「タレス」の名言「万物の根源は水である」の意味と考え方を解説

古代ギリシャ哲学者「タレス」は哲学の創始者とされ、数学者としても活躍していました。タレスの名言「万物の根源は水である」がよく知られていますが、この言葉はどのような考え方から生まれたのでしょうか?

ここではタレスの哲学について解説し、タレスと同年代に活躍したピタゴラスやアナクシマンドロスについても、あわせて紹介しています。



「タレス」とその思想とは?

タレスについての概要と、その思想について紹介します。

タレスは「哲学の創始者」

タレス(紀元前625年頃~547年頃)は、哲学の創始者と呼ばれ、古代ギリシャの記録に残る最も古い哲学者でもあります。タレスは著作を著さなかったとされ、文書類も残っていないため、他の哲学者がタレスに言及した断片の言葉から、その思想や哲学を推察する形で研究されています。

タレスはクレタ人が植民した都市だったとされる小アジアのイオニア地方(現在のトルコ)のミレトス市に生まれました。エーゲ海沿岸に位置したイオニアは、当時の地中海文化の中心として栄えた豊かな地方でした。

タレスは、1世紀ほどあとに活躍したソクラテス(紀元前469年~399年)の影響を受けていない哲学者であるため、「ソクラテス以前の哲学者」と呼ばれます。

タレスは「万物の根源は水である」と説いた

タレスは「自然哲学者」と呼ばれ、その学問的な関心は宇宙の始原やその要素におかれていました。世界は何でできているのかと考えたタレスは「万物の根源は水である」と説きました。それはもちろん誤りでしたが、タレスの功績は万物の根源を水であると考えたことにあるのではなく、「万物の根源とは何か」という問いを立てたことにあるのです。

当時の人々は神話や超自然的な現象によって世界を捉えていたため、タレスが初めて行った、「とは何か」という総合的で合理的な問いが哲学の出発点だとされるのです。

アリストテレス(紀元前384年~322年)は、「最初に哲学をした人々の大部分は、素材の形で考えられる原理のみを万物の原理とみなした。哲学の創始者タレスは、水をそれであると主張する」と述べています。

タレスは「数学者」でもあった

タレスは多才な人物で、哲学者であるとともに、数学者でもありました。半円に内接する角は直角である、という「タレスの定理」を発見したのもタレスです。その他にも、測量術や天文学にも通じており、日食を予測したり、ピラミッドの高さを測定したりしたといわれています。

タレスは「アナクシマンドロス」らの「ミレトス学派」の創始者

タレスはミレトスに生まれたと先に説明しましたが、ミレトスのあったイオニア地方は地理的に当方と西方文化の交わる地点にあり、エジプトやバビロン(メソポタミアの古代都市)の数学や自然科学などももたらされ、高い文化がありました。

そのような文化的な土壌の上でタレスに始まった哲学は、その後にアナクシマンドロス(紀元前570年頃)と、アナクシメネス(紀元前546年頃)に受け継がれ、それら三人の哲学はミレトス学派と呼ばれます。

タレスの著作はありませんが、アナクシマンドロスの言葉は断片が伝えられており、それがギリシャにおける最古の散文です。タレスが万物の根源は水であると考えたのに対し、アナクシマンドロスは、万物の根源は「無限なもの」であるとし、それは宇宙に秩序を与えていると説きました。

アナクシマンドロスの言葉を紹介します。

存在するものどもは、それらがそこから生成してきたところの、そのものへと必然的に従って、また消滅する。というのも、それらは時の定めに従って、たがいに、不正に対する罰を受け、償いを支払いあうことになるからだ。

無限なものの本性は、永遠であり、不老である。

ミレトス学派の最後の人物、アナクシメネスは万物の根源を「空気」だとしました。それはタレスが示した「水」と同じように、生命の原理として捉えられたものでした。

アナクシメネスの言葉を紹介します。

空気である私たちの魂が、私たちをしっかりと掌握しているのと同じように、気息と空気が宇宙全体を包み込んでいる。

空気は物体を持たないものに近い。そして、私たちはこの空気の流出によって生じるにいたるのだから、そのものは無限であって豊かであるはずである。絶対に尽きることはないのだから。

「タレス」以外の代表的な「ソクラテス以前の哲学者たち」

紀元前600年~400年の期間に活躍し、ソクラテスの影響を受けていない哲学者のことを「ソクラテス以前の哲学者」として哲学史では分類します。ソクラテス以前の哲学者でタレスの他に代表的な哲学者を紹介します。

イオニア学派の「ヘラクレイトス」

タレスらのミレトス学派は、イオニア地方で活躍したイオニア学派のうちに分類されます。イオニア学派には、「万物は流転する」と言ったヘラクレイトスがいます。ヘラクレイトスは自分自身の探求を行った初めての哲学者とされています。

■参考記事
「ヘラクレイトス」の思想とは?名言「万物は流転する」の意味も

ピタゴラス学派(イタリア学派)の「ピタゴラス」

ピタゴラス(紀元前582年~紀元前496年)は、哲学者であり数学者でした。イオニア地方のサモス島に生まれますが、イタリアに移住し、ピタゴラス学派を打ち立てます。ピタゴラスは、宇宙の全ては数から成り立っており、宇宙は数と計算で解明できるとと宣言しました。ピタゴラスの定理は現在まで伝わっています。

エレア学派(イタリア学派)の「ゼノン」

エレアのゼノンは「ゼノンのパラドックス」で弁証法のもととなる議論の技術を創始しました。

■参考記事
「ゼノン」の哲学とは?パラドックスの意味とストア派も紹介

原子論の「デモクリトス」

デモクリトス(紀元前460年頃~370年頃)は、イドニア学派の哲学者です。ソクラテスよりも後に生まれていますが、ソクラテス以前の哲学者に含まれるのが慣例です。デモクリトスは原子論者と呼ばれ、生成と消滅、運動や存在の多を否定することのない原子論を構築したとされます。「あらぬものは、あるものに少しも劣らずある」という言葉が伝わっています。

■参考記事
「デモクリトス」の思想「原子(アトム)論」とは?名言も紹介

まとめ

タレスは文献が残る中で初めて「万物の根源とは何か」という問いを立てたことから、哲学の創始者と呼ばれています。哲学は「とは何か」と世界の根源を問うことから始まったのです。

アリストテレスは、哲学者は原理を知らなくてはならず、それを対象とする学が哲学であるとし、そのような哲学の創始者としてタレスを挙げています。

■参考記事
「アリストテレス」の名言や著書を紹介!思想や形而上学も解説