「提示」という言葉は、日常生活でもよく見聞きし、同じ読みの「呈示」や「提」の文字が共通する「提出」など似ている言葉が多くあります。しかし、違いをはっきり意識して使い分けているわけではないかもしれません。この記事では「呈示」や「提出」との違いや類語をあげながら、「提示」の意味を詳しく紹介しています。
「提示」とは?
「提示」の意味は”差し出して示すこと”
「提示」の意味は、“相手にわかるように差し出して見せること”です。熟語に用いられている「提」という文字には、「提出・提供」という言葉からもわかるように、”掲げる・差し出す”という意味があります。
もうひとつの文字である「示」は”はっきりと見せる”ということを指しており、両方の文字があわさって「提示」という語句を形成しています。
「提示」の読み方は”ていじ”
「提示」の読み方は“ていじ”です。
「提示」できるのはモノだけに限らない
相手に差し出して見せることから、「提示」するものとしては「形があるモノ」が目に浮かぶかもしれません。「銀行口座開設のために身分証明書を提示する・保証書を提示すれば修理代が無料になる」などのケースのように、実際に手に取れる物品を対象としたものです。
しかし「提示」できるものには、金額や条件のほか論点や課題などのような手に取れる形を持たない概念的なものもあります。例としては、「顧客にオプションの金額を提示する・議論に先立ち論点を提示しておく必要がある」というもので、相手に理解させるための情報を示すというニュアンスです。
「提示」は敬語でも使える
「提示」という言葉そのものに、敬意を表す意味合いは含まれていません。したがって敬語として用いるときには、語句の前後に置く言葉によって敬意を示す必要があります。
相手に「提示」を求める場合には、”恐縮ですが〇〇をご提示いただけますか”という表現が適切です。自分が「提示」するときには、「〇〇を提示いたします」「提示させていただきます」という謙譲の形にします。
「提示」と「呈示」との違いとは?
「呈示」とは相手に見せること
「呈示」は相手に差し出して見せることを表した言葉です。「呈」という文字には”しめす・はっきりと見せる・差し出す”という意味があり、「提示」と読みが同じだけでなく意味も似通っています。
「クレジットカードを呈示して買い物をする」「パスポートを呈示する場面は意外と多い」というように使うことができる言葉です。
「呈示」で差し出すのは物品だけ
「提示」と「呈示」との違いは差し出すものの範囲にあり、「提示」は形のないものまで含んでいることに対し、「呈示」では形のあるものに限定されています。
品物をプレゼントすることを表す「進呈・贈呈」という熟語をイメージすると、理解しやすくなるでしょう。なお新聞などでは「提示」に統一されており、「呈示」という語句を見掛ける機会は少なくなっています。
「提示」と「提出」との違いとは?
「提出」とはどこかへ差し出すこと
「提出」とは、ある場所に何かを差し出すことを表した言葉で、受け取る相手に直接渡すというより、相手の元に届くことを前提とした場に差し出すこという意味合いです。「必要書類を役所に提出する」「レポートを期限までに提出しなさい」というように用います。
「提出」は相手に見せるところまで含まない
相手にわかるように見せるという意味の「提示」とは異なり、「提出」はただ差し出すだけで相手にみせるという意味合いは含んでいません。「提出」で差し出されるものは、書類や資料などのほか情報や議案などのような書面の形をとらないものも対象となっています。
相手の要求に従い指示された手続き・場所を守って行われるものであるため、相手が見ることが前提となってはいますが、差し出すところまでが「提出」の範囲です。
「提示」の類語とは?
類語①「提案」とは案を提出すること
「提案」とは、案や考えなどを出すことや、その案・考えのことを表した言葉です。具体的には議案や意見などのアイデアを、しかるべき場で公開することや、そのアイデアを指します。
「提示」で相手に見せるもののなかには「案・考え」も含まれていることから、「提案」は「提示」のひとつといえるものです。
類語②「明示」とははっきり示すこと
「明示」の意味は、はっきりと示すことです。「明」という文字には、「はっきりわかる・あきらかにする」ということを表しているため、「明示」の言葉も誰がみてもわかるようにはっきりと見せるというものになっています。
「提示」は相手にわかるように見せるということを指していますが、さらにはっきりとみせることを強調した言葉が「明示」です。
まとめ
「提示」の意味をはじめ、「呈示」「提出」との違いのほか類語なども紹介しました。いずれも相手に見せるという意味合いがベースですが、何を見せるかということや相手に直接見せるかということで使い分けられています。
微妙な違いですが日常生活でよく用いられているため、一度意味を確認しておけば完全に忘れてしまうということはなさそうです。