「鬼籍」の意味と由来とは?「鬼籍に入る」の使い方や類語も紹介

「鬼籍」という言葉には「鬼」という文字が使われていて、少し怖い印象を受けます。しかし、「鬼籍に入る(いる)」という用法で見聞きすることが多い言葉でもあります。この記事では、「鬼籍」の読み方と意味のほか、語源・類語や使い方が分かる例文もあわせて紹介しています。

「鬼籍」の意味や読み方とは?

「鬼籍」の意味は”死者の台帳”

「鬼籍」の意味は、”死んだ人の名前や亡くなった年月日などが記された台帳のこと”です。「鬼籍」だけが単独で用いられることは少なく、慣用表現である「鬼籍に入る(いる)」という形でよく使用されます。

「鬼籍」の読み方は”きせき”

「鬼籍」の読み方は“きせき”です。「鬼」の字は訓読みで「おに」と読むので、「おにせき」と読んでしまう方もいるかもしれません。「鬼籍」の漢字はどちらも音読みで「き」「せき」となりますので覚えておきましょう。

「鬼籍」の由来と語源とは?

由来は閻魔大王が持っている「閻魔帳(えんまちょう)」

閻魔大王が持っているとされる閻魔帳が、「鬼籍」の由来です。閻魔大王は死者の行き先を決める存在ですが、極楽行きか地獄行きかを決める際に閻魔帳を参照するといわれています。

閻魔帳には、死者のプロフィールとして氏名・死亡年月日のほか、生前の行いなどが記録されているそうです。閻魔大王は、閻魔帳の内容を見てお裁きを下すのですが、この閻魔帳の別名が「鬼籍」です。

「鬼籍」の語源は「鬼」のリスト

「鬼籍」での「鬼」は昔話に登場する鬼のことではなく、漢語で死んだ人のことを指しています。「籍」は、「戸籍」「入籍」などにも使われているおなじみの漢字で、人別・戸別・地所などが登録されたリストのことです。

「鬼」のリスト(籍)で「鬼籍」となりますが、「鬼籍」に登録された死者は、閻魔大王のお裁きが下るまで生きた心地がしないかもしれません。

「鬼籍」の使い方と例文とは?

「鬼籍に入る(いる)」は亡くなることを意味する

死者の台帳に入る、つまり死者のリストに加えられることで、婉曲的に亡くなることを表現しています。この場合、読み方は「はいる」ではなく「いる」となります。大切な人が亡くなるセンシティブなシーンで使う場合、特に口頭では言い間違えて失礼にならないように要注意です。

なお、「鬼籍に登る」という言葉も「鬼籍に入る」と同じ意味で使います。

「鬼籍」を使った例文

「鬼籍」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 同窓会名簿を見て同級生がすでに数人鬼籍に登っていることを知り、かなりショックを受けた。
  • 若くして鬼籍に入った友人をしのんで、ささやかな追悼の集いを開くことにした。
  • 関係者が次々と鬼籍に入り、当時のことを直接知っている人はほとんどいなくなってしまった。

「鬼籍」の類語とは?

「鬼録」は「鬼籍」の同義語

「鬼録」は「きろく」と読み、「点鬼簿(てんきぼ)」ともいわれています。閻魔大王が「鬼」つまり死者の名前を鬼録したもので、「鬼籍」と同じ意味を持つ言葉です。したがって「鬼録」と「鬼籍」は、お互いに言い替えとして用いることができます。

「閻魔帳」は閻魔大王の覚書

「閻魔帳」も「鬼籍」の類語として挙げることができる言葉です。「閻魔帳」には死者の名前と死亡年月日だけでなく、生前の行いも記録されています。

教師が生徒の成績や出欠・行状などを記録するノートや、警察手帳のことも「閻魔帳」といわれますが、閻魔大王の閻魔帳と同様に記載された内容が気になる手帳です。

「過去帳」とは系譜帳のこと

「鬼籍」と同様に「過去帳」も、亡くなった方の記録です。仏教で用いられ先祖代々の戒名・俗名をはじめ、死亡年月日や享年などが記されています。

江戸時代にできた檀家制度において、「過去帳」は戸籍のような役割を果たしていたものです。戸籍が整備されてからも過去帳は健在で、位牌を祀らない浄土真宗では「過去帳」を仏壇に飾っています。

「鬼籍に入る」の類語とは?

「蓋棺」とは棺にふたをすること

「蓋棺」は「がいかん」と読み、人が死んだことを表している言葉です。「蓋」という文字は「おお・う」とも読み、「蓋棺」を読み下すと「棺を蓋う」となります。

「蓋棺」は、人の評価は死んではじめて定まることを指す四字熟語「蓋棺事定(がいかんじてい)」の形で用いられることが一般的です。

「身罷る」はこの世から去ること

「身罷る」は「みまかる」と読み、死去することを指す言葉です。古くは自分の身内が亡くなった場合に謙譲語として用いられましたが、「身罷られる」という形で尊敬語として使うこともできます。

「罷」という文字には「やめる・退出する・しりぞける」などの意味があり、「身」がつくことで、この世から出て行くことを表す言葉になりました。

「白玉楼中の人となる」は文人が亡くなること

「白玉楼中」は「はくぎょくろうちゅう」と読みます。「白玉楼中の人となる」は文人や墨客(ぼっかく)が亡くなることを指し、文人・墨客とは、詩文や書画をよくする人のことです。

唐の詩人である李賀(りが)の臨終の際に天帝の使いが現れ、「天帝が白玉楼の記録を書かせるために、李賀をお召になる」と告げたという故事が元になった言葉で、一般の人が亡くなったときには使いません。

「泉下の客となる」は冥土を訪ねること

「泉下」は「せんか」と読みます。「泉下」とは黄泉(こうせん・よみ)のことを指しており、死んだ人が行くところのことです。「泉下の客となる」とは黄泉の国のもとへ訪れる客になることで、死ぬことを婉曲に表現した言い回しです。

まとめ

「鬼籍」の読み方と意味に加え、語源・類語や使い方が分かる例文も紹介しました。「鬼籍に入る」をはじめ、死ぬことを婉曲に表す言い回しはたくさんあります。

現代でも「死」という直接的な表現は避らけれていて、特に葬儀の場では注意が必要です。ここで紹介した言い回し以外にも、簡単な言葉として「ご逝去・ご永眠」を覚えておくと便利でしょう。