「酒米」と食用米の違いとは?種類ごとの特徴やランキングも紹介

日本酒の原料である「酒米」としては、「山田錦」が有名です。ところが「山田錦」を炊いて食べると、あまり美味しくないという話もよく聞きます。この記事では、「酒米」の特徴や「食用米」との違いのほか、「雄町」「愛山」など人気が高まっている「山田錦」以外の「酒米」の種類も紹介しています。

「酒米」と食用米の違い

「酒米」とは日本酒の原料となる米のこと

「酒米(さかまい)」とは、日本酒の原料となる米(うるち米)のことです。日本酒はササニシキやコシヒカリなどの食用米を用いて製造することもできますが、通常は「酒米」の中で日本酒造りに適している米(酒造好適米)を原料としており、この酒造好適米のことを「酒米」と呼ぶこともあります。

「酒米」は炊いて食べてもおいしくない

「酒米」は、一般的な食用米より高価格で取引される傾向がみられますが、普通に炊いて食べるとあまりおいしくありません。

その理由は、旨味に乏しく粘りや甘味も少ないことです。しかしこれらの食用米としての「欠点」は、日本酒造りにおいては必須の大切な要素となっているのです。

「酒米」に求められる条件とは?

「酒米」の第一条件は「心白」の形状

「酒米」には、食用米にはない以下のような特徴があります。

  • 「心白(しんぱく)」の形状が適切
  • 米の粒が大きい
  • 精米で砕けにくい

「酒米」の第一条件は、「心白」の形状が適切であることです。「心白」は米の中心部にあるデンプンの構造が粗い部分を指すもので、すき間があるため白っぽく見えます。

「心白」が大きいと麹菌の育成がよく、良質の米麹ができますが、反面「心白」は砕けやすくなります。したがって「心白」は単純に大きければよいというものではなく、位置や形状が適切であることも重要です。

高精米に耐えられることも「酒米」の条件

炊飯用の白米の精米歩合は90%程度ですが、「酒米」は70%以下まで表面を削り取ります。表面をたくさん削り取ることが前提となっている「酒米」では、米の粒が大きいほうが好都合です。

また、精米過程では熱や摩擦などのため米粒が割れやすくなっています。米粒が割れると雑味が発生しやすくなるため、「酒米」には精米に耐えられる強度も必要です。

「酒米」の種類ごとの特徴・ランキング

「酒米」の王者は「山田錦」

日本酒に詳しくなくても、「山田錦(やまだにしき)」という言葉を耳にしたことがあるという方は少なからずおられるでしょう。

現在、酒造好適米は100品種以上あるといわれていますが、そのなかでも全体の4割とトップにランキングされている生産量を誇っているのが、「酒米の王者」とも呼ばれている「山田錦」です。

これほど多くの量が作られているのは、酒米に望まれる条件を「山田錦」がすべて備えていることによります。鑑評会で金賞を受賞やすい日本酒の条件を指した「YK35」という言葉がありますが、これは山田錦を35%まで削って、9号で醸造するという意味です。

なお「山田錦」は全国で生産されていますが、兵庫県が生産量の約6割を占めており、「特A地区」と呼ばれる県南東部で生産されたものが極上とされています。

「五百万石」の酒は淡麗辛口

「五百万石(ごひゃくまんごく)」は、「酒米」の生産量の約3割を占めており、「山田錦」に次いで2位にランキングされている品種です。米どころ・新潟で生まれた「酒米」で、端麗辛口の日本酒造りに適しています。

やや小粒なため高精米には向きませんが、心白が大きくて加工しやすいため麹を造りやすいことや、米が溶けすぎることがないなど、機械による醸造でも品質の良い製品を作ることができるという特徴を備えています。

「五百万石」は新潟県や北陸地方だけでなく、東北南部から九州北部まで広域にわたって栽培されており、日本一の作付け面積を誇っています。

「雄町」は多くの酒米のルーツ

「雄町(おまち)」は、「山田錦」や「五百万石」をはじめとする多くの「酒米」のルーツともいえるものです。成長が遅い(晩生・おくて)うえ、稲の高さが高くて倒れやすいことや収量の低さなどから栽培が激減し、一時は「幻の酒米」と呼ばれていました。

その後岡山県の酒蔵が復活に取り組んだことで作付面積が拡大、全国的に普及しましたが、現在でも「雄町」の生産量は岡山県が断然トップで約95%を占めています。

「雄町」で醸した日本酒は、野性味あふれるふくよかで力強い味わいとともに、造りによる個性が出やすいことなどから人気が上昇しており、全国の蔵元から「雄町」を用いた日本酒が集結する「雄町サミット」が開かれています。

老舗蔵元が守り続けた「愛山」

「愛山(あいやま)」は、「山田錦」と「雄町」の流れをくむ酒米です。栽培が難しく生産する農家がとても少なかったのですが、灘の老舗蔵元との契約栽培によって今日まで守り続けられてきました。その後、人気銘柄の「十四代」醸造元である高木酒造が、「愛山」を全国に広めたという経緯があります。

「愛山」は高精白によって砕けやすく、溶けやすいことから雑味が出やすいのですが、反面、濃淳で独特な味わいを出すことができるという特徴を持ち、造り手の腕が問われる「酒米」といえます。

現在も希少な「愛山」ですが、飲みごたえのある日本酒が好きな方にはぜひ一度味わっていただきたい「酒米」です。

まとめ

「酒米」と食用米の違いについて、「酒米」の種類ごとの特徴やランキングも紹介しました。日本酒の楽しみのひとつに、「酒米」による味わいの違いがあります。

「山田錦」と「五百万石」で「酒米」の生産量全体の7割を占めていますが、「酒米」の品種は100以上もあることから、希少な「酒米」を使った個性的な日本酒はまだたくさん隠れているはずです。

もし見掛けない種類の「酒米」を使った日本酒を見つけたら、ぜひ味わってみられることをおすすめします。