「視点」は、日常的によく見聞きされている言葉です。しかし「視座・視野」のほか、「観点・目線」など似ている言葉がたくさんあり、使い分けに迷うこともあります。この記事は「視点」の意味と使い方のほか、「視座・視野」などとの違いや類義語も紹介しており、語句の用法がよく理解できる内容となっています。
「視点」の意味とは?
「視点」の意味は”見たり考えたりする立場のこと”
「視点(してん)」の意味は、“物事を見たり考えたりする立場のこと”です。どこから見ているかという立脚点を示しており、「視点を変える・子供の視点に立つ」というように使われます。
「視点」は製図を作成するときにも使われる
製図を作成する技法のひとつに、透視図法があります。この技法における「視点」とは、仮定した対象を見ている位置・投射線が集まる画面の中の一点、という意味です。
なお、「視点」にはもうひとつ”視線が注がれるところ”という意味もあります。どこを見ているかを表したいときに用いられますが、「焦点」と言い換えたほうがわかりやすいでしょう。
「視点」の使い方と例文とは?
「視点」は立ち位置を示す言葉
「視点」は、物事を見たり考えたりする立場という意味合いでの用法が一般的です。つまり、どの立場から見るのかということを表したいときに用いられる言葉といえます。
物事や出来事には多面性があるため、立場が変わると見え方が違ってくるものです。そのため、どのような「視点」から見ているかということは、大変重要といえます。
立場が違っても「視点」が同じことも
どこを見ているかという意味合いで「視点」が用いられる場合、立場が違っても同じところを見ているということもあり得ます。また、同じ位置から見ていても「視点」が定まらないこともあるのです。
そのため「視点」をこの意味合いで使いたいときには、先に紹介した「焦点」を用いたほうが相手に伝わりやすくなります。
「視点」を使った例文
「視点」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 行き詰ったときには視点を変えてみると、新しいアイデアが浮かんでくるようになる。
- この製品は開発者の思い入れが強すぎたのか、ユーザーの視点が置き去りにされている。
- 子供向けの企画を考えるには、子供だけでなく保護者の視点も外すことはできない。
- 鑑賞する人たちの視点に立った展示方法に変えただけで、来館者数が一気に倍増した。
- 彼が混乱していることは、視点が定まらない発言内容からありありとうかがえる。
- 経営状態を判断するための視点はさまざまだが、我が社の場合は組織に問題がありそうだ。
「視点」と「視座」の違いとは?
「視座」とは物事を見る立場や姿勢のこと
「視座(しざ)」とは、物事を見る立場や姿勢のことです。どこから見るかによって見え方が変わってくるため、同じものを見たとしても現場担当者とそれ以外の立場にある人に見えるものは異なっていることがよくあります。
また、肯定的な姿勢で見た場合にはメリットが大きく見える一方、否定的な姿勢で見た場合にはデメリットが強調されて見えることもありがちです。
「視座」にはどこを見るかという意味合いはない
「視点」とは違い、「視座」にはどこを見るかという意味合いはありません。したがって、物事を検討する際に切り口を変えることを表したいときに「視座」を変えると表現すると、言いたいことを正確に伝えることはできないのです。この場合には、「視点」を変えるが正解となります。
「視座」には高低がある
どこから見るかという意味合いの「視点」と「視座」は、同義語といえるものです。しかし、「視座」には高低があります。「視座」を高くすると俯瞰的に見えるようになるものの、細かいことが見えなくなり、低くするとその逆となるのです。
一方「視点」の位置を変えることはできますが、「高くする・低くする」という用法はありません。つまり、「視座」を高くするという表現は可能ですが、「視点」を高くするということはできないのです。
「視点」と「視野」との違いとは?
「視野」とは見える範囲のこと
「視野(しや)」とは、ものの見える範囲のことです。「視野」が広い・狭いと表現しますが、このような用法は「視点」にはありません。
「視野」の範囲は期間の長短にもあてはまり、「長期的視野」は目先のことだけに捕らわれず、将来的にどうなるかということまでを考えに入れて物事を見るという意味合いです。
「視野」には立つことができない
どこから見るかという意味で使う「視点に立つ」と混同してか、「視野に立つ」という使い方をしている場合があります。
しかし、見ている主体は「視野」の外にあるため、「視野に立つ」ことはできません。「視野」のあとには、「持つ・広げる」などが続くという点にご注意ください。
「視点」の類義語とは?
類語①「観点」とは思想や概念をふまえた見方・立場
「観点(かんてん)」とは、思想や概念など抽象的な事柄からの見方や立場という意味で用いられます。一方、「視点」は具体的に目に見えるものや絵画、写真などの作品を見るときの「立ち位置」に使う言葉です。
類語②「見地」とは物事を判断するときの立場
「見地(けんち)」とは、物事を考えたり判断したりするときの立場のことです。「観点」に近い意味合いを持つ言葉で、「教育的な見地に立つ・広域的な見地から判断する」というように用います。なお「見地」には、実際に土地を見て調べるという意味もあります。
類語③「立場」とは拠り所のこと
「立場(たちば)」とは、物事を見たり考えたりするときの拠り所のことです。「立場」という言葉の由来は「立っている場所」で、その人の地位・境遇・条件ということも表しています。
なお、「当事者の立場に立って~」という言い回しははっきり誤用とされるものではありませんが、「立場で~」や「立場になって~」のほうが好ましいとされています。
類語④「目線」とはその立場からのとらえ方
「目線」は、元々役者が演技する際の目の置き所を指す業界用語でしたが、現在ではその立場からのとらえ方や見方という意味合いで使われている言葉です。
「目線」は出自が俗語・隠語であるため、公式の場では原則的に「視線」を使われていますが、意味は「視点」に近いといえます。
まとめ
「視点」の意味と使い方について、「視座・視野」などとの違いや類義語もふくめて紹介しました。
それぞれ似ている言葉ではありますが、「視点に立つ」「高い視座」というように前後に続く言葉が限定されていることも多いため、コロケーション(連語)で覚えておくと便利でしょう。