「立憲主義」の意味とは?民主主義との違いや矛盾・対義語も解説

国の政治体制を表す言葉のひとつに「立憲主義」があります。日本も「立憲主義」をとる国のひとつですが、「立憲主義」とは具体的にどういった体制を指すのでしょう。「立憲主義」の意味をはじめ、「民主主義」との違いや「民主主義」との矛盾、また「立憲主義」の対義語についても解説します。

「立憲主義」とは

「立憲主義」とは「憲法に基づいた政治を行うという考え」

「立憲主義」とは「憲法に基づいた政治を行うという考え」のことです。憲法によって政治権力を制限し、国民の権利を守ろうとする考えや体制を「立憲主義」といいます。

日本は日本国憲法による「立憲主義」の国

日本は日本国憲法で国民の基本的人権をはじめとした権利を守り、また政治権力を制限しているため「立憲主義」の国ということができます。

憲法の解釈をめぐる問題では「立憲主義に反する」という指摘がされることもあります。

「立憲主義」は人権や権利を守るためのもの

「立憲主義」はいうまでもなく、国民の権利を守るためのものです。国・政治といった権力は時として国民の自由を脅かすことがありますが、そうならないよう憲法で制限するのが「立憲主義」です。

「近代立憲主義」とは中世以前と区別した表現

「立憲主義」を「近代立憲主義」と使った場合、中世以前と区別した表現となります。

中世の封建制社会でも「立憲主義」は存在しましたが、たとえばイギリスの「立憲君主制」のように身分制度を前提とした制度でした。これに対し、18世紀のフランス革命後の身分から解放された「立憲主義」が「近代立憲主義」と呼ばれます。

「立憲主義」と「法の支配」の違いとは

「法の支配」とは「権力を法律で拘束すること」

「法の支配」とは「国家権力を法律で拘束すること」という意味です。国家権力が暴走しないよう、無制限に行使されないように法によって権力を制限することを「法の支配」といいます。

簡単にいうと「立憲主義」は「法の支配」のひとつ

その意味からもわかるように、「立憲主義」もまた「法の支配」のひとつの形です。「法の支配」はあらゆる法律で権利や自由を守ること、という意味ですが、特に憲法によって国家権力から国民を守る体制を指して「立憲主義」という表現を使用します。

「立憲主義」と「民主主義」の違いとは

「民主主義」とは国のあり方を決める権利を国民が持つこと

「民主主義」とは国のあり方を決める権利を国民が持つことです。人民が主権を持ち、自らの手で政治を行う立場を表します。

わかりやすくいうと「自分達のルールは自分達で決める」のが「民主主義」の原則で、日本の場合、国民が選挙を通じて選んだ代表者に自分の権利をゆだね、政治を任せる「間接民主制」がとられています。

「立憲主義」が非民主的にはたらく懸念・矛盾も

「立憲主義」は憲法によって国家を制限しようとする考え方ですが、「民主主義」は国民の意思を政治に反映しようとする考え方です。「立憲主義」も国民の自由や権利を守るためのものではありますが、国民が政治に参加することに言及していないため、「立憲主義」だけでは非民主的な政治が正当化される懸念もゼロではありません。

たとえば戦前の日本では「大日本帝国憲法」で人権が法律の範囲内に制限されていました。また、独裁者として知られるヒトラーも、法の下で強大な実権を持った人物のひとりです。このように「立憲主義」が非民主的にはたらいた例は歴史上にいくつもあります。

「民主主義」にも「立憲主義」は必要

一方で「民主主義」であっても、国民が選挙で選んだ政治家であれば暴走しないというわけでもありません。憲法による制限がなければ政治家が間違った方向に行くことも大いにあり得ます。そのため「民主主義」においても「立憲主義」は必要とされています。

「立憲主義」の対義語とは

反対の意味を持つ政治体制は「絶対主義」

「立憲主義」と反対の意味を持つ政治体制は「絶対主義」と呼ばれます。

「絶対主義」とは君主が絶対的な権力を持って支配する政治体制です。市民革命以前の16〜18世紀のヨーロッパで出現しました。君主には無制限の権力を認める体制です。

個人の自由を奪う「全体主義」

「全体主義」とは個人の権利や利益を認めず、すべてのものを国家の統制下に置こうとする体制です。自由な活動を認めずに、個人の生活・思想を国家利益と一致するよう統制するもので、国民生活の全てを可能な限り規制します。

「立憲主義」の対義とまではいきませんが、個人の権利や自由を守るという立場とは反対の考え方・体制です。

まとめ

「立憲主義」とは「憲法に基づいた政治体制」のことです。広い意味では「法の支配」と同じ意味になり、「立憲主義」は「法の支配」に含まれます。

「立憲主義」と「民主主義」は互いに対立するものではなく、日本は「立憲主義」であり「民主主義」の国です。ふたつを同時に採用することで、互いの弱い部分をカバーした国民の人権を守る体制に近づくことができるでしょう。