「していただく」は「してもらう」という意味ですが、「して頂く」と漢字で書くのは誤りです。また似た表現の「させていただく」は使える場面が限られています。
この記事は「していただく」の使い方や類語を解説しており、敬語への理解を深めることができる内容です。
「していただく」の意味と敬語とは?
「してもらう」という意味の謙譲語
「していただく」は「してもらう」という意味の敬語で、種類は謙譲語です。謙譲語は自分を下位に置くことによって相手を立てるというもので、「先生に指導していただく」の場合は指導してもらう側を下位に置くことで、先生を立てています。
なお「先生にご指導していただく」は、先生が自分をご指導するという意味合いになるため誤りで、この場合の正しい用法は「先生にご指導いただく」です。
「して頂く」と漢字で書くのは誤り
謙譲語としての「いただく」は補助動詞であり、物をもらうという意味の「頂く」ではありません。
「して頂く」と漢字で表記してある事例が見受けられますが、補助動詞はひらがなで書くのが一般的です。特に公文書での補助動詞は、ひらがなで書くように決められているため注意しましょう。
「していただく」を使った例文
- 初めてのプレゼンなので、先輩にサポートしていただくことになった
- 来月からプロジェクトに参加していただく山田さんです
- 納期をこれ以上調整していただくわけにはいかない
「してくださる」の意味と敬語とは?
「してくれる」という意味の尊敬語
「してくださる」は「してくれる」の尊敬語で、「していただく」と同様に何らかの行為を相手から受け取ることを指しています。
両者の違いは、「してくださる」は相手を上位に置いた尊敬語で、「していただく」は自分を下位に置く謙譲語という点です。
「してくださる」は相手が主体的に行うもの
「してくださる」は相手が主体的に何かをしてくれるという意味合いがあることに対し、「していただく」はこちらからお願いする場合に使える表現です。
しかしこの違いは厳密なものではなく、「してくださる」と「していただく」は同じような意味合いで使うことができます。
「していただく」と「してくださる」の使い分け
先に述べたように、「していただく」と「してくださる」は同じ意味合いで使うことができます。しかし尊敬語と謙譲語の使い分けには注意が必要です。
尊敬語は相手に対して使う尊敬語であることに対し、謙譲語は自分に対して使うものです。敬語のなかでも謙譲語は難易度が高いため、言い換えが可能な場合には尊敬語を使った方が無難でしょう。
「させていただく」の意味と敬語とは?
「させてもらう」という意味の謙譲語
「させていただく」は「させてもらう」という意味の敬語です。相手の許可を得て何かをすることにより、恩恵を受けるような場合に使います。
たとえば相手が持っている資料をコピーするようなときに、「資料をコピーさせていただきます」という言い回しが適切です。
「させていただきます」より「いたします」
ビジネスの場では、「ご挨拶させていただきます」や「発表させていただきます」などのように、「させていただく」という言い回しが多用されています。
しかし、相手の許可を得る必要がないものや、特別に恩恵を受けることもないものにまで「させていただく」が使われているようです。したがって、「させていただきます」は多くの場合、「いたします」に言い換えた方が適切でしょう。
「していただく」の類語や言い換えとは?
「あずかる」は目上の方から好意を受けること
「あずかる」は、「していただく」より敬意を強く表すことができる謙譲語です。特長として、前にくる語句に接頭辞の「ご」や「お」をともなう用法が多くみられます。
たとえば「指導していただく」は「ご指導にあずかる」、「褒めていただく」は「お褒めにあずかる」のように言い換えることができます。
なお「あずかる」は本来、「預かる」ではなく「与る」もしくは「関る」と表記していました。しかしいずれも表外読みであるため、現在はひらがなで書くことが一般的です。
「賜る」は「もらう」の謙譲語
「賜る(たまわる)」は「もらう」の謙譲語で、目上の方からものや好意を受けるときに使います。「ご指導を賜る」は「指導していただく」よりも敬意の度合いが高いものです。
なお「賜る」は、「くださる」の尊敬語としても使われます。ビジネスの場でよく見聞きする「ご愛顧を賜り」は、「ご愛顧をいただき」と「ご愛顧くださり」のどちらとも受け取れるものですが、どちらでも意味が通るため特に問題視されることはないようです。
ただし、「賜る」はやや大袈裟で儀礼的な表現であるため、使い過ぎないようにすることをおすすめします。
まとめ
「していただく」や「させていただく」の意味と使い方について、類語・言い換えも含めて解説しました。敬語で悩ましいのは、謙譲語と尊敬語の区別や過剰に使ってしまうことです。
しかし敬語を使うシーンは限られており、使う言葉も定型的なものが多くみられるので、いっそ丸暗記してしまうのも一法でしょう。