「草々」は手紙の結びに書かれる言葉ですが、冒頭に書くべき言葉を間違えると常識を疑われてしまうこともあります。また書く位置も決まっていて、用法に気を遣う言葉です。この記事では、「草々」の意味や「敬具」との違いのほか、書く位置や類語を使い方もあわせて解説しています。
「草々」とは?
「草々」の意味は”忙しい様子・粗略なさま”
「草々」の意味は、“忙しい様子・粗略なさま”のことです。主に手紙文で頭語の「前略」とともに用いられる結語です。漢字の「草」には「そまつな」「おおまかな」という意味があります。
同じ文字を重ねた「草々」を手紙の末尾に置くことで、取り急ぎ走り書きで手紙をしたためたことを表しています。
手紙文での時候のあいさつを省略しますという意味で用いられる「前略」を冒頭に置いたときに、粗略な内容で失礼しましたという意味合いを込めて「草々」で締めくくるという決まりになっているのです。
「草々」の読み方は”そうそう”
「草々」の読み方は“そうそう”です。
「早々」は本来誤用
「草々」を、「早々」と書いた文書を見かけることがあります。本来は「草々」が正しい言葉であり、「早々」は誤用ですが、読みが同じで文字の形も似ていることから、間違って「早々」を使う人が増えているようです。
本来誤用であっても、使う人が増えると徐々に通用するようになっていきますが、今のところはまだ「草々」が優勢です。無難な「草々」を使うことをおすすめします。
「草々」を書く位置とは?
「草々」を書く位置は末文の後
手紙は、以下のような4つのパーツと内容で構成されています。「草々」を書く位置は、結びの挨拶文の後で改行した行の末尾です。
パーツ | 内容 |
頭語 | 前略 |
前文 | 時候の挨拶・安否の挨拶 |
本文 | 用件 |
末文 | 結びの挨拶 |
結語 | 草々 |
後付 | 日付・宛名・差出名 |
「草々」の使い方とは?
「草々」は気軽な手紙に使う結語
「草々」は、親しい相手に送る気軽な手紙にふさわしい言葉です。「前略」とともに、前文の時候や安否の挨拶が省略された文書で使うため、正式な文書や礼状、わび状を送る場合には不向きです。
なお、文書を送る相手が目上の方である場合は丁重な文面を心掛けたいため、簡略な内容を示す「草々」は失礼にあたるので避けた方がよいでしょう。
「草々」は通常ビジネス文書では使わない
前文の時候や安否の挨拶が省略された文書は、ビジネス文書にふさわしいとはいえません。一般的にビジネス文書では、時候や安否の挨拶が入ったテンプレートが用意されており、頭語と結語は「拝啓」「敬具」が用いられます。
したがって「草々」は特に急を要する場合でない限り、ビジネス文書で使うことはまれな言葉です。
頭語は「冠省」「急啓」も使える
結語の「草々」と一対で使うことができる頭語は、「前略」のほかに「冠省(かんしょう)」や「急啓(きゅうけい)」などもあります。
「冠省」は手紙の冠にあたる前文を省いたことを示した言葉です。「急啓」は急ぎ申し述べることを表した言葉で、いずれもあわただしく走り書きした簡略な文書であることを指しています。
「草々」の代わりに使える類語とは?
「不一」とは書き尽くせていないこと
「不一」は「ふいつ」と読みます。手紙の末尾に置き、書きたいことを十分に書き尽くせていないことを表す言葉です。「草々」と同様に前文を省いた粗略な書面の結語として使います。
「草々不一」と書く場合もありますが、「草々」か「不一」のどちらか一方を用いることが一般的です。
「かしこ」は女性限定
「かしこ」は、恐れ多いという意味の「畏し(かしこし)」が縮まった言葉です。手紙を送る相手に対して、「恐れ多いことですがこれにて失礼いたします」という意味のあいさつとして用います。
「かしこ」に対応する頭語としては、前文を省略した「前略」「冠省」「急啓」などに限らず「拝啓」も使用できますが、ビジネス文書には適しません。また、女性限定の用語である点にも注意が必要です。
「草々」と「敬具」との違いとは?
「敬具」は「拝啓」と対で使う言葉
「敬具」も「草々」と同様に、手紙の末尾に置く結びの言葉として使われている言葉です。「草々」が「前略」とセットになっているように、「敬具」は「拝啓」とセットになっています。
「拝啓」の「拝」は拝むという意味で、敬意を表す文字です。「啓」には申し述べるという意味があり、ふたつが合わさった「拝啓」は相手を敬って申し述べることを表します。
「拝啓」と対になる「敬具」に使われている「敬」は恭しくかしこまることを指す文字です。もうひとつの「具」はつぶさに・詳しくということを表し、二つの文字が一緒になると「謹んでつぶさに申し述べました」という意味になります。
「草々」と「敬具」が入れ替わることはない
「拝啓」の結びに「草々」が使われることや、「前略」の結びに「敬具」が使われることはありません。
「拝啓」と丁重な言葉で始めた手紙文において、粗略さを詫びる「草々」で締めくくることはなく、「前略」を置いてあいさつ抜きで書き始めた手紙文の末尾に、謹んでつぶさに申し述べましたと丁重に締める「敬具」を置くこともないのです。
まとめ
「草々」の意味と「敬具」との違いのほか、書く位置と使い方についても解説しました。「草々」は簡略な手紙に使われる語句であることから、ビジネス文書で使うことはほぼありません。
私的な書簡で使う機会が多い「草々」ですが、使い方のルールを無視すると社会人として勉強不足であることが露呈してしまいます。文書は後々まで残るため、注意を怠らないようにしたいものです。