「利益率」の意味と計算方法とは?粗利率との違いや平均も解説

経営者の方でなくても、「利益率」という言葉はよく見聞きしているのではないでしょうか。しかし、利益率に種類があることや計算方法までよく知っているという方は少ないと思われます。この記事では「利益率」の意味と計算方法のほか、「利益率」の種類や平均および粗利率との違いについても解説しています。

「利益率」とは?

「利益率」とは売上高に対する利益の比率

「利益率」とは、投下資本や売上高などに対する利益の比率のことです。会社の収益性を見るための指標のひとつです。利益とは「儲け」を表しており、売上から費用を引いた残りを指します。

一般的に会社の規模に比例して資本や売上高は大きくなるため、利益の額も大きくなります。そのため、利益の額だけでその会社の収益性を見るのではなく、投下資本や売上高に占める利益の比率を求めたうえで判断するのです。

「利益率」は儲かる商売の目安

1個売れたときの利益が500円の商品Aと1,000円の商品Bでは、商品Bのほうがより利益が大きく見えるでしょう。しかし商品Aの価格が2,000円、商品Bの価格が8,000円だったとすると、商品Aの儲けのほうが大きくなります。

もし利益の額だけに注目して商品Aより商品Bの販売に力を入れていたとすると、効率の悪い商売をしていることになるのです。利益ではなく利益率こそが、儲かる商売を見定める目安としてふさわしいものといえます。

「利益率」の計算方法とは?

「利益率」は利益を売上高で割ったもの

利益率はパーセンテージで表されるもので、利益÷売上高×100で計算できます。たとえば先に挙げた商品Aと商品Bの例で計算すると、以下のようになります。

  • 商品Aの利益率(%):500円÷2,000円×100=25%
  • 商品Bの利益率(%):1,000円÷8,000円×100=12.5%

計算からわかるように、商品Aの利益率は商品Bの2倍です。ところが商品Aと商品Bを100個ずつ売った場合の売上高は、商品Aは50,000円、商品Bは100,000円となり、商品Bが商品Aの2倍になるのです。

利益の種類によって変わる「利益率」

ひとくちに利益率といっても、対象となる利益の種類によって数値が違ってきます。売上高から売上原価(仕入原価)を引いたものが売上総利益(粗利益)、粗利益から販売費および一般管理費を差し引いた収益が営業利益、営業利益から本業以外の損益である営業外収益・営業外費用を差し引きしたものが経常利益です。

その他、一時的な損失や利益を加味した税金を納める前の利益である税引前利益、税金を引いた最終的な利益である当期純利益があります。

利益率の分子にあたるそれぞれの利益は金額が異なるため、分母である売上高が一定であっても数値も違ってくるので、目的に合わせて使い分けているのです。

「利益率」の基本はどの利益でも同じ

利益の違いによる利益率の計算方法は以下のとおりですが、どの利益率においても基本的に、売上高総利益率と同じように計算します。

  • 売上高総利益率=売上総利益÷売上高×100
  • 売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100
  • 売上高経常利益率(ROS)=経常利益÷売上高×100
  • 総資本利益率(ROA)=経常利益÷総資産×100
  • 自己資本利益率(ROE)=当期純利益÷自己資本×100

「利益率」と「粗利率」の違いとは?

「粗利率」とは粗利の利益率

「粗利率」とは粗利の利益率のことです。粗利は粗利益とも呼ばれ、売上高から売上原価(仕入原価)を差し引いた収益のことを指し、財務会計上では「売上総利益」といっています。

粗利率は売上高総利益率とも呼ばれていますが、商品の付加価値を示す指標となっているため、薄利多売戦略では不利な立場にある中小企業で重視されるものです。粗利率は以下の計算式で求めることができます。

粗利率(%)=粗利÷売上高×100

「利益率」の平均とは?

「利益率」は原価率が低いと高くなる傾向が

「利益率」は、利益が多くなるほど高くなります。売上からさまざまなコストを引いた残りが利益となるのですが、業種や業界によって必要となるコストの種類や多寡は異なっているため、利益率も違ってくるのです。

総資本利益率(ROA)を指標とした各業界の平均的な利益率ランキングのTOP5は、以下のようになっています。

順位社名ROA(%)業種
1シンプレクス・ファイナンシャル・ホールディングス(SFH)57.95その他金融
2カカクコム53.54サービス
3ZOZO51.79小売業
4ガンホー・オンライン・エンターテイメント51.62サービス
5OKウェイヴ47.09サービス

利益率ランキングの上位では、サービス業の比率が高くなっています。サービス業は一般的に原価率が低い傾向があるため、効率的に利益を残せます。

上位5社のうちカカクコム・ZOZO・OKウェイブはインターネットサイト運営を行っている会社ですが、収益性の高いビジネスモデルを持つ業界が強いようです。

「粗利率」の平均は小売業で29%弱

一般的にROAよりなじみがある粗利率においても業種や業界によって偏りがありますが、粗利益率が高いほど収益性が高い企業と判断できます。「粗利率」の平均は、小売業で29%弱、卸売業では12%弱、製造業で20%強です。

小売業と卸売業では仕入原価、製造業では製造原価を抑えることができれば、粗利率を高めることができます。しかし小規模の企業では販売費および一般管理費の割合が多くなる傾向がみられるため、粗利率のよさだけで経営体質を判断することはできません。

まとめ

「利益率」の意味と計算方法をはじめ「利益率」の種類や平均、粗利率との違いなどについて解説しました。本業における利益を高めることは、商売の王道です。

しかし、時代の流れや移り変わりのスピードは速くなる一方で、事業の多角化は避けられなくなっています。次の一手を準備しておくためにも、「利益率」をうまく活用した経営を行う必要があるでしょう。