「たたき台(叩き台)」はビジネスシーンでもよく使う言葉で、決め事をする際に「とりあえず作る案」の意味を持ちます。もともとは鍛冶屋の道具から生まれた言葉で、少しずつ形づくるところに由来しています。
この記事では「たたき台」の意味や例文をはじめ、類語・言い換えやたたき台作りのポイントも紹介しましょう。
「たたき台」の意味とは?
「たたき台」の意味は「ものごとを決める時にとりあえず作る試案」
「たたき台」の意味は、「ものごとを決める時にとりあえず作る素案や試案のこと」です。ビジネス用語としても同様で、「たたき」と呼ばれることも多い言葉です。ビジネスで企画などを決定する際には、多角的な検討を行いながら形にしていきます。このときに元となるものが「たたき台」です。
「たたき台」は、批判して退けるのではなく建設的に進めていくという前提であるため、とりあえずの思い付きで作るのではなく、コンセプトが明確なものである必要があります。
「たたき台」はもともと鍛冶屋の道具
「たたき台」は、もともと鍛冶屋さんが使う道具の名前でした。鍛冶屋さんは金属を焼いてたたきながら形を作っていくのですが、このときの台を「たたき台」というのです。
素材を叩きながら少しずつ完成品に仕上げていくベースであることから、現在の「試案」という意味合いが生まれました。
「たたき台」を使った例文
- 企画書のたたき台づくりを任されたが、私には荷が重い。
- 決定していたはずのたたき台が、部外からの声で変更になった。
- たたき台を無視して勝手な意見を出されては困る。
- まずはこれをたたき台として、方向性を探ってみましょう。
「たたき台」は「叩き台」ではない?
正確に書くなら「敲き台」
「たたき台」の由来である鍛冶屋さんの道具や、試案をたたき上げて完成させることから、「たたき台」には”叩き台”という文字をあてることが適切なように思われます。
しかし正確に書けば「敲き台」となるのです。「敲」という文字には「推敲」という熟語からイメージできるように、”形を変える”という意味合いがあります。この点で、ものを打ち付けるという意味合いの「叩く」とは異なっているのです。
料理の「カツオのたたき」も、包丁でたたくだけでなく細かく切り刻んで形を変えることから、「叩き」ではなく「敲き」と書くのが正解です。
「叩き台」も使用可能
一般的に「たたき台」は、「敲き台」より「叩き台」と書かれることの方が多いようです。漢字の難易度や文字から受けるイメージの明確さからか、「叩き台」と書いても通用しています。
しかし「敲」「叩」のいずれも常用漢字ではないため、新聞や報道では「たたき台」が用いられていることを考えると、ひらかなで「たたき台」と書いたほうが無難でしょう。
「たたき台」の類語・言い換え
「素案」は大まかな案のこと
「素案」の意味は、大まかな案のことです。「素顔・素材」という熟語からもわかるように、「素」という文字には”手を加えない・もとのまま”という意味合いがあります。つまり、これから手を加えることを前提としたものであるため、「たたき台」に近い意味合いで使われている言葉です。
「試案」は試みに出す案
「試案」とは試みに出す案のことで、「たたき台」の類語といえる言葉です。とりあえず作ったものに、さまざまな方向から検討を加えて完成させていくことが前提となっています。
しかしスタート点が誤っていると目指すゴールにたどり着くことが難しくなってしまうため、要点を外さないように企画や議論の目的を押さえておくことが必要です。
「草案」は文章の下書きのこと
「草案」とは、文章の下書きのことです。特に規約や法律などのような条文の下書きを指しています。「草」という文字には”おおまか・あらい・はじまり”ということを示しており、ものごとが本格的に始まる準備段階という意味合いがあります。
ここから、文章が仕上がる前の段階である下書きを表す意味合いも加わりました。「たたき台」は文章に限らずに用いられるため、「草案」は「たたき台」のなかのひとつといえるものです。
「たたき台」の作り方
「たたき台」は完璧をめざすものではない
「たたき台」は議論の材料であり、大幅に手を加えることを前提としたものです。したがって「たたき台」の作成する際には、”完璧を目指すものではない”ことを念頭に置く必要があります。
めざすべきは完成度ではなく、いち早く作成して議論の場に提出することなのです。概略ができあがった段階で上司に見せて意見を求めると、なおよいでしょう。
「たたき台」で外せないのはコンセプト
完成度より速度が求められる「たたき台」ですが、コンセプトを外したものであってはなりません。コンセプトとは、そのものの存在目的や到達点を言語化したものです。
これをあいまいにしたままの状態で作った「たたき台」は、いくらたたいても目指すものにはなりません。細かいところは未完成であるが、骨組みだけはきちんと作り上げたものを「たたき台」としてイメージすれば、わかりやすくなります。
まとめ
「たたき台」の意味と使用例のほか、類語や作り方のポイントなどを紹介しました。新聞ではひらがな表記が一般的ですが、「敲き台」や「叩き台」と書いても誤りではありません。「たたき台」がどのようなものかを理解しておくことで、実際に作成するときにとまどうこともなくなるでしょう。