「生原酒」とは?常温保存できるものやおすすめの飲み方も紹介

日本酒の「生原酒」とは、読んで字のごとく生の原酒です。かつては蔵元でしか口にできなかった「生原酒」ですが、常温で流通する缶入り製品が開発されて、気軽に飲めるようになりました。この記事では、「生原酒」についての知識や保存方法のほか、おいしい飲み方なども紹介しています。

「生原酒」とはどんな日本酒?

「生原酒」は火入れ・加水をしていない日本酒

「生原酒」は、文字通り「生の原酒」です。一般的によく見かける日本酒は、製造過程で火入れ(加熱処理)を2度行った後、加水してアルコール度数を15度前後に調整してから瓶詰します。

一方、「生原酒」は火入れも加水も一切行わずに瓶詰したもので、フレッシュで濃厚な味わいと高めのアルコール度数(18~20度)が特徴です。

「生原酒」は要冷蔵

「生原酒」は、「生酒」に分類されるものです。通常の日本酒は、保存性を高めるために製造過程で2度の火入れ(貯蔵前と出荷前)を行います。

製品名に「生」がつく日本酒としては、「生酒」のほか「生貯蔵酒」「生詰酒」がありますが、火入れの回数とタイミングによって以下の3種類に分けられます。

  • 生酒:一度も火入れを行っていないもの
  • 生貯蔵酒:火入れせずに貯蔵し、出荷前に1度だけ火入れしたもの
  • 生詰酒:貯蔵前に1度だけ火入れしたもの
「生原酒」は全く火入れをしていない「生酒」であるため、要冷蔵です。日本酒には賞味期限が記載されていませんが、冷蔵保存で半年以内、開栓後は10日から2週間を目処にできるだけ早めに飲み切ってしまうことをおすすめします。

「生原酒」は濃い日本酒

「生原酒」は、加水していない「原酒」です。市販されている日本酒には、アルコール度数15度前後のものが多くみられます。

日本酒は、麹による酒米の糖化と、酵母によるアルコール発酵が一つのタンクの中で同時に進む「並行複発酵」という醸造法で造られるものです。

そしてアルコール発酵の最終段階のアルコール度数は、18~20度になっています。この状態を「原酒」といい、一般的な日本酒は、ここに割り水を加えて度数を調製してから製品化されたものです。

高いアルコール度数と濃厚な味わいをもつ「原酒」のなかでも、火入れを行っていない「生原酒」は、そのお酒が持つ本来の味わいが際立っており、ボリューム感のある飲み口が楽しめます。

「生原酒」で常温保存できるものは?

冷蔵は「生原酒」の劣化を防ぐため

火入れを行っていない「生原酒」は品質が不安定で劣化しやすいため、冷蔵設備や保冷状態での流通が確立するまでは、蔵元で味わう以外口にすることのできないものでした。

「生原酒」や「生酒」は火入れを一切行っていないため、酵母や乳酸菌などが生きています。これらの活動が常温化では活発化して品質が劣化するため、「火入れ」によって酵母や菌を処理しており、火入れしない場合には冷蔵保存が必須となっているのです。

「生原酒」でも常温で保存できる製品が登場

「生原酒」の劣化は、酵素や乳酸菌の働きによるものです。ところが加熱処理以外の方法で酵素や乳酸菌が活動しないようにする方法が開発されたことにより、常温で保存・流通可能な「生原酒」が登場しました。

「日本盛」から発売されている冷蔵保存不要の「生原酒」では、微細なフィルターを製造ラインに配置して酵母や菌を除去したうえで、容器への充填をクリーンルームで行うことで、雑菌の混入をシャットアウトしているのです。

「生原酒」には缶入りのものも

「生原酒」には、缶入りのものもあります。というより、常温での流通が可能な生原酒の元祖は、1972年に菊水酒造から発売された、アルミ缶入りの「ふなぐち菊水一番しぼり」なのです。

加熱処理を行わずに酵母などを取り除いた「生原酒」の品質を保ったまま流通させるため、アルミ缶が採用されたという経緯があります。「ふなぐち菊水一番しぼり」は、現在もレトロ感漂うデザインの缶入りで販売されており、コンビニでも気軽に手に入れることができます。

「生原酒」のおすすめの飲み方は?

「生原酒」はオンザロックがおすすめ

フレッシュかつ濃厚な味わいが魅力的な「生原酒」ですが、アルコール度数が高いため強すぎると感じる方もおられるようです。

そのような方にはオンザロックがおすすめ、ほどよく薄まって飲みやすくなります。また炭酸割りやカクテルベースにすると、日本酒初心者の方でも気軽に「生原酒」を味わうことができます。

燗にしておいしい「生原酒」も

冷蔵保存されているためか、「生原酒」は冷やして飲むことが一般的です。しかし、「生原酒」だから燗酒にむかないというものではありません。

生酛系や純米系の「生原酒」なら、お燗にすることでさらに旨味が引き立ち、「これぞ日本酒」といった味わいが楽しめます。

まとめ

「生原酒」とはどのような日本酒なのかについて、常温保存できるものやおすすめの飲み方も交えながら紹介しました。

製造技術の進歩により、常温保存できる「生原酒」が手に入るようになりましたが、多くの「生原酒」は要冷蔵です。フレッシュな風味を損なわないためにも、早めに飲み切ってしまうことをおすすめします。