「おもい」を漢字で書く場合、多くは「思い」「想い」「念い」の3パターンが挙げられます。この3つには意味に違いがあるのでしょうか?
この記事では、「思い」「想い」「念い」の意味や文化庁の見解、使い分けの実例などを解説しています。それぞれの文字が持つ、微妙なニュアンスまで理解していただければ幸いです。
「思い」「想い」「念い」の意味と違いとは?
「思い」「想い」「念い」の違いは、論理的な気持ちか、主観的なイメージか、心に留める気持ちかどうかです。
「思い」は考えに近い意味
「思い」の意味は、論理的・主観的な気持ちや考えのことです。「思考」や「意思」という熟語からも分かるように、「思」という文字には考え・気持ち・願いなどの意味があります。
「思い」は単に心の中の感情だけを指すものではなく、理論的に頭で考えたものと、主観的な心の中の感情の両方に関わるものを対象に、広く用いられています。
「想い」は感情やイメージがメイン
「想い」の意味は、主観的なイメージ、心の中で考えることです。「思い」と意味の上でほぼ同じものですが、「想い」での「おもい」という読み方は、常用漢字表にない読み方で「表外読み」です。
「思い」に比べると、「想い」は頭で考えるものではなく、感情やイメージとして受け止められる面が強く出ています。誰かを慕うことや懐かしさを感じることを表したいときには「思い」より「想い」を使うほうが適切です。
「想」という文字を使った「想像」や「発想」などの熟語からも分かるように、「想い」が指し示すものは頭で理性的に構築された考えというより、無意識のうちに浮かびあがってくる主観的なイメージです。
強い意志を表す「念い」
「念い」の意味は、心に留めることや気持ち、心の中の考えです。「念力」や「一念」という熟語があるように、「思い」や「想い」より強い意志・信念・願望を表しています。
また「念い」の「思い」や「想い」と異なる点としては、「念仏」という熟語が示すように、声に出して読みあげるという意味もあることです。
そのほか「入念」という熟語から分かるように、気をつけるという意味合いもあるため、「思い」や「想い」より幅広い用途を持っています。
「思い」「想い」の文化庁の見解とは?
文化庁は「思い」を採用
「思い」と「想い」の違いに関する文化庁の見解は、「おもう物の対象が心に浮かんでいる時は想い、それ以外の一般的なものは思いを使う」となっています。
つまり心の中にあるものは「想い」で、頭の中にあるものは「思い」というように区別しているのです。
しかし、どちらか一方のみが正解というような厳密さはなく、使う人の気持ちや考えで好きなほうを使っても間違いではありません。
迷ったら「思い」を選ぶ
「思い」は理性と感情の両方での考えを指しているため、感情面のウエイトが大きい「想い」の代わりに使うことができます。
また「思い」の「おもい」という読み方は常用漢字表にある表内読みであるため、公的な文書に使用しても問題のない言葉です。
汎用性が高いうえ表内読みができる「思い」は大変使い勝手のよい言葉で、どれを使えばよいか迷ったときには、「思い」を選んでおけば無難です。
「思い」「想い」「念い」の使い分けとは?
使う人の気持ちで左右される使い分け
「思い」と「想い」の意味に大きな違いはなく、どちらを使っても完全に間違いということはありません。しかし、話し手や書き手の気持ちをはっきりと表すために使い分けされています。
使い分けるときには、論理的に考えたものについて言及するときには「思い」、心に浮かんでくるイメージや感情を表現するときには「想い」が適切です。
「思い」や「想い」より読みづらい「念い」
最初の章で説明したように、「念」の文字自体には「思」や「想」より幅広い意味があります。しかし「念い」という使い方はあまりされていないうえ、「おもい」という読み方は表外読みとなっています。
「思い」や「想い」に比較すると「念い」を「おもい」と読ませる事例は少なく、一般的ではありません。そのため、「念い」は「おもい」と読みづらい傾向が見られます。
「思い」「想い」「念い」を使った例文とは?
3つの「おもい」を使い分けた例文を紹介します。
「思い」を使った例文
- 思い通りの人生を送るには、綿密なライフプランが欠かせない。
- 思いのほか準備に時間が掛かり、予定通りに出発できなかった。
- 関係者が思いを詰め込みすぎてしまい、主旨が分かりにくい企画になってしまった。
「想い」を使った例文
- 彼女への止められない想いが、彼の創作の源泉だった。
- 親が我が子を想う気持ちは、子供が想像するよりもっと深いものだ。
「念い」を使った例文
- この念いが叶うなら、何を失っても構わない。
- 重ね重ねのお心遣いを賜り、感謝の念いにたえません。
まとめ
「思い」「想い」「念い」の使い分けについて解説しましたが、「思い」は論理的、「想い」は主観的、「念い」は意思的ととらえると理解しやすくなります。
公的な文書には「思い」を使用しておけば間違いありません。しかし、履歴書のように内容を強くアピールしたい文章では、ピンポイントで「想い」や「念い」を取り入れると効果的です。