「おざなり」と「なおざり」は字面も意味もよく似ている、紛らわしい言葉です。そのため覚え間違いや使い方の誤用が多くなっています。
この記事では「おざなり」と「なおざり」の違いを語源から説明し、覚え方や使い方についても解説します。正しく使い分けるための参考にしてください。
「おざなり」と「なおざり」の違いとは?
「おざなり」と「なおざり」の違いは意味が異なる
「おざなり」と「なおざり」の違いは、何もしないで放置しているか、一応何らかの対処をしているかです。似た響きを持つ言葉で、どちらもひらがな4文字で大変紛らわしいのですが、意味は異なります。
「おざなり」はいい加減に対処することを指す言葉です。いい加減ではあるものの、一応何らかの対処は行っていることを言っています。
一方、「なおざり」は何もしないで放置することを指す言葉。結果的にないがしろな扱いになってしまったことをいうものです。
「おざなり」の方が「なおざり」よりはまだいい
「おざなり」も「なおざり」もいい加減な言動や様子であることに違いはありません。しかし、「おざなり」は手を抜いたやっつけ仕事で、その場しのぎに過ぎないものですが、一応は仕事をしています。
一方、「なおざり」は対象を放置したままで何もしていません。いい加減であってもとりあえずは仕事をしている「おざなり」の方が、仕事に手を付けることなく放置している「なおざり」よりは、まだ救うようのあるレベルといえます。
「おざなり」「なおざり」の漢字表記と語源は?
「おざなり」は漢字で「御座形」、もともとは隠語だった
「おざなり」は漢字で「御座形」と書きます。元々は江戸時代のお座敷で用いられた隠語で、幇間(ほうかん)のことを指しました。幇間は別名「太鼓持ち」と呼ばれ、宴席でお客さんを持ち上げて楽しませることを仕事にしている人です。
「御座形」の意味は、「座」に合わせて仕事をすることで、お客さんの質によっては手を抜くこともありました。そこから「おざなり」は、その場しのぎでいい加減な対処をすることや様子のことを指すようになったのです。
「なおざり」は漢字で「等閑」、平安時代から使われていた
「なおざり」は漢字で「等閑」と書き、平安時代から使われていました。「なおざり」は「そのまま」という意味の「なお」と、「しない」「去り」という意味の「せざり」が合わさってできています。
「そのまま放置して何もしない」「そのままにして立ち去る」、つまりは「結局何もしない」という意味合いがある言葉です。
「おざなり」と「なおざり」の覚え方とは?
何もしていないのが「なおざり」
「なおざり」は何もしていない状態を指す言葉です。したがって、「おざなりな作業」ということはできますが、「なおざりな作業」ということはできません。
「なおざりな作業」では、何もしていない作業ということになるためです。「なおざり」を使うなら「作業をなおざりにする」が正しい言い回しで、作業をせずに放置しているという意味合いになります。
「おざなり」と「なおざり」は漢字にすれば覚えやすい
違いが分かりづらい「おざなり」と「なおざり」は、漢字に直すと覚えやすくなります。
「おざなり」は漢字で書くと「御座形」です。道に従うという意味の「道形(みちなり)」という言葉がありますが、「形」は対象に従う・それ相応という意味を持つ漢字です。
「御座形」も同様に、座に従う・座相応にという意味合いを持っています。「なおざり」の「等閑」が分かりにくい場合は、「おざなり」の方をしっかりと覚えておけば大丈夫です。
「おざなり」と「なおざり」の正しい使い方とは?
「おざなり」を使った例文
「おざなり」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- お昼どきの混雑した飲食店では人手が足りず、客あしらいがおざなりになりがちだ。
- おざなりなクレーム処理をすると後々大変なことになるので、丁寧な対応を心掛けたい。
- あの会社は下請けをおざなりに扱うようだから、取引は見合わせよう。
- 納期に間に合わせるためとはいえ、おざなりな仕事をしてはいけない。
「なおざり」を使った例文
「なおざり」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- クレーム対応をなおざりにしていると、相手の怒りが倍増して訴訟に発展しかねない。
- 社員のメンタルケアをなおざりにしたため療養が必要となり。長期間の休暇を申請されてしまった。
- 宿題をなおざりにしているうちに、夏休みが残り少なくなってしまった。
- 片付けをなおざりにしていると、いずれ手のつけられないゴミ屋敷になるだろう。
まとめ
「おざなり」と「なおざり」の違いや語源のほか、覚え方と使い方についても解説しました。
「おざなり」も「なおざり」もともに、いい加減な対応をすることを表す言葉です。とりあえずやっただけまだ救いようがある「おざなり」ですが、毎度「おざなり」な対応をしていると、最終的には周囲の人たちから「なおざり」にされてしまいかねません。
時と場合によっては「おざなり」や「なおざり」でやり過ごすしかないこともありますが、できるだけ控えておくことをおすすめします。