「対応」と「応対」はそれぞれの文字の前後が入れ替わっただけの熟語で、あまり違いを気にせずに使われているようです。しかし両者は同じ意味の言葉ではないため、きちんと使い分ける必要があるのです。この記事では「対応」と「応対」の違いとそれぞれの意味を解説し、電話や来客での使い方を具体的に紹介しています。
「対応」と「応対」の違いとは?
「対応」と「応対」の違いは”対象となるものが人か状況か”
「対応」と「応対」の違いは、“対象となるものが人であるかどうか”です。「対応」の対象は“状況”で、「応対」の対象は“人”です。「対応が良い」という場合は、状況に応じた処理や解決の仕方が評価されています。一方「応対が良い」という場合は、相手に対する言葉使いや態度などのマナー、コミュニケーションの取り方が評価されているのです。
たとえば電話が掛かってきたときの「対応」では、相手の要求に対して具体的に処置や行動を起こすことを表し、「応対」では電話を掛けてきた人の話を聞いて受け答えすることを指します。つまり「応対」で行うことは相手への受け答えまでであって、相手の用件に対する処置や行動までは含みません。
「対応」と「応対」の意味とは?
「対応」の意味は状況に対して行動すること
「対応」する対象は、火事や災害などを含む「状況」や「問題」などのことがらです。電話や来客が対象である場合、接している相手は人であっても、向き合っているものはその人からの「要求」であり、「要求」に応えるための処置や対策を行わなければなりません。
たとえば「クレーム対応」を行う場合、単に相手の話を聞くだけでは不足で、クレームに応じた適切な処置を行うところまでが求められるのです。
「応対」の意味は受け答えすること
「応対」は受け答えするという意味で、対象となるのは人です。たとえば来客の話に対して受け答えしている場合、受付が行っていることは「応対」であり、担当者が来客の要求に対処していることは「対応」となります。なお、「接待」と混同して「応対」を「応待」と書いてしまわないように注意してください。
「応対」が良いと「対応」がスムーズに
電話や来客に対して最初に受け答えする人は、必ずしも相手の問題を解決できる人ではありません。まず「応対」があって次に「対応」へと進むケースが多いのですが、「応対」の良し悪しによって相手の感情は大きく左右されます。
気持ちの良い「応対」を受けた場合には、相手の用件がクレームであっても怒りが小さくなり、その後の「対応」はスムーズに進みます。逆に「応対」が悪ければ、単なる問い合わせがクレームに発展してしまうこともあるので、最初に電話や来客に接するときには、できるだけ良い「応対」を心掛けたいものです。
「対応」と「応対」の電話での使い方とは?
受付が「応対」し、担当が「対応」
「電話対応」と「電話応対」は、混同されて使われることがよくあります。しかしここまでで解説したとおり、話の内容はまったく別のものです。掛かってきた電話を最初に受けた人が相手の用件を聞くまでが「応対」で、担当者などに引き継ぐところからは「対応」となります。
「対応」しやすい「応対」が大切
「電話応対」をした人が適切な敬語を用いて気持ちの良い接し方をすると、相手は「応対がよかった」と感じます。そして、担当者が問題を迅速かつ適切に解決できれば「対応がよかった」ということになりますが、「応対」がよければ「対応」はいっそうスムーズに進みます。
良いパスをもらうとシュートしやすいことと同じように、良い「対応」をするためには良い「応対」が不可欠です。
「対応」と「応対」の来客での使い方とは?
「応対」しながらの「対応」が求められる「接客」
サービス業や販売業での「接客」は、「応対」と「対応」が並行して行われるものです。お客様の話を聞きながら要望を満たすことだけでなく、お客様の潜在的な欲求を掘り起こしたり新たな提案を行ったりすることで、期待以上の満足を与えることができます。「またここに来たい」とお客様が思うような「応対」と「対応」を提供できれば、自ずと業績も向上します。
「応対」で付加価値を高められる
サービス業や販売業での「対応」は、お客様にサービスや商品を売ることやトラブルを解決することですが、「応対」によって付加価値を高めることができます。
同じ商品を同じ価格で販売しているにもかかわらず、「あの店よりこの店がいい」とお客様が感じるポイントは、スタッフの「応対」ぶりに負う部分が大きいのです。サービスや商品だけでなく、快適な時間を提供するための「応対」を疎かにはできません。
まとめ
「対応」と「応対」の違いと意味のほか、電話や来客での使い方についても解説しました。「対応」と「応対」はとても似ている言葉ですが、対象がことがらであるか人であるかという違いがあります。
「応対」は問題解決のための直接的なアクションではありませんが、人そのものを対象とするだけに、効率を優先するあまり「対応」を急ぐと失敗するため注意が必要でしょう。