「省みる」は過去を反省することを意味する言葉です。同じ読みの言葉には「顧みる」がありますが、どのように使い分ければよいのでしょうか。この記事では「省みる」の意味と使い方をはじめ、「顧みる」との違いや類語も紹介しています。
「省みる」の意味と使い方とは?
「省みる」の意味は”過去を反省すること”
「省みる」の意味は、“過去の自分の行いについて深く考えること”です。「省」という文字には”ふりかえる・心のうちをよく見る・注意深く見る”などの意味があり、「反省」や「内省」という熟語にそれらの意味を見て取ることができます。
つまり、「省みる」ときに見つめる対象は自分自身の言動の善悪であり、自分の行いに悪いところがなかったかどうかを振り返ってよく考える行為を指したものが「省みる」です。
ことわざにも登場する「省みる」
失敗を「省みる」ことは大切であるためか、ことわざにも登場しています。「論語」が由来で、「三省」ともいわれている「三たび吾が身を省みる」がそれで、自分を正していくためには、一日に何度となく自分の言動を反省する必要があるという意味です。
「省みる」を使った例文
- 自分の半生を省みて、恥じるところがないと言い切れる人はいないだろう。
- 今回は残念な結果に至ったが、経緯を省みたうえで今後の教訓として活かせばよい。
- 自信過剰な彼には、自らを省みるような習慣はないようだ。
「省みる」と「顧みる」との違い
「顧みる」とは過去を思い出すこと
「省みる」と読みが同じ言葉でとして、「顧みる」があります。過ぎ去った出来事や自分の人生などを振り返って思い起こすという行為を指したものです。
「顧」という文字は”ふりかえって見まわす”という意味がメインで、ここから「気を配る」「目を掛ける」という意味合いが展開しており、「回顧・顧問・愛顧」という熟語にそれぞれの意味合いが反映されています。
「顧みる」に反省の意味は少ない
「省みる」と「顧みる」を使い分ける際のポイントは、過去を思い返すときの対象が「自分の言動に対する評価」であるかどうかです。「自分の行いに間違いはなかっただろうか」という視点で行う場合には「省みる」を用います。
一方、過去をなぞって思い出すような場合は「顧みる」が適切で、その過程で自らの行いに反省点が見つかって深く考えるようになると「省みる」となるのです。
危険を「かえりみず」は「顧みず」と書く
「身の危険をかえりみず、救助に向かった」「他人の迷惑をかえりみない行為は控えよう」という場合の「かえりみ(ず・ない)」は、「顧」を使います。
「顧みる」には”気を配る”という意味がありますが、「省みず」にはそのような意味合いはありません。したがって、身の危険を恐れたり他人の迷惑を考えたりしないというときの用法は、「危険を顧みず・迷惑を顧みない」となります。
「省みる」の類語
「省察」とは自らの是非を考えること
「省察」は、”せいさつ・しょうさつ”と読みます。自分自身のこれまでの来し方を振り返り、その善悪や是非について考えることで、「省みる」と同じ意味を持った言葉です。
「反省」の固い表現ともいえるもので、「自らを省察する時間を得た」というように使うことができますが、話し言葉で用いられる機会は多くありません。
「自問」とは自分の心に問いかけること
「自問」とは自分自身の心に問いかけることを表したもので、「自問自答」という四字熟語でもよく知られている語句です。
「省みる」との違いは問いかけの内容で、「自問」の場合には自分の過去における言動だけではなく、これからどうするかという未来指向の問いかけも含まれています。
「内観」とは自分の内面を見つめ探究すること
「内観」とは、自分の心を深く見つめて探究することを指す言葉です。「内観」はもともと仏教の修行法のひとつで、瞑想によって自己に内在する真理を発見するためのものでした。
そのため、似た意味合いの言葉の「内省」より、「内観」はもっと深い精神性を加味したいときに適した言葉といえるものです。
「顧みる」の類語
「追憶」とは過去をしのぶこと
「追憶」とは、過去のものとなったできごとや、故人のことを昔にさかのぼって懐かしく思い出すことです。
つまり「追憶」では、懐かしく思う気持ちの有無がポイントとなっており、「幼時の追憶にふけることが増えた」「亡くなった祖父を追憶する」というように、過去を懐かしむ気持ちを伴っていることを表したいときに用います。
「回顧」とは過去を振り返ること
「回顧」とは、過去を振り返ることを指した言葉です。過去の出来事に目を向けるという点では「追憶」と同じですが、「回顧」には主観的な懐かしむ気持ちは含まれず、過去の出来事について歴史をたどるように客観的視点に立って思い出すという意味を表します。
まとめ
「省みる」の意味と使い方のほか、「顧みる」との違いや類語についても紹介しました。効率が最優先されるスピード社会では、過去は軽視される傾向にあります。
しかし過去を省みて反省しなければ、同じ失敗を繰り返すことになりかねません。1日のなかのほんの数分間でも「省みる」時間を持つことは、無駄にならないでしょう。