個人事業主が事業を廃業するとき、「廃業届」が必要となります。しかし、残務処理などで多忙を極めているなか、うっかり出し忘れてしまうことがあるかもしれません。この記事は「廃業届」の書き方とともに、出すタイミングや出し忘れのリスクなどについても紹介しており、実務面で役立つ内容となっています。
「廃業届」の書き方
廃業時には「廃業届」が必要
「廃業届」は「個人事業の開業届け出・廃業等届出書」という名称が正式で、個人事業主が自分の事業を廃業するときに税務署などに提出する必要がある書類です。
業種によって届け出先や必要な書類の種類が異なっていることや、資産の整理などに費用が掛かることもあるため、廃業を決めたら準備を早めに開始することをおすすめします。なお、法人の廃業に「廃業届」は不要です。
「廃業届」に必要な書類と書き方
廃業時に必須となる「廃業届」は、正式には「個人事業の開業届け出・廃業等届出書」と呼ばれているもので、開業するときに提出するものとまったく同じ用紙です。
届出用紙は国税庁のホームページからダウンロードすることができますが、プリントアウトしてから手書きで記入してもパソコンなどで入力してから出力しても構いません。主な記入内容は、以下のとおりです。
「廃業届」を出すタイミング
「廃業届」は廃業後1ヵ月以内に提出
「廃業届」は、廃業後1ヵ月以内に所轄の税務署へ提出します。受付時間は平日の8時30分から17時までとなっていますが、郵送での提出も可能です。
手続きには本人確認のため、マイナンバーカードや顔写真付き身分証明書が必要となりますが、郵送の場合にはこれらのコピーを添付して提出します。
飲食店の場合は保健所への提出も忘れずに
飲食店を廃業する場合は、保健所へも「廃業届」の提出が必要となりますが、加えて深夜営業のお店なら警察署にも届け出なければなりません。いずれも提出期限は廃業から10日以内と、他の手続きより期限が短くなっているため注意が必要です。
他の書類も「廃業届」と同時がおすすめ
「青色申告のとりやめ届出書」
青色申告を行っている個人事業主は、「廃業届」とあわせて「青色申告のとりやめ届出書」を提出する必要があります。
提出期限は廃業する年の翌年の3月15日までとなっていますが、提出先は税務署となっているため「廃業届」と同時に提出することをおすすめします。
「事業廃止届出書」
消費税を納付している課税事業者の場合には、「事業廃止届出書」も提出しなければなりません。提出先は税務署で、提出期限は「事由が生じた場合、速やかに」となっていますが、「廃業届」と同時に提出しておけば大丈夫です。
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」
従業員を雇用して給与を支払っている場合、「給与支払い事務所等の開設・移転・廃止の届け出書」も提出します。提出期限は廃業後1ヵ月以内で、提出先は税務署となっています。
「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」
予定納税の義務のある方が廃業する場合、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を税務署に提出します。提出日は、「第1期分および第2期分の両方の提出」の場合は廃業する年の7月1日~7月15日まで、「第2期分のみの提出」の場合は廃業する年の11月1日~11月15日までです。
提出日が決まっているため「廃業届」と同時に手続きできないケースが多くなりますが、提出せずに納税を怠ってしまうと延滞税が加算されるため忘れずに手続きを行ってください。
「廃業届」を出し忘れたら?デメリットはある?
出し忘れに対する罰則規定はない
「廃業届」には提出期限が設けられていますが、出し忘れに対する罰則規定はありません。しかし、「廃業届」の届出がなければ事業を継続しているとみなされます。そのため申告期限までに確定申告が行われないと無申告加算税が科せられてしまうので、注意が必要です。
今後青色申告できなくなることも
現在の事業を廃業後、新たに事業を開業することになったときに「青色申告承認申請書」を提出することになりますが、今回の廃業手続きをきちんと行っていない場合、申請が認められないこともありえます。罰則なないからといって「廃業届」を出さずにいることはリスクが高いため、手続きは早めに行いましょう。
まとめ
「廃業届」の書き方のほか、提出のタイミングや出し忘れのリスクについて紹介しました。「廃業届」のほかにも提出しなければならない書類がありますが、提出先が税務署で期限が1ヵ月以内のものは「廃業届」と同時に手続きしておく安心です。これからのことにエネルギーを集中するためにも、廃業の手続きは早期に済ませておくことをおすすめします。
「廃業届」として提出するため、「個人事業の開業届け出・廃業等届出書」にある「開業」の部分を二重線で消す
所轄する税務署名と、「廃業届」の提出日を記入
「住所地」「居所地」「事業所等」から該当するものを選んで丸で囲み、住所・電話番号を記入
事務所や店舗が納税地以外にある場合に記入
事業主の氏名・生年月日・個人番号を記入して押印
廃業する事業の職業・屋号を記入
「廃業」を丸で囲んで、廃業する理由を記入
事業のすべてを廃業する場合は「全部」、一部を廃業する場合は廃止する事業を()内に記入後、「一部」を丸で囲む
廃業日を記入
「廃業届」のほかに書類を提出する場合には「有」を丸で囲む
行っていた事業の概要を具体的に記述
青色申告していた方が家族を従業員としていた場合は「専従者」に、それ以外の従業員を雇用していた場合は「使用人」に従業員数を記入。「給与の定め方」欄には「月給」「日給」など、「税額の有無」欄には該当項目に丸を記入。
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出している場合は「有」、していない場合には「無」を丸で囲む。