建造物の工事を始めるときなどに、「地鎮祭」が開催されているのを見かけます。ところが「地鎮祭」とは何なのか、本当に必要なのかについて深く考えないまま、慣例的に行われているのではないでしょうか。この記事では「地鎮祭」の意味と必要性の有無のほか、挨拶やお供えと掛かる費用などについても紹介しています。
「地鎮祭」とは?
「地鎮祭」とは”工事前に行う儀式”
「地鎮祭」とは、“土木工事や建築工事の着工前に行う儀式のこと”です。地鎮祭は一般的に「じちんさい」と読みますが、正式には「とこしずめのまつり」と呼びます。
「地鎮祭」の目的は、工事を行う土地の氏神様に対して土地利用の許しを得ることと、工事が無事終了して建物や住宅が末永く繁栄するように祈りを捧げることです。通常は地元の神社から神主を招いて儀式を執り行います。
「地鎮祭」は絶対に必要なものではない
土木工事や住宅工事においてさまざまな法的な決まりが存在しますが、「地鎮祭」についてはこれを行わなければ工事を進められないというようなものではありません。
近年では人々の意識やライフスタイルの変化により、儀式の簡略化や「地鎮祭」そのものを行わないケースもみられるようになりました。
「地鎮祭」は行った方が無難
かつては必ず「地鎮祭」を行っていましたが、科学技術や機械化が進んだ現在であっても多くの工事現場で「地鎮祭」が行われているのです。
工事中に大きな事故が起きてしまうことや、完成後に何らかのトラブルが発生することはありえます。しかし「地鎮祭」を行わずに工事を進めた場合、「やはり地鎮祭をしておけばよかった」と後悔することになるかもしれません。
あるいは近所の方々や関係者が「地鎮祭は行って当然」と考えておられる場合もあります。建築物は長くその場にとどまるものであることを考えれば、「地鎮祭」を行っておいた方が無難といえるでしょう。
「地鎮祭」での挨拶・お供えとは?
個人住宅での「地鎮祭」で挨拶は不要
個人住宅の新築工事での「地鎮祭」は、施工会社が準備し神主が仕切ってくれることが一般的です。そのため施主が個人である場合に挨拶することは少なく、特に指示があった場合以外は不要と考えてよいでしょう。
「地鎮祭」の儀式における施主の振る舞いは、神主が指示してくれます。具体的には下記に挙げた「刈初」と「玉串奉典」を行う程度です。
- 「刈初(かりそめ)」:あらかじめ盛られた土に鍬を3回入れる
- 「玉串奉典(たまぐしほうてん)」:玉串を祭壇に供え二礼二拍手一礼す
「地鎮祭」ではご近所への挨拶が大切
「地鎮祭」で大切なのは、儀式後に行うご近所への挨拶回りです。多くの場合、施工業者が粗品を準備して挨拶に回るので、施主も同行します。
工事が始まると騒音や車両の出入りで何かと迷惑を掛けることになりますが、「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」と一言挨拶をしておけば大丈夫でしょう。
「地鎮祭」はカジュアル過ぎない服装で
「地鎮祭」において、施主の服装に決まりは特にありませんが、儀式であることや終了後にご近所に挨拶回りをすることを考えると、カジュアルすぎる服装は不適切といえます。しかし礼服まで着用する必要はなく、ジャケットを着用したうえでネクタイを締めておけば充分です。
「地鎮祭」のお供えは清酒や米などの7品目
「地鎮祭」の儀式に必要なものは、神社や施工会社が用意してくれます。お供えに関しては本来施主が用意するものでしたが、核家族化が進むなどしきたりに詳しい人が少なくなったこともあり、施工会社が用意するケースが増えています。なお、お供えは以下の7品目です。
- 清酒(一升瓶を2本)
- 米一合
- 塩一合
- 水一合
- 海の幸
- 山の幸
- 野菜
「地鎮祭」で掛かる費用とは?
「初穂料」は2~3万円程度
神主に支払う費用の相場は、「初穂料(玉串料)」として2~3万円程度が目安です。これに加えて「お車代」を出す場合には、地元の神社なら5,000円、遠方の場合なら10,000円をみておけばよいでしょう。
「初穂料(玉串料)」を入れるのし袋も必要で、印刷ではない紅白の水引をあわじ結びか蝶結びにしたものに中袋がついたタイプが適切です。なお「お車代」は別途、祝儀袋ではなく白封筒に入れて渡します。
通常「お供え」は経費計上されている
施工会社が用意する「お供え」や「粗品」は別途用意することは少なく、建築費用の経費に含まれていることが一般的です。
自分で用意する場合、費用の目安として「お供え」が10,000円程度、「粗品」が1件あたり500~1,000円程度みておくとよいようです。
まとめ
「地鎮祭」の意味や必要性のほか、挨拶・お供えと費用などについて紹介しました。近年、宗教的な儀式は簡略化される傾向にあります。
しかし建築物は長らくその場にとどまり続けるため、地域社会との関係を無視することはできません。「地鎮祭」に掛かる費用と手間はさほど大きいものではないため、特別な理由がない限り行っておいたほうが無難でしょう。