「表面張力」は葉の表面を転がる水滴や、あふれそうであふれないコップの水などで目にするものです。日常的に接している「表面張力」ですが、測定方法や単位を知る機会はあまりなかったのではないでしょうか。
この記事では、知っているようで知らなかった「表面張力」のさまざまな知識をわかりやすく紹介しています。
「表面張力」の意味とは?
表面張力とは「液体表面の分子間に働く引力のこと」
「表面張力(ひょうめんちょうりょく)」とは、気体に接する液体の部分(表面)にある分子同士に働く引力のことです。
液体や固体のように分子が詰まった相のことを「凝縮相」といい、異なる凝縮相の間に生じる境界面を「界面」といいます。
「界面」のうち、気体と液体や固体の凝縮相が接する境界面のことを「表面」と呼んでおり、「表面張力」は「界面張力」の一種といえるものです。
「表面張力」の作用でコップから水が盛り上がる
コップに水を静かに注ぐと、コップの縁から水の表面が盛り上がった状態になります。このとき、水の内側にある分子はお互いに引っ張り合っている状態です。
しかし、表面部分にある水の分子には外側に引っ張る力が働かず、内側に引かれる力だけが作用しています。そのため、水はコップの縁からあふれることなく、水面が盛り上がった状態になるのです。
「表面張力」によって水滴が丸くなる
水滴が丸くなるのも「表面張力」の働きが理由です。「表面張力」には、液体の分子同士がまとまって表面積をできるだけ小さくしようとする性質があります。体積に対する表面積が最も小さくなる形状は球であるため、水滴は丸い形になるのです。
地球には重力が働いているため、水滴はやや横に広がった球形になりますが、重力を受けない宇宙空間では完全な球体の水滴になります。
「表面張力」の測定方法・単位・計算式
「表面張力」はしずくの形状でも測定可能
表面張力の測定方法には、しずくの形状から測定する方法や気泡の圧力で測定する方法などがあります。以下は代表的な測定方法です。
「表面張力」の単位は「mN/m」と「dyn/cm」
表面張力の単位には、SI単位系の「mN/m(ミリニュートン毎メートル)」とCGS単位系の「dyn/cm(ダイン毎センチメートル)」があります。SI単位系とは、国際単位系とも呼ばれている十進数をベースにした世界共通の単位体系のことです。
一方のCGS単位系はメートル法に基づく単位系で、長さの単位である「センチメートルcm」と質量の単位である「グラム (g)」、時間の単位である秒(s)を基本単位としています。
液体の「表面張力」の計算式は「力/長さ」
液体の「表面張力」を求める計算式は測定方法によって異なりますが、ベースは「力/長さ」です。
たとえば、プレート法で測定した場合の「表面張力」の計算式は「γ=F/Lcosθ」ですが、Fはプレートに働く力(mN)、Lはプレートの周囲長(m)、θはプレートと液体の接触角を指しており、最終的には「力/長さ」になります。
「表面張力」をなくす方法とは?
「表面張力」は高温だと小さくなる
「表面張力」は、液体の温度が高いほど小さくなるものです。物質を構成している分子は、熱運動と呼ばれる不規則な運動を行っています。
この熱運動は温度が高くなるほど激しくなり、分子間の距離が大きくなるのです。その結果、分子間の引っ張り合う力が弱くなり「表面張力」も小さくなっていきます。
「表面張力」は界面活性剤でも弱くなる
「表面張力」は、界面活性剤によっても弱めることができます。界面活性剤は、水になじむ親水基となじまない疎水基を併せ持つものです。
界面活性剤が水に加えられると、親水基部分が表面の水分子となじんで水面を覆うため、「表面張力」が弱くなります。洗剤が汚れを落とすことや、水分と油分を均一に混ぜ合わせる乳化は、この界面活性剤の働きによるものです。
まとめ
「表面張力」の意味のほか、測定方法や単位などもわかりやすく解説しました。「表面張力」の計算式や測定方法は難しそうにみえますが、その働きはしゃぼん玉や子どものおもちゃにもみられる身近なものです。
また「表面張力」を弱める作用も、日常生活のさまざまな場面で応用されています。この機会に、暮らしの中の科学を発見してみるとおもしろいかもしれません。
液体に漬けた測定用のプレートを引き上げたとき、プレートが液体に引っ張られる力を測定する
下に向けた細い管の先端から、ぶら下がったしずくの形状を解析することで「表面張力」を測定する
液体に浸したリングを少しずつ引き上げていき、リングと液面の間にできた膜が切れる瞬間の力を測定する
液体中に差し込んだ細い管(プローブ)に気体を送りこみ、気泡を発生させたときの最大圧力を測定する
毛細管現象を利用したもので、液中に立てた毛管のなかを上昇する液体の高さから測定する