「さることながら」は、「言うまでもないことだが」という意味の言葉です。古語「然る事」に由来し、文法的に難易度が高いとされるものですが、現代でも比較的よく見受けられます。この記事は「さることながら」の意味への理解を深めるため、使い方・例文のほか、漢字表記や文法の説明も加えながら紹介したものです。
「さることながら」の意味
「さることながら」の意味は言うまでもないことだが
「さることながら」とは「言うまでもないことだが」という意味で、あるものを当然のこととしたうえでさらに別のものを提示するときに使う言葉です。
具体的には「Aは言うまでもない当然のことあるが、そればかりでなくBは」、あるいは「Aはもちろんのこと、それ以外にBは」ということを表しています。
「さることながら」は漢字で「然る事乍ら」
「さることながら」は漢字で「然る事乍ら」と書きます。「然る」の「いうまでもない」「当然の」という意味は、漢字の「然」が持つ肯定の意味合いが表れたものです。
「乍ら」は「ではあるが」という逆接の意味を持つ接続助詞で、「然る」「事」「乍ら」をつなげると「いうまでもないことではあるが」となります。
「さることながら」の使い方と例文
「さることながら」は後につづく事柄を重視
「さることながら」は、「AもさることながらBは」や「AもさることながらBも」というように用いられます。このとき、先に提示しているAはもっともな事例があげられており、後から追加されるBはA以上にウエイトが大きいとされるものです。
つまり、話し手が特に言いたいことは後半のBであり、Aは本題に入る前提として位置づけられています。
「さることながら」を使った例文
- 恩師は、指導力もさることながら人格面においても優れており非の打ちどころがない
- 彼女は語学に堪能で、英語もさることながらロシア語まで使いこなすことができる
- この度発売された新型車は、外観もさることながら内装もすばらしく快適な乗り心地だ
「さることながら」の文法
「さることながら」の文法は難易度が高い
「さることながら」の文法は難しいとされています。日本語が母国語でない人の日本語能力を認証する試験である日本語能力試験において、最も難しい「N1」ランクです。
日本語を母国語として使う人にとっても「さることながら」は少し硬い言葉で、日常会話ではあまり使用しないでしょう。ビジネスシーンやスピーチなど改まった場面で見受けられるように、書面だけでなく話し言葉としても使われているものです。
「さることながら」の後続する「も」は強調の意
「さることながら」の後には、係助詞の「も」を続ける用法がよくみられます。この場合の「も」は、並列・強調を表しており、「AもさることながらBも」の後半で用いられている「Bも」には、前半の「A」と並列させながら強調する意味合いを持っています。
「さることながら」は目上の人やビジネスで使える
「さることながら」は、ある意見を直接否定することなく婉曲的に別の意見を提示できる表現です。間接的・婉曲的な表現は、目上の人の意見を直接否定せずに別の意見を述べることができるため、ビジネスシーンでの敬語として使いやすいでしょう。
たとえば、Aとは別のBを主張したい場合に「AよりBがよい」というより「AもさることながらBも」と並列させつつ強調できる言い回しができるため、目上の人に対して使えるおすすめの表現です。
「さることながら」の類語・類義語
「さるものながら」に言い換えられる
「さることながら」の「こと(事)」を「もの(物)」に置き換えた「さるものながら」は、「さることながら」の言い換えに使うことができる類語です。また、「こと(事)」を「もの(者)」に置き換えた「さるものながら」は、人物に対して用いられます。
たとえば「敵もさる者ながら我々には及ばない」という場合の「さる者」は、「ひとかどの人物」「侮れない者」という意味です。この後に逆接の意味を持つ接続「ながら」が続くことで、敵はなかなかの人物だが、我々はそれ以上に優れているということを表しています。
「しかしながら」はやや反発的な類語
「しかしながら」も「さることながら」の類語として使うことができる言葉です。「しかしながら」を漢字で表すると、「さることながら(然る事乍ら)」とほぼ同じ「然し乍ら」となります。
本来「しかしながら」の「しかし」は「その通り」という意味でした。現代では、「しかし」は前述した事柄と相反する内容を続けるときに逆接の接続詞として使われています。相手に反発しているような印象を与えかねない表現といえるため、「しかしながら」を使う際には注意が必要です。
まとめ
「さることながら」の意味と使い方のほか、漢字や文法・例文などを紹介しました。「さることながら」は「言うまでもないことだが」という意味の言葉です。
古語に由来し文法的な難易度も高い言葉ですが、相手の意見を直接否定せず婉曲に自説を述べることができるため、目上の人に対しても使うこともできます。