
「ご笑覧」は相手への敬意を表すことができる言葉であるため、目上の方に対しても安心して用いることができます。しかし、軽い気持ちで笑って見てくださいという意味合いがあるため、ビジネスに関わる作成物や改まった文書などを見せたいときに使うことは不適切です。
趣味で描いた絵や、新聞に掲載された俳句などのようなプライベートな活動での作成物を見てもらいたいときに、「ご笑覧いただければ・・・」というようにお使いください。
同音の「ご照覧」との使い分けに注意
「ご笑覧」と同じ読み方の言葉に「ご照覧」があります。「明らかに見ること」という意味のほかに、「神仏や王様がご覧になること」を表した言葉です。
「ご照覧」は一般的な用法として見られることは少ない言葉で、古典や古文書などで「ご照覧を賜る」という用法が見られます。神仏や王様にはっきりと見せることを前提にしており、最高のものをご覧いただくという堂々とした誇らしさが込められた言葉です。
したがって、「ご笑覧」とは全く違った意味合いとなるため、間違って使わないようにしてください。
「ご笑覧」を使った例文
「ご笑覧」を使った例文をご紹介しましょう。
- 還暦祝いに拙作ばかりを並べた個展を開きましたので、よろしければついでの折にでもご笑覧ください。
- 投稿した駄文が掲載された新聞をお持ちしましたので、ご笑覧いただければ幸いです。
- 恥ずかしながら自分史を献本させていただきますので、どうぞご笑覧ください。
「ご笑覧」の類語・類似表現とは?
ビジネスシーンで使える類語は「ご高覧」
「ご高覧」は「ご覧いただく」をさらにていねいにした言葉です。「ご笑覧」とは違い、仕事上の展示会や資料を目上の方やお客様などにじっくりと見ていただきたいときにも、「ご高覧いただければ幸いです」というように使うことができます。
また「拙稿ご高覧」という言い回しは、「つまらない文章ですがご覧ください」という謙譲の気持ちを表すことができる表現です。
手紙で使える書き言葉の類語は「ご清覧」
「ご清覧」も相手が見ることを敬って表現する言葉です。手紙などの文中で用いるための言葉であるため、口頭では使用しません。
たとえば相手に何かを見ていただきたい旨を手紙で伝えたいときに、「同封の資料をご清覧いただければと存じます」というように書き記すことができます。
「ご天覧」「ご叡覧」は天皇陛下にのみ使える言葉
一般人に対しては使わない、「ご覧になる」の尊敬語としては、天皇陛下に対してのみ使用する「ご天覧」「ご叡覧(えいらん)」「ご奏覧」があります。
また、「ご台覧(たいらん)」は皇族に対して用いられる言葉です。いずれも一般人に対して使用することはありませんので、ご注意ください。
「ご笑納」は「つまらないものですがお納めください」の意味
似た意味合いの「笑」を使った言葉としては、品物を贈るときに用いる「つまらないものでお恥ずかしいのですが、どうかお納めください」という意味の「ご笑納」があります。
まとめ
「ご笑覧」の意味のほか類語や使うときの注意について解説し、例文も紹介しました。「ご笑覧」はれっきとした尊敬語ですが、プライベートで使用することが望ましい言葉です。
尊敬語にもシーンを選ぶ言葉かあるということは見落としがちなポイントで、「ご笑覧」は敬語の難しさを実感できる好事例といえます。また類語は存在するものの、「ご笑覧」と互換可能な言葉は限られている点にも注意が必要でしょう。
ハイレベルな敬語をうろ覚えのまま使うのではなく、分かりやすくて汎用性の高い言葉を用いたほうが安全です。